「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」ネタバレ!あらすじや最後ラストの結末と見どころ!

映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」ネタバレ あらすじ
ミステリー/サスペンス

映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」は、チュティモン・ジョンジャルーンスックジン主演、ナタウット・プーンピリヤ監督の2017年の映画です。

そんな、映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見どころについて紹介します。

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のスリリングな駆け引きをお楽しみください。

 

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」あらすじ

国際的な大学統一試験(STIC)で大規模な不正行為があったとニュースが流れます。

取調室のようなところにいるリン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)。

私の事を調べえ貰えばわかります。成績は常にトップでした。私ならSTICの合格なんて楽勝です」

静かに口を開いた彼女から思いもよらない話が語られたのでした・・・

並外れた頭脳を持ちながら、お金の為にカンニングに手を染める高校生のスリリングな物語です。

 

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」ネタバレ

これまで普通の高校に通っていたリンは、その高校の教師でもある父親(タネート・ワラークンヌクロ)の勧めで進学校であるクルンテープ・タウイーパンヤ―高校に入学します。

元々成績が優秀で数学コンクールとクロスワードの大会で優勝する程の秀才だったリンは、その学力の高さを評価されて学費無料の特待生になります。

この学校にいれば、海外留学のチャンスもあります。

リンの父親は、娘の学力が最大限に生かされる環境を与えてやりたかったのです。

リンは、これまでの高校に満足しており、出費もかさむので渋ってはいましたが、父の考えを知り転校を決めます。

  
リンは転校してすぐ、学生証の写真撮影の時に「もっと笑顔で写してもらわないと」と話しかけてきたグレース(イッサヤー・ホースワン)と友達になります。

グレースは演劇部に所属し女優になる事を夢見ていましたが、勉強はあまり得意ではありませんでした。

そんな時、校則が変わり、定期テストで一定以上の点を取らないと部活動に参加できなくなりました。

勉強に自信のないグレースはリンに家庭教師を頼みます。

リンはテストの日まで一生懸命にグレースに勉強を教えました。

そしてテスト当日、ヤマが当たってリンが教えた個所がテストに出ました。

ところが、グレースは教えた筈の解き方が全く頭に入っておらず「解けない…」と焦った表情をしていました。

大好きな演劇が出来ない事を可哀そうに思ったリンは、とっさに答えを消しゴムに書き込み、内履きの中に隠すと、後ろの席にいるグレースの方にそれを蹴りました。

グレースは代わりに自分の内履きを蹴ってリンに届けようとしましたが、場違いなところに飛んで行ってしまいます。

緊張が走る中、リンは立ち上がって何気ない素振りで歩み寄ると、監督官の目を盗んで内履きを履き、解答用紙を提出したのでした。

 
テストの結果は上々で、グレースは演劇を続ける事が出来ました。

後日、そのお礼も兼ねてリンはグレースの彼氏 パット(ティーラドン・スパパンピンヨー)の家に招かれます。

パットの家は大金持ちで、一般家庭で育ったリンにとってはパットの家で見るもの全てが驚きでした。

しかし、パットがリンを呼んだのには理由がありました。

パット・グレース・リンがプールで泳いでいた時「自分にもカンニングをさせて欲しい。いい点を取れば親に車を買ってもらえる」とパットが持ち掛けてきました。

更に、答えを教えてほしいのはパット達の他に5人いて、一科目に付き一人3千バーツ払うと言うのです。

リンはためらいましたが
「テストは全部で13科目。つまりテスト1回で君は(グレースは無料として)23万4千バーツ稼ぐことになる」※タイの平均月収は約3万2千バーツ

「親だって学校に寄付金としてワイロを払っているんだ。それと同じことだよ」と説得されます。

自分は奨学金を貰っていて、寄付金なんて関係ないと思っていたリンでしたが、父親の机の引き出しから学校に多額の寄付をした領収証を見つけ愕然とします。

そして、ビジネスと割り切ってカンニングで金を稼ぐ決意をします。

 
しかし、何人もの生徒に同時に答えを伝えるにはどうすればいいかリンは悩んでしました。

そして以前習っていたピアノの演奏に目を付けます。

ピアノ演奏の要領で指を動かし、動き方の違いで選択問題のABCDを伝えるやり方を考案したのです。

加えて「3問答えを教えたら4問目はトバす」など、怪しまれように対策も盛り込みました。

「ピアノコード」と名付けられたこのやり方は、指の動きを見た者がそれを真似して遠くの仲間にまで伝えられるという利点もあり、参加者はどんどん増えてゆきました。

 
一方、クルンテープ・タウイーパンヤ―高校にはもう一人の秀才がいました。

バンク(チャーノン・サンティナトーンクン)です。

数字が得意なリンに対し、パットは暗記が得意です。

二人で組んでクイズ番組で優勝し、賞金を獲得した事もありました。

バンクの家はクリーニング屋ですが、母親が一人で切り盛りいており生活はカツカツです。

おまけに、洗濯機が壊れており、大量の洗濯物を手で洗っているのでバンクの母親はすっかり猫背になってしまいました。

バンクは海外留学をして良い仕事に就き、母親に楽をさせてやりたいと常々思っていました。

そんな二人を校長は部屋に呼んで褒め称えた後に「あなた達にとてもいい知らせがあるの。シンガポール大使館が奨学金で留学する優秀な学生を募集しているの。返済もなし。でも、一つ問題があって推薦枠は一人分だけなの」

二人とも家が裕福ではなく、海外留学をする為には奨学金が絶対に必要です。

その瞬間から二人はライバルになりました。

 

やがて、学年統一テストの日が近づいてきました。

ある日、バンジョンという生徒がバンクに「もうすぐテストなのに全然勉強できてない。テストを映させてくれないか?ピアノコードも試したけれど、俺には難しくて無理だった」と相談してきました。

しかし、真面目なバンクはその申し出を断りました。

そして、同じ学年の生徒が体育館に集められて学年統一テストが始まりました。

勿論リンは順調に問題を解いてゆきました。

しかし、同じように問題を解いていたバンクが問題用紙に「テスト1」と書いてあることに気付きます。

確認するとテスト問題は「1」「2」の2種類があり、ランダムに配られていたのです。

それが分かった瞬間、会場に戦慄が走りました。

 
そんな中、いち早く全問を解答し終えたバンクは、前の席に座っているバンジョンの様子がおかしい事に気付きます。

バンジョンは隣に座っているリンの答えを覗き込もうとしていたのです。

バンクは解答用紙を提出する途中、横でわざと用紙を落として注意を引き、リンに「バンジョンがカンニングしている」とメモを見せて報せ、更に試験官にも「バンジョンがカンニングしています」と報告しました。

一方、リンは皆が解いている問題を確認しました。

リン自身が解いているのは「1」ですが、バンジョンをはじめカンニングを依頼してきた生徒の中には「2」の問題が配られた生徒もいました。

取り敢えず、リンは解けた「1」の答えを解き、それを皆に伝えました。

次にパンジョンと問題を取り換え「2」を大急ぎで解き始めました。

そして、残り5分で全て解き終わるや否や答えをピアノコードで打ち始め、時間ギリギリになりながらも残っている生徒達に解答を伝える事が出来ました。

 
テストが終わってホッとする中、リンとバンジョンは校長室に呼び出されます。

行ってみると、そこにはバンクも座っていました。

「バンクから『テストで不正があった』と聞きました。本当なの?」

しかし、試験官からリンは問題1、パンジョンは問題2を解いていてカンニングは不可能だと報告がありました。

疑惑が晴れてリンとパンジョンが校長室を出てゆこうとした時、校長がリンのメモ用紙に問題2を解いた痕跡を見つけます。

「どうして問題1を解いていた筈のあなたのメモに2の解答が書かれているの?」

そう問い詰められて、リンは何も言えずに立ち尽くすしかありませんでした。

 
数時間後、校長室にリンの父親が呼び出されていました。

「リン、あなたには失望しました。今すぐ退学にもできるけれど、今回だけは奨学金取り消しのみとします」

リンはただ黙っていました。

しかし、リンがお金の為にカンニングに協力したと知った校長の「学校はお金儲け儲けの場ではないの」と言う言葉に思わず吹き出してしまいます。

それに気分を害した校長がリンの父親に「お父さん、あなたは子供に礼儀を教えなかったんですか?」と言うのを聞いて、リンが反論しました。

「学校で儲けているのは私だけじゃありません。父が学校に払ったワイロ、20万バーツだって同じ事です」

校長の顔色が見る間に変わりました。

「あれはワイロじゃない。学校の設備維持費よ」

「それは授業料の中から賄うべきでは・・・」

「やめなさい!」

堪らずにリンの父親が止めました。

「卒業させてくれれば充分。授業料は払います」

「いいでしょう。ただし条件が一つ。留学の推薦は取り消します。才能ある、留学するにふさわしい生徒は他にもいますから」

リンは仕方なくその条件を受け入れ、校長室の隅で居心地が悪そうな表情をしていたバンクに「おめでとう。留学、頑張って」と言って校長室を出てゆきました。

 
家に帰った父親はさっそくリンの通帳を調べ、カンニングで金を稼ぐのは今回が初めてではなかった事を察知します。

怒りのあまり、リンが買ってくれたシャツをその場で脱ぎ捨て「金は友達に返しておくんだぞ!」と部屋を出て行ってしまいました。

  
そしてリン達は進級し、3年生になりました。

真面目に学校生活を送っていたリンに、グレースが再びカンニングの話を持ってきます。

パットの両親は、彼を父親と同じボストンの大学に留学させようと考えていました。

彼らは、パットの成績が上がったのはグレースが勉強を教えてくれたからだと思っており、費用は出すので2人で留学してほしいとグレースに申し出たのです。

アメリカの大学に入る為には、世界統一入学試験(STIC)で合格点を取る必要がありました。

グレースもパットも自分だけの実力では合格には程遠い状態で、再びリンを頼ってきたのです。

「もう危ない真似はイヤ」
リンはそう言って拒否しましたが

「パットが60万バーツ払うと言ってる」と聞いて心が動きます。

しかし、どうやってカンニングするかが最大の問題でした。

 
リンがもう断ってしまおうと思った時、たまたま隣で電話をかけているビジネスマンの会話から時差を利用する方法を思い付きます。

試験問題は世界共通で、開始時刻もすべて同じ。
その為、開始するタイミングに時差によるズレがあるのです。

リンは世界で一番早く開始されるオーストラリアで試験を受け、休憩時間にトイレのタンクに隠した携帯でその答えをタイにいるパットに送ろうと考えたのです。

タイとオーストラリアの時差は4時間。

その間にパットは答えをバーコードに変換して鉛筆に貼り付け、全員に配る手筈を整えました。

しかし、ここでパットが疑問を口にしました。

「どうやって答えを会場から持ち出すんだ?」

「(答えを)記憶するわ。でも問題は100以上あるから一人ではできない。仲間がほしい」

 
一方、海外留学するための試験が翌日に迫っていたバンクは、家の手伝いで或る家にクリーニングするものを取りに行った際、いきなり「車と接触して、そのまま逃げただろう」と因縁を付けられ、殴り倒されて意識を失ってしまいます。

翌朝、気が付くとバンクはゴミ捨て場に寝転がっていました。

バンクは体中にケガを負いながら試験会場に行こうとしますが、時すでに遅く、間に合わずに失格となってしまいました。

数日後、ようやく退院したパンクのところにリンが訪ねてきました。

彼女はカンニングビジネスの話して「半分の50問を覚えて欲しい」と持ちかけますが、生真面目な彼は話にのりません。

「私にとって、カンニングは不正じゃない。私達はお金を、皆は点数を手に入れて誰も損をしないから」

「パットやグレースと違って、私達には生まれつきハンデがある。努力しないと這い上がれない。惨めじゃない? こっちが騙さなきゃ世界に騙されてしまう」

リンがそう言って説得すると、バンクはいつも苦労している母親の背中を思い出し、ようやくカンニングに協力する事を承諾しました。

 
バンクがメンバーに加わり、当日の練習が始まりました。

内容は徹底しており、答えを50問分暗記する練習だけでなく、バレそうになって事情を聞かれた時の言い逃れの練習も行いました。

しかし、その練習中にパットが
「バンク?友達でも何でもありません。変わった奴ですよ。この間はボコられてゴミの山に捨てられていたらしいですよ」と口を滑らせてしまいます。

捨てられていた場所は誰も知らない事はずでした。

それに気が付いたバンクは怒り狂ってパットに殴りかかり「お前が僕の未来を台無しにしたのか!?誰が協力なんかするか!」と部屋を出て行ってしまいました。

 
バンクなしでは成功しないと、リンは計画を中止しようとします。

グレースが泣いて止めますが聞き入れようとはしませんでした。

ところが、オーストラリアに向かう飛行機離陸の3時間前にバンクは戻ってきました。

「このままじゃ殴られ損だ。絶対に金を手に入れてやる」

リンとバンクは共に飛行機に乗り込み、オーストラリアに向かいました。

 

STICの試験当日、TVはSTICの問題漏洩が発覚したニュースを流していました。

更にそのニュースは試験を中止する国が出てきた事や、今年は警戒が例年以上に厳しくなる事なども伝えていました。

リンとバンクの顔に緊張が浮かびますが、今更後には引けません。

 
そして遂に試験が始まりました。

第一セクション、計画通り順調に問題を解いた二人は、休憩に入るや否やトイレに駆け込んで隠しておいた携帯で答えを送り始めました。

ところが、突然バンクが答えを打ち込むのを途中でやめてしまいます。

そして「報酬とは別にもう100万払え。5分以内に入金しないと答えは送らない」と言ってきたのです。

パットは怒り狂いながらも「手持ちはこれだけしかない」と48万バーツを払い、バンクもそれに納得して残りを送信しました。

 
第2セクションと第3セクション、今度も二人は問題を解き、休憩時間に答えを送信しようとしました。

しかし、リンがトイレに行ってみると既に列が出来ており、個室に入るまでに時間がかかってしまいました。

バンクの方も、個室に入ったものの、前回トイレに籠っていた時間が長すぎたと報告があり、試験官が「すぐに出てきなさい!」と警告にやって来てしまいました。

慌てて答えを送信し終えたものの、ドアを乱暴にたたかれた事に驚き、バンクは膝の上に置いてあったタンクの蓋を落として割ってしまいます。

あせって携帯をトイレに流そうとしますが、排水溝が小さすぎて無理でした。

 
一方、やっと個室に入れたリンもすぐに試験官からすぐに出るように言われ、焦りながらも外にでました。

外の廊下ではバンクが試験官に「何をしていたか正直に白状するんだ!」と問い詰められていました。

その横をそ知らぬふりをして通り過ぎたリンは、給水機で水を飲むふりをしながら、隙を見て靴に隠してあった携帯を給水機の隙間に隠しました。

 
第4セクションは数学の選択式の問題と小論文です。

数学の問題を解き、答えを記憶すると、小論文のテーマに移ります。

計画では、ここでわざと途中退場して数学の答えと小論文の出典元を送らなくてはなりません。

ところがバンクが捕まった事に動揺し、リンは解答が頭の中に入らなくなっていました。

更に動揺する中、リンは自分が無意識のうちにピアノを弾くように指を動かしていた事に気付きます。

そして「ピアノコード」で暗記する事を思い付きます。

打開策が見付かった事でリンは落ち着きを取り戻し、そしてバンクの分まで解答を暗記する事が出来ました。

小論文の出典元まで暗記したリンは口に鉛筆を深くつっこみ、思い切り嘔吐し気分が悪いと退出を申し出ました。

試験監督の女性が「途中退席は失格になってしまいますよ!」と叫んでいましたが、リンは構う事なく試験会場を後にしました。

 
その頃、リン達からの答えを待っていたグレースとパットの前に、突然リンの父親が現れます。

リンはクイズ番組に再び出演すると言って家を出たのですが、不審に思った父親が部屋に残された書類からグレース達のいる工場を突き止めてやって来てしまったのです。

「リンに連絡が取れない。リンはどこに行っているんだ! 本当にテレビの番組なのか!?本当のことを言ってくれ!」

咄嗟にグレースは恋人と旅行に行っているのだと嘘をつきます。

父親は驚いたようでしたが、そのまま帰っていきました。

 
リンは教室の外に出ると、ウオータークーラーに隠した携帯を素早く取り出し、地下鉄の構内を歩きながら答えを送信しだしました。

パットやグレースは「まだ鉛筆の用意ができないのか?」といきり立つ受験生たちを宥めながら、リンからの答えを待っていました。

その時、リンは試験官が追いかけてきている事に気付きます。

それでも彼女は歩き続け、試験官が追い付く寸前で答えを送信し終えました。

そして、近くにあった自販機でパンを買って口に押し込み、試験官が声を掛けた瞬間に吐き戻して体調が悪い演技をしました。


 
「大丈夫か?」

「いいえ、気持ち悪いわ・・・」

「そうか、大変だな。しかし、試験会場に戻ってもらうからな」

リンは試験会場に連れ戻されました。

タイの大使館職員が「同じタイの学生が会場に携帯を持ち込んでいたの。今、尋問を受けている。あなたも調べられると思うけれど、何もなければ帰れるわ」

「・・・その、携帯を持ち込んだ学生の処分はどうなりますか?」

「おそらく点数は無効でしょう。今後のSTIC受験資格もはく奪されるかもしれない」

 
やがて呼ばれたリンが、試験官に連れられて歩いていると尋問されているバンクの部屋の横を通りました。

リンは何も言えずに立ち止まり、バンクも無言で「大丈夫、向こうへ行け」と目で合図するだけでした。

 
尋問が終わり、リンの得点は無効になったものの帰る事が出来ました。

空港ではパットとグレースが笑顔で待っていました。

パットがパーティに誘ってくれましたが、とてもそんな気にはなれませんでした。

「STIC、受け直すんでしょう?早くしないと申請に間に合わないよ。3人で留学しようよ」

グレースは言いましたが「気が変ったわ。STICは受けないし、留学もしない。知っているとは思うけれど、大学入試はマークシートじゃない。一緒に行ったとしても答えを写すのは不可能よ」と言って、リンは空港を出ました。

 
空港の前には父親が迎えに来てくれていました。

「彼氏は何処だ?何で話してくれなかった?」

恋人との旅行から帰ってきたと思っていた父親は笑顔で迎えてくれました。

その顔を見て、リンは堰を切ったように泣き出しました。

 
暫くして、リンは大学の教育学部入学の面接を受けていました。

「父の様に生徒に知識を伝える仕事がしたいです。確かに、過去には悪い行いもしました。しかし、それは自分や他人への教訓としたいと思っています。」

しかし、面接官に「なんだかもったいないですね。あなたの様に成績が優秀なら、奨学金を申請すれば海外で学ぶ事も出来るのに」と言われ「きっと、私よりふさわしい人がいると思います」としか答える事が出来ませんでした。

 

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」最後ラストの結末

そんな時、バンクから呼び出されます。

バンクは大使館からSTICで不正を行った事を学校に連絡され、退学させられていました。

バンクの家にやって来たリンは、彼の店が改装中である事に気付きます。

すっかりきれいになり、新しい洗濯機が並ぶ店を背にしながら、バンクが用件を切り出してきました。

「提案があるんだ。今度はGATとPATの受験者を集めてまたやらないか?受験者数はSTICより多いし、絶対にバレない作戦もある。でも、君なしでは実行不可能なんだ」
(注)GAT:General Aptitude Test. 読み、書きと問題解決、 英語の能力を測る試験
PAT:Professional and academic aptitude test 大学での教育への基礎知識を測る試験 
共に、タイ国内での大学入学試験の種類

 
人が変わったような口ぶりのバンクに驚くリンは「いくら欲しいの? まだ足りないなら私の分をあげる」とリンは言いますが、パンクは首を振りました。

「肝心なのはこれからどれだけ稼げるかっていう事だ。ざっと計算しただけで1000万になる。バレた所で刑務所に行くわけじゃない。これでも挑戦しないっていうのか?数万の給料をもらう為に大学に行くなんてバカバカしいだろう。僕達なら、今日からでも何百万も稼げるっていうのに」

「大金なんて価値がないのよ。今の私には」

リンがそう言うと
「協力しないなら、君がSTIC騒動の首謀者だと暴露する。今の僕と同じように留学できなくなる」とパンクは脅してきました。

「勝つときは一緒。負けるときも一緒。落ちるときは君も道連れにしてやる。君だけじゃない。パットやグレース、報酬を払った全員が道連れになる。留学資格も取り消しだ。そんな事になれば、君のお父さんは悲しむんじゃないか?――全て君は次第だ」

その言葉を聞き、リンはバンクの目を正面から見据えながら言いました。

「そうね、全ては私次第」

 
数日後、リンは父親と共にある場所にいました。

「大丈夫、一緒に乗り越えよう」

父親に励まされ、リンは部屋に入ってゆきました。

正面に並ぶ数人の内、一人が話し始めました。

「これからSTICの不正行為に関する貴方の証言を記録します・・・」

THE END

 

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」見どころ

並外れた頭脳を持ちながら、お金の為にカンニングに手を染める高校生を描いたタイの作品です。

リンは最初、グレースへの同情心からカンニングをします。

一回きりの積りでした。

しかし、それがグレースの彼氏であるパットに伝わり、お金が絡んできた辺りから事情が変わってきます。

リンの家は裕福とはいえず、お金がかかる私立の学校に通っている事にコンプレックスを感じていました。

加えて、自分の親が無理をして学校にワイロ(寄付金)を払っていた事にショックを受けます。

カンニングは不正行為ですが、家が裕福な生徒達からお金を取って答えを教えようとしたのは、リンにとって「格差を埋め、平等にする行為」と計算した上の結論だったとしても無理ないな、と思わせる展開でした。

 
そして、何といっても一番の見どころは、考え抜かれたカンニングの手口と、実行している時のリンの必死な表情や緊張感です。

校内の試験からSTICへと規模が拡大し、監視が厳しくなっている中、それを掻い潜ってカンニングを成功させようと真剣な表情のリンを見ていると、悪い事の筈なのに応援したくなってしまいます。

これまでのカンニングを題材とした作品は、融通の利かない試験官を出し抜いて笑いを誘うコメディ調の話で、最後には試験に合格してメデタシメデタシとなる結末が多かったように思います。

しかし、本作品では学校への寄付金、何でもお金で解決しようとする生徒達、急に成績が上がっておかしいと気付いている筈なのに追及しない大人達、バンクの様に結局は金儲けが全てだと悟ってしまう優秀な人材など非情な部分もちゃんと描かれています。(カンニングの事がばれても、パットやグレース達が処罰された様子はありませんでした)

 
リンが面接の時に何故、海外留学を希望しなかったか聞かれ

「私よりもふさわしい人がいますから・・・」と答えるシーンは「自分のような不正を行った人間はふさわしくない」と言う意味なのか、あるいは「自分の様にお金がない家に生まれたものはふさわしくない」と言う意味なのか、考えさせられます。

 
リンも、必死にカンニングをして大金を手に入れますが、結局はバレて輝かしい未来や大切な友人を失ってしまいます。

しかし、どんな状況になってもテストの点数が頭から離れないパットやグレース、カンニングを告発しておいて「君の未来を台無しにする気はなかった」と後悔した上に、最後には自ら金目的のカンニングを計画するまでになってしまったバンクと違い、自分の価値観を一旦捨てて不正を証言する潔さを見せます。

最後の最後で「やはり不正は許されるべきではない」というメッセージが感じられた、気持ちの良い作品でした。

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