映画「ニューオーリンズ・トライアル」は、ジョン・キューザック主演、ゲイリー・フレダー監督の2003年の映画です。
この映画「ニューオーリンズ・トライアル」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見所について紹介します。
裏社会で暗躍する陪審コンサルタントとの駆け引きを描く法廷サスペンス映画「ニューオーリンズ・トライアル」をご堪能ください。
「ニューオーリンズ・トライアル」あらすじ
ニューオリンズにある証券会社の一室。
息子の誕生日を祝い、家族と楽しい週末を過ごしたウッズ(デュラン・マクダーモット)は、いつも通り仕事を始めようとしていました。
その時、部屋の外で銃声がしました。途端にあちこちから悲鳴が聞こえてきます。
オフィスに誰かが入り込み、銃を乱射しているようです。
ウッズは銃乱射犯がいる側のブラインドを慌てて閉め、様子を伺っていましたが、突然にドアが破られました。
振り返ると、銃口がウッズを狙っていました。
叫ぶ暇もなく銃声が響き、ウッズは撃たれてしまいました。
2年後、ゲームショップの副店長 ニコラス・イースター(ジョン・キューザック)の元に“陪審員候補に選ばれた”と通知が来ます。
そして、すでに彼を調査する者達がいました。
ニコラスが選ばれたのは、2年前に殺されたウッズの妻 セレステが原告となり、犯行に使われた銃を製造したヴィックスバーグ社に銃器の製造と販売責任を求めて訴えた裁判でした。
原告側の弁護士は人権派のやり手 ウェンドール・ローア(ダスティン・ホフマン)でした。
彼にはヴィックスバーグ社の元幹部が証言するという切り札があり、今回の勝ちを確信していました。
そして、フィラデルフィアから「社会的に意義のある裁判に是非参加したい」とやってきた駆け出しの陪審員コンサルタント ローレンス・グリーン(ジェレミー・ピヴェン)を助手として雇い入れ、裁判に向けて準備を進めていました。
一方、被告側のヴィックスバーグ社及び加入する銃協会は、凄腕陪審コンサルタント ランキン・フィッチ(ジーン・ハックマン)を雇います。
フィッチはその世界では伝説的な人物で、既に筆跡分析や心理学、IT技術などに長けた数多くの調査員を動員して陪審員候補たちの身辺調査を始めていました。
圧倒的な情報量と、それらを分析する事で得られる陪審員たちの弱点を容赦なく突いて、裁判を思い通りに操るのが彼の常とう手段です。
(ニコラスを監視していたのも彼の調査員達でした)
さて、この裁判の結末は?・・・
「ニューオーリンズ・トライアル」ネタバレ
一方、監視されている事を知ってか知らずか、ニコラスは友人達と「どうやったら陪審員に選ばれないで済むか」について「ニューオリンズから引っ越したらどうだ?」「“性転換するために海外に行きます”と言うのは?」「過去に罪を犯したものは対象から外されるから、何か犯罪を起こせよ」などと冗談半分の議論をしていました。
フィッチも、監視映像を分析して自分達に有利な判決を出してくれそうな陪審員候補を選ぶ作業の真っ最中でした。
(注:アメリカの陪審員制度では裁判の前に、被告と原告双方が候補者に質問し、その人物を陪審員として承認するかどうかを決める「陪審員選任手続き」が行われます)
ニコラスの分析も行い「ウケ狙いでお調子者タイプ。被害者である原告に同情される恐れがあるので、こいつは拒否する」と判断しました。
そして選任手続きの当日、注目の裁判とあって法廷の周りにはたくさんのマスコミが詰めかけていまいた。
フィッチは法廷で指示を出せるよう、ダーウッド・ケーブル弁護士(ブルース・デイヴィソン)の体に隠しマイクやイヤホンを取り付けたり、小型カメラを内蔵したカバンや眼鏡を用意したりと準備に余念がありません。
そして原告と被告、陪審員候補、裁判官を務めるハーキン判事(ブルース・マッギル)が法廷に一堂に会し、裁判が始まりました。
陪審員を選任する為、ローア弁護士とゲーブル弁護士が候補者に質問をしてゆきます。
フィッチは小型カメラからの映像で候補者の受け答えの様子やその人物の過去・秘密などを細かく分析し、イヤホンで承認するかどうかを指示していきます。
なかには、過激な銃反対の思想を隠して陪審員に選ばれようとしている男もいました。
フィッチが見抜いて彼を陪審員から外すように指示しました。
その通りにゲーブルがその候補者を拒否すると、興奮した男が「なんで俺を外すんだ。この裁判で、社会から銃を根絶するんだ!」と興奮して取り押さえられる一場面もありました。
法廷での審理に向けた準備が進む中、フィッチは雇い主であるヴィックスバーグ社やその他の銃器メーカーの幹部たちに呼び出されます。
フィッチが追加費用を要求したためでした。
「こんな田舎の裁判に、小さな独立国家を丸ごと買収できそうな額の金が必要かね?」
と言われますが、フィッチは
「“3万”、これは年間に銃により死亡する人数です。障害を負う人は“10万”。しかし、ここで重要なのは“1”と言う数字です。敵が勝ち取りたい“1回の勝訴”。もし、ここで1回負けるようなことがあれば、アメリカ中で同じような裁判が次々と起こります。そうなった時の請求額は何十億ドルにもある筈。それを考えれば私が請求している額なんて何でもないでしょう」と反論し、見事に追加で750万ドルを引き出します。
そして陪審員候補に対する裏工作も着々と進んでいました。
例えば、食品スーパーの店長であるロニー・シェイヴァー(ビル・ナン)に対しては、裏で手をまわして店を大手食品産業へ吸収合併させる話を作り出し、それに伴う幹部候補への取り立てをにおわせ、それをエサに審理の際に系列会社である銃器メーカーに有利な判決を出すように仕向けます。
更に銃所持に肯定的な元海兵隊教官のフランク・ヘレーラ(クリフ・カーティス)を陪審員をまとめる陪審員長にするために送り込もうとします。
「こんな重要な裁判を陪審員なんかに丸投げできない」
フィッチは銃器メ―カーの幹部たちの前で得意げに言い放ちました。
しかし、全く予想外の事も起こりました。
ハーマン・グライムズ(ジェリー・バマン)と言う候補者が呼ばれた時のことです。
フィッチ達の間に動揺が走ります。
そんな候補者はマークしておらず、全く情報がなかったからです。
法廷に姿を現したハーマンは、目が不自由でした。
盲人が陪審員になる事は殆ど無いため、ハーマン判事も驚き「障害のある方は陪審義務を免除されるのですが…」と候補者から外れるよう促しますが「免除される権利を放棄します。障害を理由に本人の意思を聞く事なく陪審員から除外するのは違法だという判例もあったはずです」と反論し、陪審員に選ばれたのでした。
そして、ニコラスが質問される番になった時、ハーキン判事は彼がやたらと時間を気にしている様子である事を気にかけ「そわそわしている様ですが、何か用事でもあるんですか?」と質問してきました。
すると、ニコラスは実は自分が高額賞金のかかったオンラインゲームに参加する計画をしており、早く帰りたい旨を述べました。
ハーキン判事は「たかがゲーム」を理由に市民として与えられた崇高な義務を放棄する事に憤慨し、ニコラスに陪審員となって義務を果たすように申し渡します。
ニコラスを外す予定だったフィッチとケーブル弁護士は慌てますが、空気を読んで彼を承認するしかありませんでした。
選出後、フィッチは陪審員となった者達に的を絞って更なる調査を開始しました。
一方、ニコラスもマーリー(レイチェル・ワイズ)のアパートを訪ねます。
そして、何とか「陪審員9号」になれたと伝えると、二人で抱き合って喜びました。
その夜、ニコラスとマーリーは壁に張られた陪審員の顔写真を眺めながら今後の策を練っていました。
「幾ら引き出せそう?」
「1000から1500万ドルってとこかな」
「もし計画が明るみに出れば刑務所行きだ…」
不安を打ち消すように二人は再び抱き合いました。
いよいよ本審理が始まりました
選ばれた陪審員達が控室に入ると、フィッチの予想通り、元海兵隊教官のヘレーラが率先して陪審員長になろうとしました。
しかし、ニコラスはそれを制し、判例に詳しく判事に歯向かうガッツも持ち合わせているという理由でハーマンを推し、皆もそれに賛同しました。
そして、法廷の審理が入る前、昼食デリバリーの注文票が回されました。
皆が自分の分を記入している隙を狙い、ニコラスは予備の注文票を一枚破り取り、素早く窓の外に投げ捨てました。
そして、その注文票は窓の下で待ち構えていたマーリーのよってすぐに回収されました。
審理は両陣営の弁護士による冒頭陳述から始まりました。
原告側であるローア弁護士は、僅か数分で11人を銃殺し、多くの人にケガを負わせるような強力な銃が簡単に犯人の手に渡った責任は、銃の売り上げを優先し安全管理を怠っている銃器メーカーに責任があると主張しました。
対して被告側のケーブル弁護士は、銃器メーカーは安全第一を心がけており、その管理に不備はない事、そしてこの裁判は憲法修正第2条に記された「武器を持つ権利」を侵害するもので、ローア弁護士と遺族が大金や名声を得る為に起こした不当なものであると主張しました。
その冒頭陳述が行われている最中、ブロンドのかつらで変装したマーリーが廷吏に2通の封筒を「これを両方の弁護士さんに」と手渡して去って行きました。
双方の弁護士が渡された封筒を開けてみると、「評決、売ります」とかかれた陪審員12人の顔写真が入っていました。
勿論どちらの陣営もそれを信用する事はありませんでした。
その頃、マーリーは先ほど回収した注文票に書かれた店に電話し、裁判所の職員と偽って食事の配達を遅らせていました。
陪審員たちは控室から出る事も出来ず、空腹も重なって口論を始めてしまいました。
そこでニコラスが廷吏の目を盗んで外に出て、レストランにいたハーキン判事に何とかしてくれるよう訴えました。
そして、判事の計らいにより、陪審員たちはレストランで食事をすることが許されました。
裁判初日に判事と陪審員が、裁判所の外に出て食事を一緒に取るという前代未聞の事態にローア弁護士もフィッチも驚きを隠せませんでした。
その日の夜、今後の戦略を練る両陣営は、審理中に渡された「評決、売ります」の写真についても話をしていました。
ローア弁護士はローレンスが写真を撮り出した途端に憤慨し「こんなものは問題を起こして審理無効に持ち込みたい相手側の幼稚な戦略だ!」といって写真を捨ててしまいました。
フィッチは警戒を強め、こんな事をしたのがどんな人物か割り出そうと写真の指紋や文体を徹底的に調べるよう調査員達に命じました。
丁度その時、マーリーは両陣営に電話がしていました。
どちらも要求を突っぱねましたが「信じない気持ちはわかる。でも本当の事よ。問題は“愛国心”」と謎めいた言葉を残して電話を切りました。
次の審理の日、ニコラスは自分の友人も海兵隊にいて湾岸戦争で闘ったとヘレーラに話しかけました。
「湾岸では海兵隊に活躍の場はなかった」とヘレーラは鼻で笑いました。
しかし、その友人が湾岸でヘリを撃墜されて死んだ事、そして、今日がその命日である事を知ってその場は重い空気に包まれました。
「命を掛けて国の為に尽くしたのに、今日、彼の事を思い出すのが僕だけだなんて哀れなもんさ・・・」
その言葉に触発され、陪審員たちはその友人の為に何かできる事はないかと思始めます。
そして審理が始まる直前、陪審員達は一斉に胸に手を当て「私達は今ここに合衆国への忠誠を誓います」と声を揃えて宣言したのです。
何も知らないローレンスは「なんだか愛国心の高まりを感じますよ」と呟き、ローマン弁護士とフィッチはマーリーの言葉を思い出して複雑な表情になりました。
そして、フィッチは陪審員が何者かに操られていると聞きつけたヴィックスバーグ社の最高経営責任者 ヘンリー・ジャンクル(スタンリー・アンダーソン)に呼び出され、「君を雇った時点で勝訴を勝ち取ったものと思っていた。信頼を裏切るな」と釘を刺されてしまいます。
頭に血が上ったフィッチは、法廷の映像から陪審員を操ったのがニコラスだと気付き、彼の背後関係を洗うように部下のドイルに指示したのでした。
法廷での証人尋問が始まりました。
法廷にはヴィックスバーグ社系列の銃器店を経営する男 マーフィーが呼ばれていました。
そして、ローア弁護士の尋問によって彼が襲撃犯と銃を違法取引したマイケル・キンケイドという人物に月25丁以上の銃を売っているにも拘らず、その使い道を一切追求せず、ヴィックスバーグ社も調査しようとはせず、ただ売り上げが伸びた事だけを評価していたことが明らかになりました。
その無神経さに呆れたのか、ハーマン判事も審理を早めに切り上げしまいました。
その頃、ニコラスの家にケーブルTVの整備員を装ったドイルが入り込み、アチコチ家探しをしたうえ、PCの記録をコピーしていました。
そこへ、予定より早くニコラスが帰って来てしまいます。
二人は鉢合わせし、慌てたドイルは隙をついて部屋から逃げ出し、車に乗り込みました。
そして、追い付いてきたニコラスに鉄パイプでガラスをたたき割られながらも車を強引に発進させて逃げ去ってしまったのでした。
部屋に戻ったニコラスは壁に隠したカメラを取り出しました。
そこには、顔こそはっきり分からないものの、血相を変えて逃げ出すドイルの姿がはっきりと記録されていました。
マーリーは早速フィッチに電話をし「フィッチ側の陪審員を間引く」と宣言します。
翌日、ニコラスは洗面所でやつれたメイクをし、二日酔いを装って控え室に現れました。
その様子を見兼ねた陪審員の一人 ミス・ヒューリックが「いいものがある。迎え酒よ」と隠し持っていた酒瓶をだしてきました。
机の下で紙コップに入れてくれようとしましたが、ニコラスは手元が狂ったふりをして落とし、わざと酒を持っていた事をバラしました。
すぐに二人はハーキン判事の部屋に呼ばれ、瓶に口紅が付いていたことからヒューリックのものと判断されて、彼女は陪審員を外されました。
苛立ったフィッチは陪審員たちを詳しく身辺調査し、秘密を握って意のままに操ろうとします。
真面目な主婦 ニッキー・コールマンは不倫と中絶の過去を、陽気な若者 エディ・ウィースはHIV陽性である事を知られて脅されます。
芸術家のミリー・ディプリーは不動産業者の夫が罠にはめられ、いう事を聞かないと役人を買収しようとした罪で彼が一生刑務所暮らしになると言われてしまいます。
更に、かつて闇取引で襲撃犯に銃を売ったマイケル・キンケイドが土壇場で証言を翻し「ヴィックスバーグ社は違法取引の事を知らなかったと思う」と被告側に有利な証言をしてしまいます。
また、ドイルが奪ってきたPCデータは殆ど消去された後のものでしたが、バックアップがⅰPodに収めて隠されている事を突き止めます。
ドイルは、優秀だが荒っぽい事が得意なジャノビッチと共に再びニコラスの部屋を探りに向かいます。
その頃、ニコラスは他の陪審員たちをバーで飲んでいました。
そしてニッキー、エディー、ミリーが浮かない顔をしている事に気付きます。
さり気なく近づいて、悩みが無いかなどと話しかけて事情を探り出している最中、トイレに行ったままのニッキーがいつまでも帰ってこない事に気付きます。
急いで探してみると、ニッキーは酒と共に睡眠薬を大量摂取して昏睡状態になっていました。
すぐに病院に運ばれ、命はとりとめたものの、もう少しで取り返しがつかなくなるところでした。
更に家に帰ってみると、部屋が火事になっていました。
家探しを終えたジャノビッチが痕跡を消すために火をつけたのです。
ニコラスはフィッチの追及が危険なものになってきている事を感じ、弱気になっていました。
そして、フィッチがマーリーに会いたいと言っていると知り、彼女にも被害が及ぶことを心配しだします。
しかし、マーリーは「ここが踏ん張りどころよ」とニコラスを励まし、計画を続行します。
次の日、ニコラスは先日ドイルが自分を部屋から逃げ去ってゆく時の映像をハーキン判事に渡しました。
陪審員の安全と裁判の公平性が脅かされていると感じた判事は、陪審員を隔離すると決めます。
そして、原告であるセレステ・ウッド夫人も異様な雰囲気を察知し、裁判の行方を危ぶみだします。
一方、盗んだiPodを解析したフィンチは、ニコラスが様々な都市の選挙人名簿を持っている事を突き止めます。
陪審員は選挙人名簿を基に選ばれるため、フィッチはニコラスが陪審員選出に前々から関心を持っていたと推測します。
その時、マーリーからフィッチに会いたいと連絡がありました。
追跡を逃れる為、路面電車の中に誘導されたフィッチは初めて直接マーリーと会います。
フィッチは要求額とは程遠い50万ドルを提示し、交渉は仕切り直しになります。
一方、集められた陪審員たちはモーテルに隔離されます。
すっと同じ場所にいる事を利用して、ニコラスは脅されている様子の陪審員を説得し、どのような脅迫を受けているかを探り出してゆきました。
ニコラスの事が気に入らないヘレーラに因縁を付けられますが、受け流します。
その頃、マーリーはローア弁護士と会っていました。
ローア弁護士は交渉には応じず、逆に「こんな違法で危険な行為はすぐに止めるべきだ」と諭してきました。
マーリーはその言葉には耳を貸さず「あなたが裁判の切り札にしているヴィックスバーグ社の元幹部は、本当に証言をしてくれるかしら?」と警告し、その場を去りました。
その頃、フィッチはニコラスがシンシナティでも陪審員候補となっていた事を突き止め、彼の過去を探り出そうと調査に向かわせました
そして、ヴィックスバーグ社の元幹部が証言する日がやって来ました。
しかし、時間になってもその人物は姿を現しませんでした。
ロ―ア弁護士は慌てて証言尋問の延期を求めましたが、これ以上トラブルが続く事を嫌ったハーキン判事はこれを却下します。
その日の裁判はそこで終わり、フィッチは得意げな顔で法廷を出てゆきました。
あまりに強引なやり方に我慢できなくなったローア弁護士は「陪審が証言に耳を傾け、公平な判断をすることを妨害し、厳正な裁判を侮辱した」とトイレにいたフィッチに詰め寄りましたが「あんな無教養で連中に公平な判断なんかできるわけがない」と陪審員制度のバカバカしさとローア弁護士の純粋さをあざ笑っていました。
ローア弁護士は
「アンタはきっと負ける。今日か明日、いくか負ける。その時、君の周りにいるのはこれまで蔑ろにしてきた者達の亡霊だけだ」と言いますが、フィッチは平気な顔をしていました。
事務所に戻ったローア弁護士は、幹部たちと面会し「勝つ自信がない。事務所の非常用準備金を1000万ドル使わせてほしい」と申し出ました。
ヴィックスバーグ社の最高経営責任者であるヘンリー・ジャンクルが証人尋問される日になりました。
最初はすました顔で
「違法販売の事など知らない」と証言していたヘンリーでしたが、ローア弁護士にしつこく質問されて「誰がどんな事件を起こそうと自分には関係ない!」と怒鳴ってしまいます。
その様子を見ていたフィッチは、再び裁判の行方が不透明になってしまったと感じました。
そして、マーリーの要求を呑む事にします。
ただし、その前にニコラスに会いたいと条件を付けてきました。
そこで、夜中にニコラスは監視の目を掻い潜って待ち合わせ場所に向かいました。
そして1000万ドルで陪審員の評決を売ると約束します。
同じ頃、マーリーが自分の部屋に帰ると暗がりに座って待ち構えている者―ジャノビッチがいました。
ニコラスがちゃんと約束を守るよう、保険として身柄を押さえに来たのです。
しかし、マーリーの反撃によりジャノビッチは病院送りにされてしまいます。
マーリーからの電話で要求額は1500万ドルに吊り上げると言われ、当てが外れたフィッチは苦虫を嚙み潰したような表情になりました。
いよいよ評決の日になりました。
陪審員が審議に入る前、双方の最終弁論が行われました。
ローア弁護士は
「銃社会である限り、今後もこのような悲劇は起こるでしょう。今まで銃器メーカーは“関係ない”と言っていましたが、今回の裁判次第で責任を問えるようになるのです」と主張しました。
対してケーブル弁護士は
「働き盛りの夫を奪われた夫人には心からお悔やみを述べます。しかし、法律ができる事はここまでです。悪いのは犯人であり、銃器メーカーにまで責任を問うのはやりすぎです」と主張しました。
そして陪審員は控室に戻り、有罪か無罪かを決める話し合いを始めました。
評決を待つローア弁護士の元にマーリーから電話が掛かってきました。
1000万ドルで評決を買うかどうか決めて欲しいと言われ「一番大事なのは、夜ぐっすり眠れることだ・・・だから君には一銭も払わない」とキッパリ言い切りました。
その頃、陪審員達の間でも
「銃の闇取引を黙認した銃器メーカーにも銃乱射事件の責任がある」
「いや、悪いのは犯人だし、そんな事を言っていたら収拾がつかなくなってしまう」と意見が対立し、話し合いは難航していました。
ローア弁護士に断られたマーリーは、すぐさまフィッチに電話して票を買うかどうか迫りました。
ローア弁護士との交渉が決裂したと知っていたフィッチは「値下げしろ」と言いますが聞き入れられず、1500万ドルで票を買う事を承諾し、ケイマン諸島の銀行口座に送金しました。
陪審員達の議論が煮詰まった時、ニコラスが口を開きました。
「今、議論されるべきは“法律をまもるかどうか”だと思うけれど、銃が関わっているから注目されて・・・」
その時、ヘレーラが割って入り。
「お前の考えは分かってる。未亡人と息子に同情して、最初からそっちに票を入れる気でいたんだろう?でも、銃器メーカーは性能の良い銃を作っただけだ」と被告を擁護しました。
そして、しきりに早く投票して評決を出そうと急かしました。
ニコラスが理由を尋ねると
「ひどい目にあった人間なんて幾らでもいる。戦争で手足を失った人間を何人も知っているけれど、金を貰っている奴なんていない」
「同情はするが、賠償金を貰おうなんて虫が良すぎる」と胸の内を明かし出し、最後には「誰が殺されようと知った事じゃない。あんな女に一銭もくれてやるもんか!」と興奮して怒鳴ってしまいます。
その人情味のない発言に、他の陪審員たちは誰もがヘレーラに軽蔑の眼差し向け、彼に賛同する者は一人もいませんでした。
「彼の言う通り、僕は最初からどちらに票を入れるか決めいていた。陪審員としては最低だ。ここは私利私欲を捨て、セレステ・ウッド夫人の為に証言や証拠をじっくり検証しよう。僕達にはその責任がある」
ニコラスに促され、陪審員たちは冷静になり、再び話し合いが始まりました。
そして評決が出されました。
「ニューオーリンズ・トライアル」最後ラストの結末は?
その頃、フィッチの命令でニコラスの素性を洗っていたドイルは、彼の本名がジェフ・カー、マーリーの本名がガブリエル・ブラント(愛称ギャビー)、二人は昔からの恋人同士でインディアナ州のガードナーと言う都市の出身であると突き止めます。
早速現地に向かったドイルは、近くの家を買うふりをしてマーリー(ギャビー)の母親に話しかけました。
そして、かつてギャビーたちが通う高校で銃乱射事件があり、マーリーの姉 マーガレットがジェフの目の前で犠牲になっていた事、ジェフはマーガレットを助けられなかったと心底悔やんでいた事を調べ上げました。
そして、ガードナーで起きた銃撃事件の責任を銃器メーカーに問う裁判も行われていました。
街が原告となって行われた裁判でしたが、敗訴して財政破綻していたのです。
その裁判を裏で操っていたのがフィッチでした。
これは復讐だと感づいたドイルは、マーリーの母親と別れるや否やフィンチに電話し「これは罠だ。送金してはいけない!」と叫びましたが、時すでに遅く、送金は完了していました。
更にマーリーの通報により、フィッチ達が情報収集と分析を行っていたアジトに警察が踏み込んできました。
スタッフ達はPCや写真などを手当たり次第に抱えて逃げ出すのが精一杯でした。
評決を終え、陪審員が法廷に戻ってきました。
そして決定を書いた紙がハーキン判事に渡され、厳粛な空気の中で読み上げられました。
「陪審はセレステ・ウッドの主張を認め、特別損害賠償金100万ドル、一般損害賠償金1億1000万ドルをヴィックスバーグ社に命ずる!」
法廷内に歓喜の声が上がり、裁判所の外にいたTVニュースのリポーター達はこの異例の判決をこぞって放送していました。
そんな中、ニコラスは無言ながら決意を秘め溜めた視線をフィッチに向けました。
フィッチはそんなニコラスの視線を感じながらも、動揺して座っている事が出来ず、裁判所を飛び出してゆきました。
フィッチがバーで茫然としながら酒を飲んでいると、横にニコラスとマーリーが立っていました。
フィッチは「銃器メーカーは必ず上訴するぞ」と強がりましたが、二人は気にしません。
「だとしても、その時はアンタ抜きだ。今後、法廷に顔を見せたらコレを国税庁や司法審査会に送る」
そう言って差し出したのは、1500万ドルを電子送金した時の書類でした。
陪審員を金で操ろうとした証拠で、当局に知られれば刑務所行きです。
「こんな事、一度始めたら勝ち続けるしかない。もし(裁判で)負けたら、全てがフイになるんだぞ!」
二人が悠々と出て行った後、フィッチの怒号だけが空しくバー内に響いていました。
THE END
「ニューオーリンズ・トライアル」見どころ
アメリカの陪審員制度と銃の問題を題材にした法廷サスペンスです。
評決はどうなるのか?ニコラスとマーリーの正体は?と見どころも沢山ありました。
流石、法廷サスペンスの巨匠 ジョン・グリシャム原作だけあって見ごたえのあるストーリーでした。
銃乱射事件により夫を失ったウッド夫人が訴えたのが、凶器の銃を作った銃器メーカーである所がアメリカらしいところです。
「銃が蔓延していて危険」
「身を守るために銃が必要」
二つの意見があるのが銃社会の難しい所だと思います。
人を殺傷する能力のあるものを、金のため違法取引される銃も知らない顔でばらまくのかと言う痛烈な批判を感じました。
また、フィッチのような形振り構わないやり方ではなくても、評決を有利にするために色々とアドバイスする専門家も実際にいます。
陪審員、弁護士、評決コンサルタント、原告、被告、全員が生身の人間で、「公平に」とは言いながら印象や思想、損得勘定などで他人の人生や社会に影響を及ぼすような決定をするし、それを研究すれば思い通りに操作も可能というシビアな現実を描いているように思いました。
人の心を操るやり方もニコラスのようにさり気ないやり方もあれば、フィッチの様に徹底的に弱点を突くやり方もあったのが面白かったです。
特にこの作品では、マーリーやニコラスの様に何が真の目的なのかはっきりしない人物も登場します。
最後に彼らが選ぶのは金なのか、社会正義なのか、予測がつかずにドキドキさせられます。
最後の最後、どうやって評決を出したかフィッチに聞かれた時「僕はただ貴方から票を守っただけだ。人々の心に訴え、全員が心のままに投票した結果だ」と言ったニコラスの言葉が印象的でした。
最後は皆、自分の心に正直になるんだ、と言う人の強さを信じる言葉の様にも取れます。
しかし、全員が気付かない内にニコラスに操られたとも言える結果です。
人が人を裁く事の難しさがふんだんに詰め込まれ、考えさせられる作品でもありました。
そして、たとえフィクションであっても、こんな風に銃社会に一石を投じる結末は希望があり、見終わった後に爽快感があって良かったです。
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