映画「ミッドナイト・イン・パリ」はオーウェン・ウィルソン主演、ウディ・アレン監督の2011年の映画です。
この映画「ミッドナイト・イン・パリ」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見どころについて紹介します。
悩み多き脚本家が、夜な夜な1920年代のパリへとタイムスリップするファンタジーコメディ「ミッドナイト・イン・パリ」をご堪能ください。
「ミッドナイト・イン・パリ」あらすじ
アメリカ生まれの、ギル・ペンダー(オーウェン・ウィルソン)。
全作品を読破するほど好きな小説家は、アメリカを代表するアーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961年)。
2010年を生きるギルが想いを馳せるのは、世界中の芸術家たちが集い、ヘミングウェイも生きた1920年代のパリです。
ヘミングウェイの友人、小説家 F・スコット・フィッツジェラルド(1896-1940年)。
“フラッパー(新時代を自由奔放に生きる女性)”と呼ばれたスコットの妻、小説家 ゼルダ(1900-1948年)。
当時の若い作家たちに信頼され多大な影響を与えた、アメリカ出身の女流作家 ガートルード・スタイン(1874-1946年)。
多くの芸術家がやって来る彼女のアパルトマン“芸術サロン”は、妄想を膨らませるギルにとって憧れの空間です。
ギルは今、小説を執筆中で、その主人公は“ノスタルジー・ショップで働く男”。
現代ではなく過去、1920年代こそ黄金時代と考えるギルらしい小説です。
だけど、ハリウッド映画の脚本家というのがギルの本職。
安定の地位と収入、ビバリーヒルズには豪邸といった成功者で、魅力的な恋人との結婚も控えていました。
「……美しい雨のパリ、1920年代の芸術家たちが雨のパリで…ねぇ、想像してみて!」
大好きなパリは何度訪れても胸が高鳴り、嬉しくて堪らないギル。
「なんで、いちいち雨なの?濡れるだけじゃない」と、彼に一切共感できないのは恋人・イネズ(レイチェル・マクアダムス)。
全然気が合ってないけど確かに愛し合ってる二人は、パリで新事業を展開させるイネズの父・ジョンに便乗して観光中です。
ギルの夢はパリの小さな屋根裏部屋に住んで、小説を書いて暮らしたい。
イネズは、結婚したら憧れのロサンゼルス・マリブに住んで、これまで通り優雅な生活。
セーヌ川のほとり、バゲットを抱えて散歩、カフェ・ド・フロール(著名人の社交場だった老舗カフェ)で、ゆっくり原稿を書きたいギル。
一方、パリ観光も早々に「もう見飽きた」と言うイネズは、やっぱりアメリカの方が好き。
おまけに、イネズの両親もパリ(&ギルも)嫌いで四人で過ごす時は少々ギルが浮いている!?
ほとんどの事で価値観がズレるけど、ギルはイネズを愛しています。
それが明らかに分かるのは、イネズの大学時代の友人に再会した時のギルのふて腐れ顔!
キャロル(ニーナ・アリアンダ)の隣に居る、イケ好かない野郎・ポール(マイケル・シーン)。
イネズの憧れの存在で、ギル曰く“ニセ教養人”。
大学で講演なんかもする博学な男に、イネズは尊敬の眼差しを向けていて、ギルは彼と行動する羽目に。
それから・・・
「ミッドナイト・イン・パリ」ネタバレ
「僕の記憶が正しければ…」と、ベルサイユ宮殿で誇らし気に語るポール。
そして、ロダン美術館の彫刻『考える人』の前で、“間違った”知識を披露しても女性ガイドスタッフ(カーラ・ブルーニ)に反論する男・ポール。
“うんちくを垂れる”奴との苦痛な時間、ギルは“あからさまに”避けています。
その態度に呆れたイネズはギルとは別行動で、ポールたちとダンスへ行ってしまいました。
愛するイネズと過ごすはずだった夜のパリを、一人で散歩するギルは気づけば迷子。
たどり着いたのは、サンテティエンヌ・デュ・モン教会。
深夜0時を告げる鐘が鳴り響き、人通りの無い石畳の道を見つめるギル。
すると、近づいてきた一台のクラシックカー(プジョー)が止まり「さあ、乗れよ!」と、ギルを呼んでいます。
パーティーへ行くと言う彼らの愉快な雰囲気に、ギルもシャンパンで乾杯!
訳が分からないまま訪れた、パーティー会場。
そこで出会う人々に、ギルは目を丸くするのでした。
聞こえて来たのは、コール・ポーター作詞作曲『Let’s Do It (Let’s Fall in Love)』(1928年)。
ピアノで弾き語りをしているのは……コール・ポーター!?
パーティー会場を見渡して、ドコか違和感を覚えるギルに一人の女性が声を掛けます。
ギルが作家だと知った彼女は「……私はゼルダよ。ねぇ、スコット!」と、誰かを呼んで。
やって来たのは「F・スコット・フィッツジェラルドだ」と、自己紹介するゼルダの夫。
アメリカ出身の作家夫婦 スコット(トム・ヒドルストン)とゼルダ(アリソン・ピル)。
ギルが想いを馳せる、遥か昔に生きてた人物が目の前に?
仮装パーティーにしては良く出来過ぎ、頭が混乱して“ますます”目を見開くギルは二人に尋ねます。
「ここは、ドコだ?」
スコットが教えてくれた、このパーティーの主催者の名前は「ジャン・コクトーさ!」
1889年に生まれたフランスの芸術家で、もちろんギルが憧れる一人です。
「コール(・ポーター)と、(妻の)リンダも一緒に…」と、真顔で言ってるスコット。
少しずつ夢の時間を楽しみ始めたギルは、スコットとゼルダ夫婦がお気に入りの“ポリドール”にやって来ました。
1845年に建てられたビストロは、あの小説家も常連です!
酒に酔い高揚するスコットが、作家 ギル・ペンダーを“彼”に紹介。
すると「ヘミングウェイだ…」そう答えた、男の顔を見たギルは目がテン!
大ファンの、アーネスト・ヘミングウェイ(コリー・ストール)です。
フラッパー(新時代を自由奔放に生きる女性)のゼルダと、ヘミングウェイは犬猿の仲。
ギルが“本で読んだ通り”の人間模様が、目の前で繰り広げられます。
夫・スコットは「ゼルダは刺激的だ!」と、言ってるけど「今に彼女に潰されるぞ!」と、苦言を呈するヘミングウェイ。
彼らが辿る人生を知っているギルは大いに動揺しつつ、余計な事は口にしません。
「マーク・トウェインは好きか?」と、問われるギル。
ヘミングウェイにとっても、偉大なる先人の作家 マーク・トウェイン(1835-1910年)。
ギルは、“ヘミングウェイの言葉を引用して”「現代のアメリカ文学は、すべて“ハックルベリー・フィン”に由来する…」と、熱弁!
気が合う新顔の男・ギルにヘミングウェイは、女流作家 ガートルード・スタインを紹介すると約束します。
ギルの、初めての小説“ノスタルジー・ショップで働く男”。
まさか、あのガートルード・スタインに意見を聞けるなんて!
大興奮のギルは、原稿を取りに外へ出ると「落ち着け、冷静になるんだ!奇跡の夜だぞ…」と、気を静めます。
だけど、それはホントに“奇跡の夜”だった……
確かに在ったビストロ・ポリドールは、2010年の見慣れたコインランドリーに。
そこには、1920年代の街並みも、ヘミングウェイも居ませんでした。
翌朝、ギルは昨夜の夢のような出会いを恋人・イネズに伝えますが、現実なワケないとバッサリ!
降り出した雨に「素敵だよ、雨の中の散歩」と言うギルを制して、大急ぎでタクシーに乗るイネズ。
全然気が合わないけど彼女を愛しているギルは、夜のサンテティエンヌ・デュ・モン教会へ連れて行きます。
昨日のようにクラシックカーが迎えに来て、彼らに会えば……きっとイネズも驚くはず!
ところが、ディナーを急がせてまで来たのに、全然迎えが来ません。
すっかり機嫌を損ねたイネズはタクシーで帰ってしまい、ポツンと佇むギル。
あれは、一度きりの夢だったのか?
深夜0時を告げる鐘が鳴り、ふと石畳の道に目をやるとクラシックカーです!
ヘミングウェイと向かったのは、ガートルード・スタイン(キャシー・ベイツ)の芸術サロン。
美術収集家でもある彼女は“あの男”と、ある作品について言い争いの真っ最中でした。
画家 パブロ・ピカソ……だけど、ギルが釘付けになったのはピカソの若い愛人・アドリアナ(マリオン・コティヤール)の方です。
「“過去”は、偉大なカリスマ…」
現在より、“ベル・エポック(1890~1914年頃まで)”こそ素晴らしい時代と言うアドリアナ。
名立たる画家たちと関係がある彼女にギルも惹かれ、実はヘミングウェイも狙っています。
小物やアンティーク雑貨が売られる、蚤の市にやって来たギル。
どこからか聞こえる音楽に釣られ、イネズと“はぐれた”ギルは蓄音機が並ぶ骨董品店へ。
♪『You Do Something to Me』に、ウットリするギルに女性店員(レア・セドゥ)が声を掛けます。
「…気に入った?コール・ポーターよ…いい歌詞ね、楽しくて」
「あぁ、大ファンだ。コールも奥さんのリンダも、仲間の輪に入ったも同然…なんてネ」
ギルが“友達”の歌に聴き入ってると、現実に引き戻すイネズの声が!
あのイケ好かない“ニセ教養人”・ポールと、美術館へ行く時間です。
「見てくれ、ピカソの傑作だ。愛人のマデリーヌの肖像画だ」
ポールがニセ知識を披露するのは、昨夜ガートルード・スタインとピカソが論争していた“愛人・アドリアナを描いた絵”でした。
すると、ポールを遮り「僕の記憶が正しければ…」と、目の前で起きた真実を得意気に話すギルは優越感に浸っているようです。
昼は、イネズを放ったらかして、小説“ノスタルジー・ショップで働く男”の執筆に夢中になるギル。
夜は“向こうの時代”で、作家 F・スコット・フィッツジェラルドが主催する、遊園地パーティーでダンス!
そして現実と理想、二つの時代、二人の魅力的な女性の狭間で悩み始めます。
パリを愛する者同士、気が合うのはパブロ・ピカソの愛人・アドリアナ。
もちろん結婚を控えた恋人・イネズも大事だけど「婚約してから時々…」と、密かに安定剤を服用していたギル。
パニックを起こす原因はイネズとの価値観のズレと、分かってるのに誤魔化して来ました。
あーだこーだと、僅かな共通点だけを頼りにするギルを、冷めた目で見るアドリアナ。
実は、ギルに惹かれていたけど、その恋心を消したようです。
一人残されたギルの悩み相談の相手は、画家 サルバドール・ダリ(エイドリアン・ブロディ)。
写真家 マン・レイに、映画監督 ルイス・ブニュエルとった“シュルレアリスト”です。
ギルが「…2000年代の未来から来た」と言っても「…何ら不思議はない」と、アッサリ受け入れる三人の男たち。
結局、ギルの悩みは解決されず、その後アドリアナはヘミングウェイとアフリカ旅行へ。
ギルは、あのピカソと同じ傷心を味わうのでした。
一人で骨董品店にやって来たギルは「コール・ポーターはある?」と、あの時の女性店員に声を掛けます。
レコードを買い次は本屋をのぞくと、ギルの目に留まったのは心惹かれるアドリアナの本でした。
フランス語を読めないギルは、ロダン美術館の彫刻『考える人』で“知識人ぶる男・ポール”の件で顔なじみになったガイドの女性を訪ねます。
彼女に本を読んでもらうと「……“私はアメリカ人の小説家に恋をした”」と、ギルへの気持ちが綴られていました。
ピカソでもヘミングウェイでも無く、アドリアナが愛し合ったのはギル……だと。
クラシックカーに乗って芸術サロンを訪れたギルは、アドリアナは今シングルだと聞くと彼女の元へ急ぎました。
感情を抑えるのはやめ、アドリアナとキスを交わすギル。
互いの気持ちが通じた二人の前に突然、馬車がやって来て「乗って!」と、呼んでいます。
馬車に乗ったギルとアドリアナは、いつの間にか1893年にオープンしたレストラン“マキシム”の前に。
パリが最も美しかったベル・エポック、二人はアドリアナが憧れる時代に来ました。
「ミッドナイト・イン・パリ」最後ラストの結末は?
目の前で華やかなダンサーが躍る“フレンチ・カンカン”に、心が弾むアドリアナ。
ベル・エポック時代に想いを馳せる、彼女の前に現れたのはフランス生まれの三人の画家。
パブロ・ピカソも崇拝する、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック。
エドガー・ドガ、ポール・ゴーギャンと同席したアドリアナは、尊敬の眼差しを向けます。
ところが、彼らが口にしたのは思いがけない言葉でした。
「……ルネサンス期(およそ1300~1600年)に生まれたかった」
どの時代に生きる者も、退屈な現在から逃げて自分が憧れる“黄金時代”へ行きたいと思っていたのです。
アドリアナとギルは、それぞれが求める黄金時代にズレがありました。
そして、ギルが導き出した答えは「幻想は、捨てるべき……」
だけど、心のままに動くアドリアナは、1920年代では無くベル・エポックで生きる事を決め、二人は別れました。
一人で芸術サロンに戻ったギルは、小説“ノスタルジー・ショップで働く男”に書かれた文章で“ある指摘”をされます。
「主人公が、婚約者の浮気を見抜けないのはおかしい…この“知識人ぶった男”と…」
2010年の事情を知るはずのないガートルード・スタイン、そしてヘミングウェイに、ズバッと見抜かれたギル。
「拒絶の心理です。ありがとう」と言って、芸術サロンに来る事は無くなりました。
ギルに放ったらかされて、恋人・イネズが知識人ぶった男・ポールと浮気したのは事実。
だけど、イネズを責める事はしなかったギル、それはこれまで気持ちを誤魔化して来た自分も悪かったからです。
「君も気づいて、ハッキリしたと思う。僕らは合わないと…」
パリで不可解な行動を取っていたギルに、突然別れを切り出され大激怒のイネズ。
結局、二人は結婚をやめ別れました。
夜のパリを散歩するギルに、骨董品店の女性店員が声を掛けます。
「…パリに住むことにした」と言うギルに「きっと、トリコになるわ」と、嬉しそうなパリジェンヌの彼女の名前はガブリエル。
コール・ポーターの話をしていると雨が降り出し「…濡れても平気よ。パリは雨が一番ステキなの」と、彼女は微笑みます。
雨降るパリの街、ギルとガブリエルは幸せそうに歩いて行きました。
THE END
「ミッドナイト・イン・パリ」見どころ
冒頭から映し出される、パリの風景。
心地よいジャズの音色は、きっとあなたを日常から連れ出すでしょう!
第84回アカデミー賞(2012年) 脚本賞受賞 ウディ・アレン
♪OP曲『Si tu vois ma Mere』 ソプラノ・サックス奏者 シドニー・ベシェ(1897-1959年)。
彼も、アメリカからヨーロッパに渡り、パリで生きた一人だそうです。
次々と出て来る著名人、芸術家の名前に「全然知らない!」と、敬遠しないで欲しいほど、個人的に大好きでオススメな作品。
私も登場する(名前があがる)過去の偉人たちを、初めて観た時は半分も知りませんでした。
ただただ、大好きな俳優・オーウェン・ウィルソン観たさで鑑賞。
芸術家の顔は“うろ覚え”だし、どんな作品を描いたのかも「あ~アレね…(知ったかぶり!?)」
それでも、俳優・エイドリアン・ブロディ演じる、画家・サルバドール・ダリは完全に顔が一致して笑いました。
1920年代、チャームポイントのハネ上がった髭はまだ短いですが、大きく見開いた目は奇人・ダリ!
そして、ヘミングウェイやF・スコット・フィッツジェラルドの顔は知らないけど、彼らと出会ったギルの純真な表情が最高で納得しちゃう。
驚きすぎてフリーズ!憧れの人が目の前で自分を呼んでくれたら、そりゃギルみたいに声も出ませんよ。
でも、受け入れたギルは嬉しさ全開で、お喋りして踊ってホントに幸せそうなんです。
気楽に物語としても楽しめますが、ハマったあなたには何度でも楽しめる秘訣があります。
史実と架空が入り混じってる本作、基本的に実在した人物のキャラクターは“そのまんま”。
「あのシーンの意味は?」「二人には、そんな事が!」
ササッと彼らの人生を勉強したら、より理解度が深まって更に魅力的な人物に見えて来ます。(文明の利器!こんな時インターネットって便利ですね)
女流作家 ガートルード・スタインに“失われた世代”と呼ばれた、彼らの人生。
F・スコット・フィッツジェラルドとゼルダ夫婦の、短くも濃厚な人生は私も勉強中です。
ギルが1920年代で恋に落ちる、魅力的な女性・アドリアナ。
彼女は架空の人物ですが、演じている女優・オリオン・コティヤールがとにかく色気があってカワイイ!
対して、ワガママぶりが気になってしまう恋人・イネズを演じた、女優・レイチェル・マクアダムス。
幅広い役柄を演じ、観る者を惹き付ける二人。
違う時代を生きるので別シーンでしか登場しないけど、本作はオリオン・コティヤールの存在感が圧倒的!(個人の感想です)
※本サイトには、レイチェル・マクアダムスの魅力が詰まった名作映画もあるので、のぞいてみ下さいね。
監督・ウディ・アレンが描き出す世界に生きる女性たちはやっぱり素敵で、本作も雨が降る街で恋が始まった!
同監督の映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2020年)も、雨がもたらすオススメのロマンチック・コメディです。
「“現在”って不満なものなんだ、それが人生だから…」
“あの頃”を思う大人こそが、ユーモアと皮肉を堪能できる本作。
パリ、そして時間旅行を心ゆくまでお楽しみ下さい。
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