映画「太陽は動かない」は、藤原竜也主演、羽住英一郎監督の2021年の映画です。
この映画「太陽は動かない」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見どころについて紹介します。
心臓に爆弾が埋め込まれたエージェントのスパイアクション「太陽は動かない」をご堪能ください。
「太陽は動かない」あらすじ
表向きは小さなニュース配信会社AN通信は、実は国や企業の機密を手に入れて売買するスパイ機関。
そこに所属するエージェント 鷹野一彦(藤原竜也)、田岡亮一(竹内涼真)は心臓に爆弾を埋め込まれ、24時間ごとの定期連絡を怠れば爆死する運命を背負っていました。
ある日、二人はAN機関のエージェント 山下竜二(市原隼人)が拉致され、監禁されているとの連絡を受け、ブルガリアに救出に向かいました。
カーチェイスなどの壮絶な争いを経て、二人はあと一歩のところまで迫ったものの、山下は拷問され情報を漏洩した可能性があると思われ、AN通信上層部の判断により爆死してしまいました。
そもそも山下は香港の振興エネルギー企業 CNOXのトップ アンディ・ウォン(翁華栄)に接触を図っていた筈でした。
山下はどんな情報を掴み、何故監禁される事になったのか?
それを探り出すのが、上司の風間(佐藤浩市)から与えられた二人の次のミッションでした。
手始めに、二人はCNOX主催のパーティに潜り込みました。
裏社会とも繋がりがあり、対抗する者は裏の実行部隊を使って排除してきたウォンの周りには黒い噂が絶えませんでした。
そのパーティにも、情報を掴む為かフリーの韓国人エージェント デイビッド・キム(ピョン・ヨハン)や正体不明の美女 AYAKA(ハン・ヒョンジュ)がやって来ていました。
CNOXは次世代型太陽エネルギーで業界のトップに立つ事を目論み、日本の大手電機メーカーのMETと提携話が進んでいました。
鷹野達は、山下がMETの取締役 河上満太郎(鶴見辰吾)と接触していたと知り、どのような調査を行っていたかを知るために河上の自宅を訪ねます。
河上は山下からAN通信の実態や、エージェントが心臓に爆弾を埋め込まれているという話まで聞いていました。
河上の依頼は、太陽発電事業に不可欠な蓄電池技術をMETが提供し、巨大な発電所を建設する計画を推し進める為に、アンディ・ウォンとCNOXの情報や真の目的、ビジネスパートナとして信頼していいかどうかを調査する事でした。
そして、山下の後を引き継ぐと言う鷹野に、改めて依頼をしてきました。
その時、河上の妻 麻子(宮崎美子)が「出してもいいかしら…」とオムライスを持ってきました。
鷹野は一瞬戸惑いますが、河上に「どうか食べてやってください」と言われます。
実は、かつて河上夫妻がマニラに赴任していた際、彼らの息子が誘拐された事がありました。
夫妻は必死で金をかき集めましたが、間に合わず、息子は行方不明になっていました。
もし生きていれば川上夫妻の息子は鷹野と同じ年頃で、麻子はついつい成長した息子と重ね合わせてしまっていたのです。
しかし、事情を聴いた鷹野は「自分には関係のない事なので・・・」と手を付けることなく立ち去りました。
河上は、死んでしまった山下や鷹野の任務に対する姿勢に危うささえを感じていました。
「どうして彼らはそこまでして・・・」
「太陽は動かない」ネタバレ
話は、鷹野の高校生時代に戻ります。
鷹野だけでなく、AN通信のエージェントは元をただせば親に虐待された子供でした。
彼らはAN通信によって引き取られ、世間的には死んだ事にされます。
そして離島で高校生として暮らしながら格闘技や諜報活動の訓練を受け、18歳になると同時に試験を受け、合格するとエージェントとして働くことになるのです。
高校時代、鷹野は同じようにエージェント候補生として育てられた柳 勇次(加藤清史郎)と共に暮らしていました。
柳には自閉症気味の弟がおり、エージェント試験に失敗して弟を独りにしてしまうことを恐れていました。
柳と鷹野はその不安を振りはらうように、バカな高校生のように暮らしていました。
ある日、島の子供達が海で泳いでいた時、鷹野と柳兄弟はこっそり女子更衣室を覗いていました。
しかし、鷹野は着替えをしている女の子達の中に菊池詩織(南 沙良)を見つけて、慌てて覗きをやめました。
3年生の2学期、東京から転校してきたが二人の通う学校にやってきたのが詩織でした。
鷹野に代わって柳がのぞきましたが、弟が騒ぎ出してすぐに止めてしまいました。
あとで鷹野が、詩織の裸を見たのか聞くと「あの後、すげえババァが入って来て、のぞき穴の前に来たから見えなかった」と笑っていました。
そんな事をしていても、二人が18歳になる日は着実に近づいてきました。
ある日、柳は深刻そうな顔で鷹野に話しかけてきました。
「なぁ、俺達、普通に出会ってたらどうなってたかな?」
「・・・友達になってただろ。フツーに」
「・・・俺、逃げるわ。金になりそうな情報を持って」
そして数日後、柳は本当に姿を消しました。
彼らを監視していたAN通信の教育係たちが躍起になって柳の行方を捜しましたが、消息を掴む事は出来ませんでした。
そんな中、詩織だけは鷹野は同年代の男の子達は違うと感じていました。
そして、鷹野は柳が受ける筈だった試験に挑戦したいと教育係に申し出たのでした。
アンディ・ウォン率いるCNOXの真の狙いが何なのかを探る為、鷹野と田岡は香港のCNOX本社に潜入しました。
セキュリティーの隙を突き、CNOXのサーバーから情報をダウンロードする鷹野。
逃げようとした時、鷹野の行く手を阻む者がいました。
フリー諜報員のデイビッド・キムです。
鷹野を倒して、情報を入れたUSB奪おうとするデイビッド・キム。
防ぐ鷹野の脳裏に、かつての光景が浮かんできました。
柳に代わってAN通信から与えられたミッション。
それは、ある企業に潜入し、新規事業計画の情報を盗み出す事でした。
鷹野は首尾よく潜入に成功し、情報を手に入れる事に成功します。
後は逃げるだけとなった時、鷹野の間に立ちはだかったのがデイビット・キムでした。
その時は、鷹野は情報を記録したUSBメモリーを奪われた上に、キムと揉み合いながら3階から落ちてしまいまいました。
雨どいに摑まって、何とか勢いを殺したおかげでダメージは少なく、警察や警備員に捕まる前に逃げる事は出来ました。
しかし、盗み出した情報は奪われてしまいました。
試験は不合格だったと思った鷹野は、詩織を誘って誰も踏み入る事のない森の奥に行きました。
そこは美しい滝がある鷹野だけの秘密の場所でした。
「ずっと、壁の向こうに行きたいと思っていたんだ・・・」
鷹野は思わずつぶやいていました。
詩織もまたその光景に感動し、自分が高校3年の2学期に転校してきた理由を話し始めました。
詩織にはかつて、好きだった先輩がいました。
ある日、デートに誘われますが、待ち合わせ場所にいたのはその先輩を含めた数人の男子でした。
(そこで何が起きたか、詩織ははっきりとは言いませんでした)
そして過去から逃れるために詩織は離島にやってきました。
しかし、詩織は死ぬことばかりを考え、過去の体験にいまだに恐怖を覚えていました。
「明日のことは考えなくていい。今日一日、とりあえず生きてみる。そしてまた次の1日・・・」
鷹野は詩織だけでなく、自分に言い聞かせるように話しました。
家路についた二人は、どこか吹っ切れたような顔をしていました。
「また、明日」
詩織を見送った直後、鷹野の前に風間が現れました。
「試験は合格だ。明日島を離れる。準備するんだ」
突然のことに戸惑う鷹野でしたが、逆らうすべはありませんでした。
翌日、鷹野はひっそりと島を離れ、詩織とはそれっきりになりました。
キムに屋上から落とされかけた鷹野でしたが、寸でのところで踏みとどまり、逆にキムからUSBを奪い返し、フライングスーツを使って逃げ去りました。
AN通信本部でUSBに収められた情報を解析したところ、厳重に暗号化された情報がある事が分かりました。
更なる解析の結果、それは中東の砂漠ある地点を示す座標でした。
ヘリでその地点に向かった鷹野と田岡は、廃棄された軍事施設だと思われていた場所が巨大な発電所(マイクロ波を受けて直流電流に変えるアンテナ=レクテナの設置場所)になっている光景を目の当たりにします。
CNOXは大気圏外の衛星で作った太陽光発電の電力をマイクロ波に変え、地上で受信して電力に変る宇宙太陽光発電で世界を牛耳るつもりでした。
表向きはMETと提携し、日本にその施設を作る計画を進めていました。
しかし、それはMETから蓄電池技術を奪うフェイクで、本当はここで得られた次世代エネルギーを独占する計画だったのです。
その事に気が付いた鷹野と田岡はその場をはなれようとしますが、監視していたジミー・オハラ率いるアンディ・ウォンの私設軍隊に見つかり、対空ミサイルを撃ち込まれてヘリは墜落してしまいました。
そして鷹野は捕らえられ、廃墟に監禁されてしまいます。
やがて、拷問を受けていた鷹野の胸が赤く光り始めました。定時連絡の時間が迫っていたのです。
後残り時間は5分となったとき、拷問していた傭兵たちが離れ始めました。
山下を捕まえていたのも彼らで、24時間連絡をしないと発動する爆弾の事も知っていたのです。
万事休すと思われたその時、軍用ジープが壁をブチ破って突っ込んできました。
ヘリから逃げた田岡が救出に来たのです。
ギリギリで爆弾を止めた鷹野はジープに乗り込み、周りの傭兵たちを蹴散らして逃げ出しました。
運悪く、傭兵たちが辺りにまき散らしていたガソリンに引火し、鷹野達が逃げると同時に廃墟は大爆発を起こしました。
「今日も生き延びた・・・」
暫くのち、砂漠に大きな夕陽が沈んでゆくのを二人は眺めていました。
「鷹野さん、死ぬの怖くないんですか?」
綱渡りの生活に疲れ切っている田岡に鷹野は答えました。
「明日のことは考えなくていい。一日一日を生きるだけだ・・・」
CNOXの真の目的を知った河上でしたが、発電所の用地買収などの計画は進んでおり、今更止める訳にはいかないと困惑します。
CNOXもまた、秘密を知られて焦り出します。
CNOXが次に目をつけたのは、ブルガリアのソフィア大学の小田部教授(勝野洋)でした。
教授は衛星からマイクロ波で送電する技術研究の最先端をゆく人物でした。
CNOXは彼の身柄を確保する事で技術を独占しようとしていました。
しかし、マイクロ波送電技術を確保しようとしていたのはCNOXだけではありませんでした。
鷹野に情報を奪われたデイビッド・キムでしたが、小田部の娘 菜々(八木アリサ)に近づき、恋人として入り込んでいました。
その一方でAYAKOとも接触していました。
そして、手を組む見返りとして、インドにいる15歳の少年が開発した、太陽光発電に使えば発電効率が数倍に跳ね上がる新素材という「切り札」を明かしました。
デイビッド・キムはCNOXを出し抜き、小田部をロシアに売り渡そうとしていました。
そしてデイビッド・キムと小田部はロシアに向かう列車に乗り込みました。
乗車の直前、デイビッド・キムは菜々がCNOXに誘拐されたと知りますが、教授には知らせることなく列車に乗り込みました。
列車には小田部を追って、鷹野や田岡も乗り込んでいました。
やがて、車内を不審な男達がうろつき始め、あちこちにアタッシュケースを置いてゆきました。
そして時間が来ると、アタッシュケースからガスが噴出し始め、乗客が次々と眠りこけてゆきました。
デイビッド・キムもAYAKAに裏切られて眠らされてしまいます。
そんな中、男達はガスマスクをつけ、小田部を拉致しようとします。
ガスにいち早く気が付いた鷹野達は男達からマスクを奪い、眠らされるのは防ぎましたが、監禁されている菜々の写真を突きつけられた小田部は男達の言いなりになって列車から連れ去られてしまいました。
小田部親子を連れ去ったのは、CNOXの私設軍隊でした。
彼等は小田部をタンカーに連れ込んで港を離れました。
その頃、CNOX本社やアンディ・ウォンの元には一斉に捜査が入っていました。
政府や裏社会の権力者達は、CNOXを危険と判断し、アンディ・ウォンを切り捨てにかかったのです。
焦ったアンディ・ウォンは、証拠隠滅の為に小田部達の乗ったタンカーを洋上で沈めるように命じます。
小田部を救出する為にタンカーに潜入した田岡は、中東で爆発から逃れて生き残ったジミー・オハラに見つかって囚われてしまいます。
(ただし、田岡がジープで突っ込んできた時、オハラは落ちてきた瓦礫に足を挟まれて動けなくなってしまいました。そこから逃れる為に片足を切り落としたので、その時のオハラは義足を付けていました)
鎖で柱に縛り付けられ、拷問される田岡。
やがて、バラストに注水を続けたタンカーが傾き始めます。
そこへ、鷹野が飛び込んできました。
同じ頃、METの河上は独自に調べた風間の自宅を訪ねていました。
そして、鷹野の生い立ちを聞き出しました。
幼かった鷹野は、母親にネグレクトされ、弟と共にアパートの一室に閉じ込められました。
母親は恋人と共に旅行に出かけ、二人の食料が尽きても帰ってきませんでした。
ある日、ボヤ騒ぎが起こり、閉じ込められた部屋の扉が開けられました。
その時、既に餓死して遺体になっていた弟を抱き、鷹野は「弟を病気にしてごめんなさい・・・」と呟いていました。
AN通信の指示により鷹野を保護し、高校入学まで風間は共に暮らしていました。
しかし、鷹野の心の中にはあの日の体験が色濃く焼き付いていました。
ある日、鷹野はかつて弟と置き去りにされたアパートの一室を再現し、火をつけて自殺を企てました。
燃え盛る部屋に飛び込んだ風間は、瓦礫に足を潰されながらも叫びました。
「明日の事は考えなくていい。取り敢えず今日1日を生きてみろ!」
この時の後遺症で風間は足が不自由になり、車いすが手放せなくなりました。
しかし、鷹野を見捨てることなくエージェントに育て上げました。
胸に爆弾を埋め込まれるエージェントの人生は過酷そのものだとは風間も知っていました。
しかし、それでも風間は鷹野が親元に帰される事を防ぐ為に、鷹野を死んだ事にして引き取る事にしたのです。
「太陽は動かない」最後ラストの結末は?
船室が水没してゆく中、小田部親子の救出には成功した鷹野でしたが、田岡を縛り付けた鎖を外す事が出来ずにいました。
「もう行ってください、鷹野さん!俺はもういいんです。こんな生活、もう終わりにしたいんです!」
しかし、鷹野は決して諦めず、全身水に浸かりながらもバールで鎖を切る事に成功します。
何とか船室から脱出したもの、救命ボートもなく洋上に浮いていた鷹野達は、何処からともなくやって来たヘリに救助されます。
助け上げられ、ヘリの中で待っていたのはデイビッド・キムでした。
「どうして俺を助けた?」
不思議がる鷹野に、デイビッド・キムは笑って答えました。
「俺の依頼主からの命令だ。”鷹野は必ず生きて連れ帰れ”ってな。それと依頼主から伝言だ。『実はあの時、(詩織の)ケツは見た!』だとさ・・・俺には何の事かサッパリ分からん」
しかし、鷹野はすぐに気が付きました。
今回のデイビッド・キムの依頼主は、あの時に姿をくらました柳だったのです。
数か月後、METは独自に太陽光発電施設を立ち上げました。
発電所の目玉は、インドのベンチャー企業から入手した新素材を使ったソーラーパネルでした。
記念パーティの最中、そのベンチャー企業の代表者としてスクリーンに映し出されたのは、新素材の開発者である15歳の少年とAYAKAでした。
そのパーティの後、鷹野は河上に話しかけられます。
「胸の爆弾の事は知っています。でも、このままでいいんですか?」
そう聞かれた鷹野の視線は、ロビーの方に向かっていました。
その先では、成長した詩織が離島の友人と久しぶりの再会を喜び合っていました。
「・・・今は壁の向こうにいます。生きているだけでいい。どこにでも行けるんです」
そう河上に言いながら、鷹野はホテルを後にしたのでした。
THE END
「太陽は動かない」見どころ
企業や政府機関から秘密情報を奪取・売買する秘密組織 AN通信のエージェント鷹野と田岡の世界を股にかけた活躍を描いたアクション映画です。
心臓に爆弾を抱え、24時間ごとの定時連絡を過ぎれば爆死すると言う過酷な運命を背負いながら、各国のスパイ達を相手に情報戦や格闘、カーチェイスを繰り広げる姿は、日本映画とは思えないようなスケールで、手に汗握る緊張感と見応えがありました。
AN通信のエージェントは、全員がかつて親から虐待され、殺される寸前だったところを保護された子供達だと言う設定も見どころの一つです。
本来なら失うはずだった命を任務の為に燃やし尽くす者もいれば、死の恐怖が頭から離れなくなる者もいるのは人間味が感じられ、リアルな気がしました。
「明日の事は考えなくていい。まず今日1日を生きるんだ」と言う言葉もズシンと重みがあり、心に響きました。
また、エージェント達を想いながら、自分も組織の一員であり、感情を殺して上からの命令に従う風間の苦悩も作品に彩を添えてくれます。
世界の先端技術をめぐる情報戦を垣間見たような、スパイ映画らしい作品を久しぶりに楽しめました。
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