映画「脳男」は、 2013年の生田斗真主演、瀧本智行監督の日本映画です。
そんな、映画「脳男」のネタバレ、あらすじや最後ラスト、結末、見所について紹介します。
首藤瓜於による原作で、第46回江戸川乱歩賞受賞を受賞しています。
「脳男」スタッフ・キャスト
■ スタッフ
監督: 瀧本智行
製作総指揮: 城朋子
製作:藤本鈴子、由里敬三、藤島ジュリー景子、市川南、藤門浩之、伊藤和明、入江祥雄、松田陽三、宮本直人
脚本: 真辺克彦、成島出
撮影: 栗田豊通
音楽: 今堀恒雄、ガブリエル・ロベルト、suble■ 主要キャスト
鈴木一郎 / 入陶大威:生田斗真
鷲谷真梨子:松雪泰子
緑川紀子:二階堂ふみ
水沢ゆりあ:太田莉菜
広野:大和田健介
志村昭文:染谷将太
伊能:小澤征悦
藍沢:石橋蓮司
入陶倫行:夏八木勲
茶屋刑事:江口洋介
「脳男」あらすじ
物語の冒頭、何かを作っている緑川紀子(二階堂ふみ)の背後には口をふさがれた女性が涙を流しながら捕えられています。
その女性の猿ぐつわを外した水沢ゆりあ(太田莉菜)は、彼女の舌をペンチで挟み、鋏で切り取る…
呻き苦しむ女性を前にして高笑いする水沢、室内には他にもホルマリン漬けの舌とその持ち主と思われる人々の写真が何点か…。
女性はその後、爆弾を背負わされてバスに乗せられます。
そのバスに乗り遅れたのが精神科医の鷲谷真梨子(松雪泰子)でした。
タクシーに乗り込もうとした彼女の前方で、突然バスが爆発。
それは最近続いている無差別爆弾事件の新たな被害者だったのです。
警察では、爆弾から特殊な鋏の微細粒子が見つかった事によって販売元を突き止めます。
入手した顧客情報を手に入れ、劇団の練習や小道具を置くのに、と借りられていた倉庫へと向かう茶屋(江口洋介)と広野(大和田健介)。
到着した途端聴こえてきた女の悲鳴と銃声らしき音に緊張が走る2人は、銃を構え踏み込みますが、ドアを開けた途端に起きた爆発で広野は階下へと吹き飛ばされてしまいます。
広野の無事を確認した茶屋が踏み込んだ室内には、一人の男が立っていました。
何の抵抗もせず捕縛される男、その背後では走り去っていく車の音が聞こえます。
『誰を逃がした!?』と詰め寄る茶屋の剣幕にも全く表情を変えない男…。
茶屋(江口洋介)が捕えた男は『鈴木一郎』(生田斗真)と名乗り、自分の事についてはそれ以外何一つ話そうとしません。
彼は連続爆弾魔なのか…?
彼の過去を紐解いていく事で様々な犯罪が絡んでくる物語、結末は果たしてどうなるのでしょうか?
「脳男」ネタバレ
連続爆弾魔として続く聴取の日々でしたが、そんななか鈴木(生田斗真)は『年寄りだから一人殺したくらいでは罪も軽い』そう嘯く男の言葉を聞きます。
翌日の取調室への移動の際、嘯いていた男を認識した鈴木は、擦れ違いざま男に襲いかかりました。
この一件により精神鑑定が必要と判断され、担当になったのが真梨子(松雪泰子)でした。
鈴木と対面した真梨子は、茶屋(江口洋介)から『逮捕時、まるで痛みを感じていないようだった』との話を聞き、軽く雑談を仕掛けるようにして鈴木の肩を安全ピンで針を刺してみます。
しかし彼は全く表情を変えません。
『何も感じない』という彼に今度はポリグラフ検査を行ってみる事にしました。
すると不思議なことが分かります。
通常人間は、刺激的な質問を受けた場合その質問の途中で意味を理解し驚きの反応を見せるものですが、鈴木は質問を最後まで聞いてやっと驚く、という反応を繰り返したのです。
これは普通にはあり得ない事でした。
もしかしたら生まれつき感情がない?生きていく為に必要な知識として感情を教えられたかのような鈴木に驚きを隠せない真梨子。
ある日、分析に向かう鈴木と真梨子の前に、少年院を出所したばかりの志村(染谷将太)が挨拶に訪れます。
にこやかに談笑する彼をじっと見つめる鈴木、そんな彼に真梨子は志村の事を一番大切な患者だと説明するのでした。
そんなおり、真梨子は鈴木と同じ、珍しいRh-のO型で感情が欠落した患者について詳しく書かれてある文献を手にします。
その文献を書いた藍沢(石橋蓮司)に会いに行った真梨子は、そこで彼がかつて鈴木の教育係だったことを知るのです。
かつて彼が運営していた施設に入所してきたのが入陶大威(いりすたけふみ)(生田斗真)でした。
施設内には自傷行為を繰り返す子供らが沢山いましたが、彼は他のどの子供とも違う、まるで呼吸以外の自発的な動きが全くない人形のような子でした。
彼の両親は、大威(生田斗真)が施設に入所してすぐ、ひき逃げ事故により亡くなってしまいます。
その後莫大な財産を持つ祖父、入陶倫行(夏八木勲)は大威を引き取ると同時に、藍沢を彼の教育係として専属契約を結び、トイレの躾から食事の仕方まで教え込み、人間らしい生活が送れるように導くよう指示を出しました。
自発的な動きがないからと言って大威の知能が低いというわけではありません。
あくまで感情面の遅れが見られるだけで、知能はむしろ高いのに、支持をしないと食事もできない、まるでコンピューターのような大威を藍沢は密かに【脳男】と名付けていました。
そんな大威の特性を使い、理不尽に息子を奪われたことで徐々に狂っていった倫行(夏八木勲)は恐ろしい計画を立てます。
伊能(小澤征悦)というプロクライマーを雇い大威の体を徹底的に鍛え上げるよう指示を出したのです。
それと並行して、ありとあらゆる殺人方法を学ばせながら、倫行は大威に囁くのでした。
『この世にはびこる悪を殲滅しろ。それこそお前に与えられた使命だ。』
毎晩繰り返される呪詛のような言葉に危機を感じた伊能は倫行を言いくるめ彼を外へ連れ出すようになります。
外の世界に触れさせることによって大威に感情を持たせられないかと考えたからです。
その甲斐あってか、クライミング中に落ちかけた伊能が大威を巻き込むまい、とロープを切るよう出した指示を彼は無視します。
それは大威が初めて命令に背いた瞬間であり、彼の心にも感情が生まれてきた証拠のようにも思えました。
そんなおり、皮肉な形で倫行の願いは聞き遂げられます。
強盗により刺され、火を放たれる倫行。
そこで彼の命じる『殺せ』との言葉に従って大威は初めて人を殺してしまうのでした。
伊能(小澤征悦)の証言により、精神鑑定の必要がなくなった大威は、身柄を病院から警察署に移される事になりました。
その前に、と真梨子は病院に帰ると、大威に自分の過去を話し始めます。
自分の弟が殺されたこと、捕まった犯人はまだ中学生だった志村(染谷将太)だったこと、自分は殺してやりたいほど憎い犯人のカウンセリングを担当して彼を更生にまで導いた、と。
涙ながらに訴えかける真梨子を前に、わずかな変化が見られる大威の表情を見逃さなかった彼女は『今何を感じたの!?本当は感情が生まれたのに押し殺してるんじゃないの!?あなたは人殺しになるために生まれてきたわけじゃないの!』と、彼の心に強く訴えかけるのでした。
真梨子との会話を強制的に終了させられ移送されていく大威でしたが、その車中、彼は隠し持っていたクリップで手錠を外し、広野(大和田健介)を人質に自身の解放を茶屋(江口洋介)に要求します。
銃を取出し対峙する茶屋。
その移送車を後ろから猛スピードで追ってくる一台のバイクがありました。紀子(二階堂ふみ)と水沢(太田莉菜)です。
移送車を先導するパトカーの運転手をボーガンで撃ち殺し、更には別の警察官をも躊躇なく殺す紀子の前に、ゴタゴタに乗じて茶屋の拳銃を奪った大威が姿を現します。
銃口を向ける大威の動きを察した水沢は紀子を庇って銃弾に倒れました。
死の間際、水沢はボーガンに仕込んだ爆弾を起爆させ、辺り一帯火の海になります。
その隙を狙って紀子と大威はそれぞれ逃走したのでした。
逃げたはずの紀子は真梨子の病院に現れ、彼女を拉致、病院のアチコチに爆弾を仕掛け爆破させます。
逃げ惑う人々。
怪我をした広野(大和田健介)の見舞いに来ていた茶屋(江口洋介)が陣頭指揮をとる形で、警察官や爆弾処理班による捜索が始まりました。
その彼らの前に現れたのは大威でした。
紀子からの『本館の8階に来い』という指示に従って移動する茶屋と大威。
そこには爆弾を体に巻きつけられ車いすに座った広野の姿がありました。
我が目を疑う茶屋に『大威を殺せば広野の爆弾を止める。』そう言い放つ紀子の思惑通り、大威と死闘を繰り広げる茶屋の姿を見て、広野は自ら身を倒す衝撃で爆弾を爆発させ死んでしまうのでした。
「脳男」最後のラスト結末
呆然自失の茶屋。
彼を置いて右足を負傷した大威は、駐車場へと移動した紀子を追います。
そんな彼を躊躇なく車で跳ね飛ばす紀子。
何度も撥ねられる大威を見て耐え切れず涙する真梨子はサイドブレーキを引き、やっとの事で紀子の暴挙を止めることが出来たのでした。
車内で意識朦朧としている紀子を大威は引きずり出し、彼女の首を絞めます。
しかしそれを止めたのもまた真梨子でした。
『もう誰も殺さないで。あなたは殺人ロボットじゃないの』
そう泣き叫ぶ彼女に声に止まった大威の一瞬の隙をついて紀子が起爆装置を押そうとしたとき、一発の銃弾が彼女の胸を打ち抜きます。
それは憎しみに燃えた茶屋でした。
息絶えた紀子に何発もの銃弾を撃ち込む茶屋。
その後、大威に銃を向け引き金を引きますが、弾はもう切れています。
茶屋に、本気で彼を殺す気があったようには見えないのでした。
事件後。
部屋で物思いに沈む真梨子に『先生の一番大切な患者を殺します』というメールが届きます。
必死に彼の家まで走る真梨子でしたが、しかし時すでに遅く、部屋には変わり果てた志村(染谷将太)が横たわっているのでした。
その時、彼女は小さな物音を聞きます。
部屋中をバタバタと探しまわり、風呂の蓋をあけるとそこには、かつて志村に弄ばれ殺された彼女の弟と同じように髪を剃られた少年が隠されていたのでした。
絶望感に絶叫しながら少年を抱き締める真梨子。
映画のラストシーン。
人ごみの中で真梨子は大威からの電話を受け取ります。
彼は『先生を裏切った志村の事が許せなかった』と殺害の動機を語りました。
『自分の為に涙してくれたのは先生しかいなかった』そう言った彼の口元には微かな笑みが浮かんでいます。が、すぐに何も映さない冷たい目に戻る大威。
そのまま彼はまた姿を消すのです。
THE END
「脳男」見所ポイント!
現実の世界でも時折問題視される、被害者の人権、被害者遺族の気持ちと加害者のその後の更生について、ややハードな見方から作られた作品だと思います。
今作で、生田さんはアクションに備えてトレーニングや訓練を積み、まるで鋼のような肉体を作り上げられています。
今作の3年前に公開された「ハナミズキ」の生田さんとはかなり違います。
しかし、アクションシーンがそれほど特化されていないので、感情のない静かな演技も良かったですが、正直もう少し動くシーンを楽しみたかったかな、という気がしました。
また、二階堂さんは、今までもかなりトリッキーな役柄から重たい役まで、様々演じ分けられていますが、この作品でも存在感の異様さが際立っていたように思います。
なんというか、この人普通じゃないな、というか…。
監督からはとにかく病的に痩せて欲しい、と言われかなり厳しいダイエットをされたそうですが、そういった事ではなくてもう眼が、眼の光が異様な感じがします。
この人は何を考えているのか分からない、といった点において、生田さんは沈んだ瞳で、二階堂さんはキラキラ輝く瞳で、それぞれタイプは違うのにきちんとこちらに伝わってくる演じ方をされていたのが印象に残りました。
生田さんが二階堂さんの首を絞めるシーンでは、監督からの指示で力を入れたところ、二階堂さんがガクッと失神してしまい、それがトラウマになった、というような裏話も飛び出すほど本気の演技がぶつかり合っている映画です。
だからこそもっとアクションシーンを…と思ってしまいますが、それは贅沢というものかもしれませんね。
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