映画「亡国のイージス」は、真田広之主演、阪本順治監督の2005年の映画です。
この映画「亡国のイージス」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
国家の危機にたった1人で立ち向かった男の奮闘を描いた海洋サスペンスアクション「亡国のイージス」をお楽しみください。
「亡国のイージス」あらすじ
ある日、東京湾沖で訓練航海を行っていたイージス艦・いそかぜが乗っ取られます。
それは副長・宮津(寺尾聰)と某国の対日工作員・ヨンファ(中井貴一)の共謀によるものでした。
そして、乗務員を退艦させた宮津は政府に対し、全ミサイルの照準を首都圏内に合わせたことを宣言します。
要求に従わない場合、ミサイルを東京に撃ち込むと・・・
いそかぜの船内には何も知らない先任伍長の仙石恒史(真田広之)がいました。
仙石は艦内の異常事態に気づき行動を起すのですが・・・
「亡国のイージス」ネタバレ
雨が降りしきる夜中、海上自衛隊護衛艦「いそかぜ」の副艦長・宮津弘隆(寺尾聰)の家を訪ねてきた一人の男がいました。
一方、道路を走っていた車が突然横転し、大破してしまいます。運転手は即死でした。
暫く後、防衛庁情報局の渥美大輔(佐藤浩市)は、宮津弘隆の息子 隆史が自身のHPに掲載した『亡国の盾(イージス)』という論文を読んでいました。
その時、ある脅迫映像が防衛庁に送り付けられてきました。
写っていた男が所属する組織は、米軍が開発した特殊化学兵器「GUSOH」を保有していることを告げていました。
同じ頃、海上自衛隊護衛艦『いそかぜ』の先任伍長 仙石恒史(真田広之)は、地元の警察から上陸した若い乗組員たちが街のチンピラたちと喧嘩したと連絡を受けて飛び出してゆきました。
チンピラ達は武器を持っていましたが、新しく乗組員となった如月行(勝地涼)に全員のされており、ケガもしていました。
その為、警察は乗組員全員を1~2日ほど拘留する気でいましたが、仙石は土下座までしてそれを撤回させ、彼らを「いそかぜ」に連れ帰りました。
一方、今回行われる海上自衛隊ミサイル護衛艦「うらかぜ」との合同訓練に向けて「いそかぜ」には海上訓練指導隊(FTG)の溝口三佐(中井貴一)以下14名が乗り込んできました。
艦に戻った仙石は、彼らに罰として、これから行われる「うらかぜ」との海上訓練が終わるまで交代で甲板掃除を行うよう命令します。
他の者が部屋に戻る中、如月だけは感情のない目で仙石を見つめ「いつも、あんなふうに土下座するんですか?」と尋ねてきました。
仙石は驚きながらも「まぁ、仕事だからな」と苦笑しました。
それ以来、仙石は何となく如月の事が気にかかるようになり出しました。
ある日の夜、仙石は甲板でスケッチブックに夜景を描いていました。
しかし、夜の海の色が上手く出せずに苦戦していました。
その時、ちょうど甲板掃除をしていた如月が後ろからスケッチブックを眺め「朱色が足りないんじゃないでしょうか」とアドバイスしてきました。
言われたとおりに朱を混ぜてみると、思った通りの色が出せました。
思い付いて、仙石は如月に筆を握らせ絵を描かせてみました。
すると、仙石が思った以上の絵を如月は描いたのです。
「おいおい、お前、護衛艦に乗ってる場合じゃないぞ」
仙石は如月の意外な才能を知って称賛しましたが、如月自身は「他に行くところがありませんから・・・」とあまり嬉しそうではありませんでした。
一方、潜水服を来て海上を漂っていた工作員 チェ・ジョンヒ(チェ・ミンソ)が警備の目をくぐって「いそかぜ」に入り込みました。
そんな時、魚雷訓練中に訓練魚雷をつるしていたロープが切れ、乗員の一人である菊政克美にあたって事故死してしまいます。
近くの港に入って遺体を下ろすものと思われましたが、予定どおり「うらかぜ」との訓練海域に向かうとの決定が下されます。
当然、寄港するものと思っていた仙石は激高し、艦長に直談判しようとしますが宮津達に制止されます。
それでも引き下がろうとしない仙石に対して「真相を知る事は、我々と事態の重みを共有する事になる」と覚悟するように前置きをした上で艦長室に入れて話を始めました。
今回FTGとして乗艦した溝口達は、実は防衛庁情報局(DAIS)に属しており、某国のテロリスト ホ・ヨンファから指示を受けた工作員が「いそかぜ」に潜入しテロ行為を行うのを阻止する任務を負っており、その工作員が如月で、衣笠艦長がすでに殺害されて艦は乗っ取られつつあると説明したのです。
俄かには信じられなかった仙石でしたが、床に転がった艦長の遺体を見て、如月の拘束に協力する決心をしました。
その時、艦内に爆発音が響き渡しました。
駆けつけた仙石は機関室内に入ろうとしますが、中に籠城している如月が扉に爆弾を仕掛けていると止められます。
扉に爆弾のワイヤーをセットしながら、如月は昔の事を思い出していました。
母が自殺してしまったと知った如月は、怒りに任せて母を追い詰めた横暴な父親を殺害してしまいます。
その後、放心状態で街をさ迷っていた如月は、路上で男達に囲まれて身柄を拘束されたのです。
如月は10分以内に機関を停止し、総員離艦する事を要求します。
仙石は点検用に増設したハッチから機関室内に潜入し、室内に仕掛けた爆弾のスイッチを持っている如月と対峙します。
銃を突きつけてきた如月のスキをついて、彼が持っていた機械を破壊し、銃を奪って逆に如月に突きつけました。
「何で艦長を殺した?何でお前に銃を向けなきゃいけないんだ?!」
しかし、如月は溝口達はDAISなどではなく、彼らこそホ・ヨンファとその一味であり、彼らを監視しテロ行為を未然に防ぐのが自分の任務だと言いました。
事前に聞いていたのとは異なる話に戸惑いながらも、仙石は爆弾を外して扉を開放しました。
その途端、溝口達が中に突入し如月は拘束されました。
外に連れ出された仙石に、宮津が最後の命令を伝えます。
「艦底部破損により航行不能。乗員は幹部を残して、速やかに艦を離脱し洋上で助けを待つこと」
艦底部に亀裂はあるものの、航行不能とまではなっていません。
その命令に異常を察知した仙石は抗議しようとしますが、ジョンヒに力づくで阻止されます。
そして、乗員たちの離艦が始まりました。
仙石も一旦は救命ボートに乗ったものの、どうしても納得できずに「忘れ物をした」と言い残して海に飛び込み、先の爆発で出来た艦底部の亀裂から艦内に戻りました。
幹部だけを乗せた「いそかぜ」は航行を続け、「うらかぜ」の近くまでやって来ました。
無線で「うらかぜ」と交信した宮津は、停船するよう通告されますが受け入れず、逆に撤退か先制攻撃か選ぶよう迫ります。
しかし、「うらかぜ」の阿久津艦長(矢島健一)がどちらも受け入れないと知ると、宮津は躊躇なく乗員たちに命令を下しました。
「ハープーン発射用意。発射段数2つ!」
命令通りハープーンミサイルが2発発射され、初弾は撃墜されたものの、2発目は「うらかぜ」に命中しました。
「うらかぜ」が攻撃された、という報せはすぐに官邸に届き、総理の梶本(原田芳雄)と自衛隊関係者が防衛庁に集まりました。
対策を協議中、宮津からの通信が入ります。
宮津は一方的に
・2年前に発生した辺野古ディストラクションの真相の公表(表向きは爆薬基地の崩落事故と伝えられていたが、実は流出した僅か100㏄のGUSOHを焼き払う為に米軍が故意に爆破した)
・自衛官候補生(宮津隆史―宮津弘隆の一人息子)の死の真相の公表
・宮津隆史がHPに掲載した 論文『亡国の盾(イージス)』を5大紙に全文掲載する事
と要求を突きつけ、受け入れられない場合はGUSOHを搭載したミサイルを東京に撃ち込むと宣言しました。
幕僚幹部たちは宮津が「うらかぜ」を攻撃したことを非難しますが「先制攻撃は戦いの鉄則。そんな事も出来ない自衛隊に国を守る資格はない!」と突っぱねました。
更に宮津はDAISの存在も公にするよう要求しますが、梶本総理が「DAISなど存在しない」と返答したため、見せしめに如月を処刑しようとします。
しかし、その時「いそかぜ」内で爆発が起こります。
仙石が爆弾で隔壁を壊したのです。
その隙をついて如月は逃げ出し、追っ手を罠にかけて返り討ちにしました。
宮津の部下で船務長の竹中(吉田栄作)は如月や仙石がいる第3区画を封鎖し、無用な戦闘は避けるべきだと主張します。
しかし、ヨンファ(既に自衛官の制服を脱ぎ、軍服に着替えている)は自分の部下がやられた事に憤り、自分達が始末をつけるから、竹中達にはただ艦を動かしていればいいと指示しました。
その頃、如月と合流した仙石はどうやって事態を収めるか考えていました。
当初の計画では、如月が艦底部を破壊し、待機している潜水艦「せとしお」に乗っている突入部隊が艦底の亀裂を通って潜入、テロリストの鎮圧をする予定でした。
しかし、如月を拘束する際に仙石が通信機を壊してしまった為に連絡が取れなくなっていたのです。
「要は、外と連絡が取れればいいんだな」
仙石は配線をいじり、艦のライトでモールス信号を打って外に艦底部に亀裂がある事を伝えました。
一方、防衛庁でも対策が協議されていました。
梶本達はGUSOHに対抗する唯一の武器、テルミット・プラス(6000度の高熱で直径3Kmを焼き尽くす特殊焼夷弾。辺野古ディストラクションでGUSOH消却のために使われた)を戦闘機に積み、いそかぜを爆撃する作戦を立てます。
その裏では、仙石のモールス信号に気付いた渥美の指示で「せとしお」からの突入部隊が準備を進めていました。
しかし、モールス信号は宮津達にも気付かれていました。
宮津の部下達もモールス信号を使って「装置の故障でソナー網に穴がある」とニセ情報を流して突入部隊をおびき寄せようとしますが、それに気が付いた仙石と如月がわざと魚雷を発射し、突入を中止させました。
しかし、これで他に手は無くなり、テルミット・プラス使用に向けて準備が進められる事となりました。
如月や仙石もテルミット・プラス使用を予想し、それを回避するためにVLS(ミサイル発射装置)破壊を決めます。
2つあるVLSのうち、まずは2手に分かれてそれぞれ第2VLSを目指しますが、仙石にはドンチョル少尉(安藤政信),如月にはジョンヒが追っ手として攻撃してきました。
仙石は照明を壊しながら逃げ、暗闇の中で階段の陰に潜んでドンチョルを待ち伏せ、足を攻撃して戦闘不能にします。
如月は銃で撃たれて海中に逃れますが、ジョンヒも泳いで追ってきました。
海中でもみ合いになる中、ジョンヒと如月はスクリューに巻き込まれそうになり、如月は船の亀裂から手を伸ばした仙石に掴まれて助かりますが、ジョンヒはそのまま巻き込まれてしまいました。
仙石がVLS操作室に入ると、砲雷長の杉浦(豊原功補)が待ち伏せていました。
杉浦は反射的に銃を向けましたが、仙石は銃を抜かず説得しようとします。
宮津に従いながらも、ヨンファたちの考えにはついていけないと思っていた杉浦は撃つのをためらい、銃を下ろそうとします。
しかし、仙石に銃が突きつけられているのを見た如月は反射的に杉浦を撃ってしまいます。
「杉浦に撃つ気は無かった。撃つ前に考えろ!」
仙石は思わず如月を怒鳴ってしまいます。
三沢基地では、戦闘機へのテルミット・プラス搭載が終わり、パイロット(真木蔵人)が機に乗り込みました。
「いそかぜ」内では、ヨンファがロッカーからGUSOHを取り出して準備をしていました。
そこに宮津が現れ、息子・隆史の論文を読んで本当に考えに共鳴していたかどうかをもう一度確認してきました。
そして、ヨンファが無言でいると「GUSOHをこちらに渡してほしい。もう終わったんだ」と詰め寄りました。
しかし、ヨンファは無言で銃を抜き宮津を撃ったのでした。
更に部屋の外には如月もおり、ヨンファに撃たれてしまいました。
(宮津はテロをきっかけとして日本政府の危機管理意識を変えようと考えており、本気で攻撃しようとは思っていませんでした。しかし、ヨンファの真の目的は東京を壊滅させ、それを口実に「祖国」の政府を国連軍に倒させる事だったのです)
ヨンファを追いかけようとしていた仙石は、廊下でドンチョルと遭遇し、格闘の末に足にナイフをさして戦闘不能にしてその場を逃れました。
同じ頃、ヨンファは竹中船務長に宮津がいない事を詰問され、竹中を銃殺しました。
仙石がやって来た時はヨンファが去った後でした。
部屋に入った仙石は、撃たれた宮津を発見し手当てをしました。
宮津は全艦放送で「艦の指揮を先任伍長にあずける。以降、彼の指揮に従い、閣員は生きるために最善を尽くせ」と乗組員全員に伝えました。
「亡国のイージス」最後ラストの結末は?
宮津の手当てを側にいた幹部 風間(谷原章介)に託し、仙石は再びヨンファを追いました。
ヨンファは艦を暴走させる為、舵を破壊していました。
その時、やっと仙石がヨンファの前に現れました。
激しい格闘のすえ、互いに満身創痍になりながらも仙石はヨンファを銃で撃ち、GUSOHの奪還に成功しました。
しかし、それを知らない爆撃機は刻々と近づきつつあり、梶本総理も攻撃を許可しました。
その時、偵察衛星が「いそかぜ」の甲板を映し出しました。
そこには、甲板に横たわって必死に手旗信号で通信を行う仙石の姿がありました。
「グ・ソ・ウ・カ・ク・ホ・・・GUSOH確保!爆撃中止!」
信号を解読した渥美が叫びました。
寸での所で、テルミット・プラスによる爆撃は回避されました。
救援のヘリが仙石を救出しましたが、舵を壊された「いそかぜ」は進み続けていました。
その頃、傷つきながらも宮津は艦内に残るヨンファの部下を全員射殺していました。
そして、機関部のあちこちに仕掛けられた爆弾に向かって発砲して爆発させ、「いそかぜ」を沈めてその進行を止めたのでした。
数日後、仙石の元に差出人不明の小包が届きました。
中身は、甲板に座っている仙石の後姿を描いた水彩画でした。
誰からのものか察した仙石は、絵を眺めながらそっと笑みを浮かべたのでした。
完。
「亡国のイージス」見どころ
「某国」工作員によるテロに立ち向かう自衛官 仙石の孤独な戦いを描いた作品です。
テロの首謀者であるホ・ヨンファや、それを阻止しようとするDAISの工作員 如月も無表情で、人としての温かみや感情が抜け落ちているようでした。
それに対して、叩き上げで一人娘の事をいつも思い続けている仙石は、如月を探す為に離艦命令を無視して戻ったり、躊躇なく人を撃つ如月に「人を撃つときは何か考えるものだろう!」と怒鳴りつけたりと、人情味や感情に溢れていて親近感が持てました。
また、自衛官として絶大な信頼を得ていた宮津がヨンファに協力する事となった原因は息子 隆史の死に関する疑惑でした。
如月がDAISの一員となったのは、父親を殺害した事がきっかけでした。
撃たれて意識がもうろうとした如月が、宮津に対して「父さん、全てはアンタのせいだ・・・」と呟き、宮津が感慨深げに「そうだな、全ては父さんのせいだ」と呟くシーンは胸に響くものがありました。
その他にも、かつての味方を攻撃する事になった宮津の部下達の苦悩が感じられたり、ハープーンミサイルや魚雷と言った近代兵器を使った戦闘シーンなど、コンピューター制御の無機質で高度な戦闘とそれを扱う人間の心の動きと言う、相対する構図が新鮮でした。
また、防衛行動しか出来ない日本の自衛隊独特のジレンマや、日本と韓国や北朝鮮との間にある外交問題も織り込まれており、考えさせられる部分もありました。
「ローレライ」「真夏のオリオン」「空母いぶき」などに繋がる、日本人が描く軍隊(自衛隊)サスペンスアクションというジャンルを作り上げた1作で、是非多くの人に見てもらって色々なメッセージを感じて欲しいと思わせてくれる作品でした。
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