映画「悪人」は、 2010年の李相日監督、妻夫木聡主演の日本映画です。
この映画「悪人」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
孤独な男女の出会いがもたらす人間ドラマ「悪人」をお楽しみください。
原作は吉田修一の小説です。
この映画で妻夫木聡さんが最優秀主演男優賞、深津絵里さんが最優秀女優賞を受賞しています。
タイトルが「悪人」ですが、本当は誰が悪人なのか?なんて視点で見ても面白い作品ですよ。
■ スタッフ
監督: 李相日
製作:島谷能成、服部洋、町田智子
脚本: 吉田修一、李相日
撮影: 笠松則通
音楽: 久石譲■ 主要キャスト
清水祐一:妻夫木聡
馬込光代:深津絵里
増尾圭吾:岡田将生
石橋佳乃:満島ひかり
清水房枝 – 樹木希林
石橋佳男 – 柄本明
「悪人」あらすじ
清水祐一(妻夫木聡)は取り柄も学歴もなく、友人や恋人もおらず、趣味は車だけと言う寂しい青年です。
肉体労働で日銭を稼ぐ彼は、自分を捨てた母親の代わりに育ててくれた祖父母の家に暮し、唯一の気晴らしが出会い系サイト。
その日も彼はある女性に会う為車を走らせるのでした。
一方その頃、祐一(妻夫木聡)と会う約束をしている石橋佳乃(満島ひかり)は職場の同僚と、たっぷりにんにくの入った餃子を食べていました。
彼女には、これから祐一(妻夫木聡)に会うための気遣いなど欠片もありません。
祐一(妻夫木聡)の存在をひけらかすようにして同僚に話し、その上で彼と会うのはただセックスが良いからだと言い放つのでした。
待ち合わせ場所。
面倒くさそうに祐一(妻夫木聡)の元へと向かう佳乃(満島ひかり)でしたが、偶然にもそこに彼女の憧れの青年がいました。
彼の名は増尾圭吾(岡田将生)。
実家が旅館を営む大学生の彼の見た目の良さと家格に憧れる佳乃(満島ひかり)は、祐一(妻夫木聡)の目の前で圭吾(岡田将生)にしなだれかかるようにして彼の車に乗り込んでしまいました。
これが、孤独を抱え、誰か繋がりたくて足掻く人々の悲しい物語の始まりです。
「悪人」ネタバレ
あっけにとられながらも、はるばる会いに来た自分への仕打ちに怒り、腹立ちまぎれに圭吾(岡田将生)の車を追う祐一(妻夫木聡)。
圭吾(岡田将生)の車に乗り込んだ佳乃(満島ひかり)は、今がチャンスとばかりに怒涛の勢いで話し続けます。
ところがその日圭吾(岡田将生)はとても機嫌が悪かったのです。
何かの気晴らしになるかと佳乃(満島ひかり)を乗せたものの、彼女の勢いにイライラを募らせた彼は、誰も通らないような山の中で佳乃(満島ひかり)を蹴りだし置き去りにして去ってしまいました。
佳乃の勝手な振る舞いに苛立っていた祐一(妻夫木聡)ですが、さすがに夜の真っ暗な山の中に蹴りだされた彼女を見て助け起こそうと近付きます。
送るから車に乗れという祐一(妻夫木聡)に向かって、プライドを傷つけられた佳乃(満島ひかり)は思いつく限りの罵詈雑言を浴びせます。
祐一(妻夫木聡)が宥めようにも全く収拾がつかず、遂には、あんたにレイプされたって言ってやる、とまで喚き始めてしまいました。
慌てて彼女ともみ合う祐一(妻夫木聡)。
パニック状態の彼は、とにかく彼女を黙らせようと口を塞ぎ喉を押さえてしまいます。
結果佳乃(満島ひかり)は死んでしまったのでした。
佳乃(満島ひかり)の遺体はすぐに見つかり、祐一(妻夫木聡)の所にも警察がやってくるかもしれない、そんな状況下で彼はまた出会い系サイトを使って一人の女性と出会います。
それが馬込光代(深津絵里)でした。
紳士服店に勤める光代(深津絵里)は、彼氏がいて生活が充実している妹とは違い、孤独を抱える淋しい毎日を過ごしていたせいか、祐一(妻夫木聡)と出会ったその日のうちに、誘われるままホテルへとなだれ込みます。
淋しさを抱えた者同士気持ちが通じ合った二人。
翌日のドライブデートの昼食中、祐一(妻夫木聡)は光代(深津絵里)に自分の犯した犯罪について告白するのでした。
実家にも刑事が来ているし、自首するつもりだと話す祐一(妻夫木聡)でしたが、そんな彼に向かって光代(深津絵里)は共に逃げる事を提案します。
テレビでは重要参考人として捜索されている祐一(妻夫木聡)の祖母(樹木希林)にマスコミが群がっています。
入院中の祖父の世話と詐欺に騙されてにっちもさっちもいかなくなっている祖母(樹木希林)の姿はとても哀れなものでありました。
この事件は佳乃(満島ひかり)が出会い系サイトを利用していた事もあって、かなり赤裸々に悪意すらうかがえるような報道がなされています。
一人娘を失った佳男(柄本明)は、佳乃(満島ひかり)を殺した犯人に自分の手で復讐しようと、独自に犯人捜しを始めました。
そうして辿り着いたのが圭吾(岡田将生)です。
雨の中彼に近付き復讐を試みるも、さっきまで悪し様に佳乃(満島ひかり)の事を笑い者にしていた圭吾(岡田将生)は、無様なほどに怯えて腰を抜かし、自分が犯人ではないと必死に訴えかけてくるのでした。
「悪人」最後のラスト結末
2人で逃げ続けた祐一(妻夫木聡)と光代(深津絵里)は古い灯台に辿り着きます。
ここで良かよ、と、そう呟く光代(深津絵里)への愛情と巻き込んだことに対する後悔とに揺れる祐一(妻夫木聡)。
2人寄り添って灯台に身を隠していましたが、共に暮らす妹が自分の事を心配しているだろうと、光代(深津絵里)は電話をかけに出てしまいます。
これが彼らの逃避行の最後でした。
妹への電話中に警察官に見付かる光代(深津絵里)。
警察に保護されますが、隙を見て逃げ出し祐一(妻夫木聡)の待つ灯台へと戻ります。
しかし灯台の周りは多くの警官に囲まれ逮捕は時間の問題。
祐一(妻夫木聡)は光代(深津絵里)を守る為、警察官の目の前で彼女の首を絞めるのでした。
この行為が証拠となって、犯人を逃がすために同行していた光代(深津絵里)は殺人犯に連れまわされていた被害者、として保護され罪を問われる事はありませんでした。
物語のラスト、光代(深津絵里)はタクシーに乗って、佳乃(満島ひかり)殺害現場へと花を手向けに訪れます。
そこへやってきたのは佳男(柄本明)です。
事件の関係者だと察した光代(深津絵里)はそっとタクシーに戻り、首を絞めて殺すなんて人間のする事じゃない、そう言う運転手に向かって、そうですよね、あの人はやはり悪人なんですよね、と少しうつろな顔をして答えるのでした。
完。
「悪人」見どころ
この物語は殺人事件がベースにありますが、では果たして『悪人』は誰なのか?という事を強く訴えかけてくるような物語です。
原作小説を読んで自ら志願した妻夫木聡さんからオーディションで佳乃役を勝ち取った満島ひかりさんまで、出ている役者さん全てが素晴らしいです。
妻夫木さんはこれまで好青年の役が多く、たまにダークな役柄を演じても、正直善人顔すぎる雰囲気がそこまでの暗部を示し切れてなかったように感じていましたが、この祐一役は本当に素晴らしかった。
鬱屈した想いを抱え、孤独に耐えかねた祐一の唯一のツールが出会い系サイトだった、というバックボーンから、人殺しとして生きていくの人生を思うと、犯した犯罪は決して許せることではありませんがとても切なく胸に迫るものがありました。
ご本人も、絶対この役は自分がやりたい、と申し出ながらもかなり苦労して演じられたようで、日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を獲られた際には涙、涙の男泣きスピーチをされていた事が忘れられません。
ヒロインの深津絵里さんはじめ、脇を固める大ベテランに柄本明さん、樹木希林さん。
そして当時は新鋭だった満島ひかりさんと、芸達者な役者さんばかりが並びますが、この中に居ても埋もれることなく存在感を発揮した岡田将生さんも素晴らしかったと思います。
満島さんを見ていると、あぁこう言う人いる…コンプレックスの塊のくせに自己評価が高い人、というのをまるで地でやっているのかと言うほどリアルなお芝居をされていましたが、岡田さんもなかなかどうして負けていません。
最初から最後まで嫌な奴、山の中に女の子を置き去りにする男ですからね、見た目は完璧なのに中身が最低な男っぷりがとっても自然でした。
人を殺すという大きな罪を犯してしまった祐一が悪人なのは否定できません。
しかし、勧善懲悪漫画のように、分かり易い悪者だけが存在する映画ではないと思います。
自分のプライドを守るために罵詈雑言を履いた佳乃、自分の苛立ちを簡単に他人にぶつけてしまえる圭吾、祐一を捨てた母親、祖母を騙してお金を奪う詐欺師…などなど。
小さな事から上げていけば登場人物のほとんどに悪人要素があるのではないかとすら思ってしまいます。
孤独と閉塞感たっぷりの映画ですし、原作に比べて内容が薄くなっている部分もありますが、とにかくこの作品の中で生きている登場人物達のリアルだけはしっかり感じられる映画です。
この作品を見て、スカッとした!頑張ろう!みたいなポジティブな感情を産むのは難しい気がしますが、それでも、誰でも簡単に線を超える可能性はある、悪人的要素は誰の中にもある、と言った点において見て損は無い作品だと思いますよ。
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