映画「フォーリング・ダウン」はマイケル・ダグラス主演、ジョエル・シューマカー監督の1993年の映画です。
この映画「フォーリング・ダウン」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見どころについて紹介します。
厳格で几帳面な男がブチギレた顛末を描く「フォーリング・ダウン」をご堪能ください。
「フォーリング・ダウン」あらすじ
1991年6月、ロサンゼルス──
耳にする音や、目にするモノすべてに息苦しくなった男(マイケル・ダグラス)。
エアコンが壊れた車内は暑く、窓を開けたくても手動ハンドルはクルクルと空回り。
首筋に汗を垂らす男を挑発するように、ハエが車内を飛びまわり我慢の限界!
朝から工事渋滞しているハイウェイのド真ん中、車から降りて茂みの中へ消えます。
身なりは白シャツ、ネクタイ、メガネに角刈り頭。
ブリーフケースを持ち、スラックスに革靴、ごくごく普通の男。
ところが何だか今日は、み~んなが邪魔してるように思えて全部ブッ飛ばしたくなる!
街を歩く、今にも心が壊れそうな男の事情なんて知らない、他人にとっては『ただの異常者』です。
同じくハイウェイの渋滞にハマっているのは、ロス市警の刑事・プレンダガスト(ロバート・デュヴァル)。
持ち主が消えた車の数台うしろに居ましたが、やって来た白バイに気づき車を降ります。
隊員と共に路肩に押してやる、放置車両のナンバープレートには『D-FENS(ディ-フェンス)』の文字。
男の顔も事情も知らないプレンダガストは、この時は大して気にも留めませんでした。
今日で刑事を辞める彼は、定年までは数年残る早期退職を選んだ男。
刑事として第一線で活躍できるハズなのに、もっぱら強盗事件の調書を取る内勤のみ。
「外勤を怖がる腰抜け」と同僚や署長は、もはや刑事ではない彼を軽蔑していました。
プレンダガストの抱える事情も知らず、退職も寂しいとは思ってくれない署長たち、彼はグッと我慢します。
銃を返却し、退職の書類を記入していると彼の元にやって来たのは、食料雑貨店を営む韓国人・リー。
調書を取るプレンダガストは、何とも可笑しな話に拍子抜けします。
「何も盗られてない!あいつ、値段を下げさせて商品をぶち壊したんだ!」
リーが手にした護身用バットを奪い取って暴れたらしいが、ちゃんとコーラを買った!?
「白人、白シャツにネクタイ……あの男、異常だ」
どんなに訴えても強盗事件とはみなされず、他の部署へ回されるリー。
ところが“白シャツ、ネクタイ男”の目撃情報が、相次いで舞い込むように!
刑事人生さいごの日に、プレンダガストは気持ちを掻き立てられます。
実は似た者同士のこの二人は・・・
「フォーリング・ダウン」ネタバレ
他人が呼び止める声も聞かず、ただ一言「家へ帰る」とだけ言って、ハイウェイに車を放置した白シャツ男。
かつては家族三人、海の近くに建つ家で幸せに暮らしていました。
妻・エリザベス(バーバラ・ハーシー) 愛称:ベス、幼い娘・アデル。
男は、酒もクスリも暴力もない真面目な性格だけど、いつからかベスは恐怖を覚えます。
そして離婚、ベスは男とアデルの面会も禁止して関係を断ち切りました。
でも今日はアデルの誕生日、男の願いは家に帰って一緒に祝いたい……
茂みを抜け公衆電話の受話器を握りしめる男は、ベスの声を聞くと何も言えず電話が切れます。
もう一度掛けよう、小銭を切らした男はリーの食料雑貨店で両替を求めますが、交わす言葉でストレスが増幅。
大暴れした男はリーが警察で訴えた通り、コーラを買って満足気に店を出ました。
丘にある空き地、コーラを飲んで休憩する男は、そこが不良の溜まり場とは知りません。
早速、男に詰め寄る二人の若者は、金目の物が入っていそうなブリーフケースを要求。
争う気は全くなかった男ですが、ナイフを突き付けられ気が変わってしまいます。
「疲れてる人間を、5分と休ませてくれないのか?カバンが欲しいならやるよ…」
ブリーフケース、そしてバットを手にした男は二人をおもいっきり殴打。
バットを投げ付け「邪魔するな、家に帰るんだ!」と発狂する男に、二人は逃走します。
男は、不良が落としたバタフライナイフをポケットに仕舞いました。
この出来事は後に起きる、無差別乱射事件のキッカケとなり、内勤に徹する刑事・プレンダガストの耳にも届きます。
プレンダガストが早期退職を希望したのは、妻・アマンダのためでした。
夫婦には幼い娘を亡くした過去があり、心の傷は時間が経った今も癒える事はありません。
命懸けの仕事をするプレンダガストを『異常過ぎる』ほどに心配するアマンダ。
普通の精神状態を保てずに、何度も電話を掛けては夫に帰宅するよう激高します。
もちろん退職するこの日も、今すぐにでも帰るようアマンダはしつこく電話。
妻と仕事、どちらも大切なプレンダガストは苦悩していました。
そんな彼を唯一気に掛けるのは、かつてバディを組んだ女性刑事・サンドラだけ。
だけど、夫婦の事情までは知らない彼女も、早期退職する彼にガッカリしています。
白シャツ男は、人々が行き交う街の公衆電話の前に居ました。
再び掛かって来た電話に「あなたでしょ?何の用なの?」と冷たいベス。
「家に行く」と声を押し殺す男、すると聞こえて来た銃声に何かが弾けてしまいます。
銃を撃ちながら、暴走する不良グループの車。
真の標的は男ですが、銃弾を浴びるのは巻き込まれた他人でした。
暴走車はクラッシュ!流血する一人の若者に近づき「外したな」と微笑む男。
狙いを定め若者の足を撃ち抜くと、大量の銃器が入ったバッグを奪います。
その後も、不愉快な気分にさせる他人に出会い、男のストレスは増幅!
感情コントロールが不能になる『異常者』は、家に帰る思いだけを胸に歩き出します。
一方、男を恐れるベスは地元警察に通報。
でも、暴力を振るわれた事もない被害ナシの現状に『過剰すぎる』と相手にされません。
公園を歩く白シャツにネクタイ、ブリーフケースを持った男に「カネ!食べ物!」と“ねだる”奴が現れました。
「カバンを二つも持ちやがって!これが公平と言えるか?」
そう言われた男は「そうだな…もう要らん」とブリーフケースを渡し行ってしまいます。
まさかの展開に金目の物を探すと、中身はリンゴにサンドイッチ!?
白シャツにネクタイ、身なりのしっかりした男も一か月前に解雇され今は無職。
娘の養育費も滞る男は、その事実を誰にも言えずにいました。
その頃、警察では不良仲間の少女が「白人に撃たれた!……バットで殴られて…」と証言。
これを聞いてピンと来た刑事・プレンダガスト、それは食料雑貨店のリーの言葉です。
朝8時過ぎ、被害に遭ったリーは、同じ身なりの男にバットを奪われている。
不良が溜まり場にしている丘に行った男、そこでアイツらは男にバットで殴られて逆上。
そして、丘から更に進んだ場所で乱射事件を起こし、男に足を撃たれた……
プレンダガストは、異常な白シャツ男の存在を伝えますが、誰も相手にしません。
ハンバーガー店で発砲事件発生、天井を撃ち抜かれました。
11時33分に朝食メニューを頼んだけど、3分前に終了していて“もめた”ようです。
食料雑貨店のコーラ同様「…食った分は、払って消えたそうだ」と呆れる同僚刑事。
現場へ向かった、女性刑事・サンドラの調べでは「脅したのは、白シャツの男」
更に「バッグには、銃がギッシリ…」
乱射事件の被害者は小さな女の子も居て、胸を痛めるプレンダガストは悪い予感がします。
その頃、娘・アデルへの贈り物・スノードームを買い、静かに家へと向かっていた男。
靴底に開いた穴が気になり、近くの払い下げ軍用品店に入りました。
店主は、警察無線の盗聴が趣味で、ネオナチ思想のニック。
男が、ハンバーガー店でマシンガンをブッ放した奴だと気づき、勝手に心酔しています。
ところが、男に“同類”では無いと反発されニックは逆上!
男以上にヤバい奴・ニックは、銃口を男に向けるとバッグに入ったスノードームを破壊。
込み上げる怒り、追い詰められ感情をコントロール出来ない男は、バタフライナイフをニックに突き刺しました。
そして、躊躇すること無くニックを射殺した男は、精神が崩壊します。
バットを奪い殴打、大量の銃を持つ『異常者』が街に野放し……
「白シャツにネクタイの男を、追うべきだ!」と訴えるプレンダガストを同僚は無視。
じっとしていられないプレンダガストは、心に溜まった思いを女性刑事・サンドラに吐き出しました。
事情を知った彼女は、これが“最後の仕事”になる彼と、もう一度バディを組んで捜査に向かいます。
一方、払い下げ軍用品店で殺人を犯した白シャツ男は、ベスに電話を掛けると一人で淡々と喋り始めました。
「……ある国では、夫を侮辱した妻を殺しても罪には問われない」
戦闘服に着替えた男は再び家へと歩き出しますが、どこもかしこも工事中で嫌気が差す!
バッグからバズーカ砲を取り出すと、ブッ放し工事現場を破壊しました。
女性刑事・サンドラと一緒に、リーが営む食料雑貨店にやって来たプレンダガストは、まわりの景色を見渡すとある事に気づきます。
朝、渋滞するハイウェイで、彼が車から見ていた巨大な看板がありました。
店の前の茂みを駆け上がって行くと、ハイウェイに出たプレンダガストは、放置車両を思い出します。
『D-FENS(ディ-フェンス)』その所有者が、白シャツ男……名前はウィリアム・フォスター。
彼の実家を訪ねたプレンダガストは、離婚した妻、娘の存在を知りました。
軍需工場で国のために働くウィリアム、母親でさえ『殺意を感じる』息子に怯えています。
「軍需防衛産業か…“D-FENS”…」
息子が工場を解雇されたと初めて知った母親は、孫の居場所も知らないと言いました。
家族にも思いを吐き出せず、守りたかった物も失った、彼の苦悩を思うプレンダガスト。
その頃、ウィリアムからの電話に出たベスは、家のスグ近く。
海の前にある売店に彼が居ると気づき、娘・アデルを連れ飛び出しました。
入れ違いで家に入ったウィリアムは、家族三人が暮らした頃のホームビデオを再生。
必死に、アデルをあやす彼は空回り。
泣き止まない娘を思うベスが「強引過ぎる、怖がってるわ…」と冷たい顔をしています。
一方、ウィリアムの動向、点と点が繋がり不明だった元妻・ベスが住む家を突き止めたプレンダガスト。
署を出ようとすると、電話を掛けて来た妻・アマンダが「いつ帰るの?」と激高!
これまでは、穏やかに言う事を聞いてきたプレンダガストですが、今日は違いました。
「……仕事が終わったら帰る!分かったか?」
妻にビシッと言い返し高揚すると、次は鬱憤を晴らすように同僚刑事をノックアウト!
女性刑事・サンドラと共に、プレンダガストはウィリアムに迫ります。
「フォーリング・ダウン」最後ラストの結末は?
家の前に停まった車、警察だと気づいたウィリアムは銃を握ると、サンドラの腹を撃ちました。
銃声を聞いたプレンダガストは、サンドラの元へ駆け付けると救急車を要請。
「捕まえてね!」と言う彼女の言葉に、プレンダガストは“銃を借りて”走り出します。
ウィリアムは、家族三人の思い出がある桟橋の先に、ベスとアデルを見つけました。
「パパ!」と純粋に喜ぶアデルですが、ベスの顔は強張りウィリアムを拒絶します。
銃を取り出す彼に怯えるベス、小さなアデルもそんな父に笑顔が消えました。
泣きながら、アデルを抱きしめるウィリアム「これからは、ずっと一緒だ」
そこに、ポップコーンを食べるプレンダガストが現れ、他愛もない話を始めます。
ゆっくりと三人に近づくプレンダガストは、ベスだけに刑事である事を伝えました。
可愛らしいアデルにポップコーンを渡すプレンダガストは、二歳で亡くなった娘、そして妻に思いを寄せます。
娘がくれるポップコーン、銃を地面に置いて気が緩んだウィリアム。
その時、ベスが銃を奪い海に投げ捨て、プレンダガストの銃口が彼を狙います。
報われない人生に嘆くウィリアム、それでも正当化は出来ない事件を起こした事実。
プレンダガストは自首を促しますが「今日は暑いな」と海を見つめるウィリアムは、この人生にケリをつけます。
「銃があるんだ…」とポケットを触る彼、その言葉は嘘では無いと感じるプレンダガスト。
決して怯まず銃口を向けていますが、ウィリアムも動じず3つ数えはじめます。
「1…2…」
「やめろ!頼む」
そして「…3」プレンダガストが撃ち抜きました。
ポケットから、アデルのおもちゃ・水鉄砲を出したウィリアムは、海へと落ちて行きます。
ロサンゼルスの街に現れた『異常者』が一人居なくなり、事件を解決したプレンダガスト。
その表情は、決して晴れやかではありません。
THE END
「フォーリング・ダウン」見どころ
暑い季節になると、マイケル・ダグラスを思い出す・・・そんな方も多いはず!
もちろん、こんな男に街で出くわしたら瞬時に逃げ出すし、絶対に関わりたくないです。
耳障りな雑音、けしかけるようなナンバープレートの文字に、のっけから不快指数満点!
めっちゃ我慢してるわ~って感じが嫌なくらい伝わる、白シャツおじさん(マイケル・ダグラス)の“どアップ”は、こっちまで息苦しいです。
そんな“白シャツおじさんの一日”は、ユーモアもありつつ、ギリギリアウトー!
イラッとさせる相手には銃を見せ、街の公衆電話も、ゴルフカートもバンバン撃っちゃう。
だけど、的外れなイカれた奴の大暴走って事でも無く。(やや言い切れない感はあるか…!?)
社会の不条理に怒ってるって感じで、イヤじゃない。(私にも鬱憤が溜まってるって事か!)
やっちゃダメな事とは、分かっていても「おぉ~、いいね~」と、あなたも感心するかも。
本作は、基本的に誰かが誰かを嘲笑って、怒りにワナワナ震えて、恐怖に怯えてる。
ヤバい奴らが大集合の映画だけど、引き込まれたら目を離す事が出来なくなるでしょう。
白シャツおじさんを追い掛ける、プレンダガスト刑事を演じた名優・ロバート・デュヴァル。
どんなに嫌味を言われても、何とか受け流して来た彼もまたイライラを溜めています。
白シャツ同様、心が崩壊する側に行っていたかもしれない男。
最後、二人が対峙するシーンは、切なさを感じる名場面です。
そこに行きつくまでの出来事を、しっかりと目に焼き付けて男たちの悲哀を感じて下さい。
最初の敵!?食料雑貨店を営むリー(マイケル・ポール・チャン)も、なかなかタチ悪そう。
白シャツおじさんが抱えるストレスの一因が、食料雑貨店での会話で感じられます。
※個人的に、映画『グーニーズ』(1985年)好きとしては、チョイ役ですが“発明好きの中国少年・データ”の優しいパパ役のマイケルさんが好きです。
本作に登場する、あんな横柄な店主は誰だって嫌だー!だから白シャツおじさん頑張れ~。
戦闘モードに入って「さぁ、どうする?」と護身用バットを奪取。
「消費者としての主張をするぞ!高すぎるー!!」もう見事な暴れっぷり!
なんか怖い事してるのに、笑えてしまうのがこの映画の凄い所です。
更に、人気の名シーンが、ハンバーガー店でのひととき。
めっちゃ笑顔の美人店員に、ご機嫌な白シャツおじさんは朝食メニューを注文します。
ところが「もう、終わりです!」さらに店長まで「終わってます……お気の毒に」と笑顔。
そこで、脅しのマシンガン登場!でも思いがけない暴発に動揺しちゃう白シャツおじさん。
その後「インチキじゃないか!」と店員や客に尋ねる“ハンバーガーあるある”は、多く共感を呼んでいます。
銃で脅されてる状況だけど、リック店長&美人店員・シーラの顔芸は何度見ても笑えます。
白シャツおじさんは狂気をはらむ一方で、実は正義感があって優しい人なんだろうなぁ。
そんな風に思えるのは、社会からハジかれた弱者の声に耳を傾けたり、子供を守ろうとするシーン。
『工事現場に、バズーカ砲を撃ち込んでみた』は、過激では無く、男の子との“ほのぼの”とした素敵な!?やり取りが楽しめます。
また違う場面では『白シャツおじさん、美容整形医の豪邸に侵入して、バーベキューしている管理人家族に遭遇』。
ちっぽけな人生に悲観する白シャツおじさんは、小さな女の子(管理人の娘)の事を傷付けてしまったと取り乱します。でも、それは・・・
白シャツおじさんの真剣にキレてる顔や、妻と娘を思う悲しい顔。
マイケル・ダグラスが魅せる、さすがの怪演に感嘆するばかりです。
とにかく、この映画はシッカリとあなたの目で、登場人物の顔を見なけりゃ始まりません!
最後の最後、白シャツおじさんの幸せだった頃の笑顔を、見逃さないで下さいね。
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