映画「おとうと」は、吉永小百合主演、山田洋次監督の2010年の日本映画です。
「おとうと」のネタバレやあらすじ、最後ラストの結末と見どころを紹介します。
しっかり者の姉とダメな弟の絆を描く「おとうと」をお楽しみください。
第34回日本アカデミー賞を総なめにした感動作です。
「おとうと」キャスト・スタッフ
■ スタッフ
監督: 山田洋次
制作: 『おとうと』製作委員会
音楽: 冨田勲
脚本: 山田洋次他
撮影:近森眞史■ 主要キャスト
高野吟子:吉永小百合
丹野鉄郎:笑福亭鶴瓶
高野小春:蒼井優
長田亨:加瀬亮
高野絹代:加藤治子
寺山祐介(小春の夫):田中壮太郎
丸山(自転車屋店主):笹野高史
遠藤(歯科医師):森本レオ
丸山の息子:石塚義之
警官:ラサール石井
アパートの家主:池乃めだか
鍋焼きうどんを持ってきた出前の親父:佐藤蛾次郎
大原ひとみ(鉄郎の元恋人):キムラ緑子
丹野庄平:小林稔侍
「おとうと」あらすじ
東京の郊外で小さな薬局を営む吟子(吉永小百合)
娘・小春(蒼井優)の結婚が決まるが、その結婚式に音信不通だった吟子の弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)が現れる。
鉄郎は役者を目指していたが未だに上手くいかない風来坊。
以前、吟子の夫の十三回忌で泥酔し大暴れした鉄郎は、今回一滴も酒を飲まないと約束するが我慢できず、またしても結婚式を無茶苦茶にしてしまう。
親戚からも厄介者扱いでしたが、ただひとり、吟子だけは鉄郎の味方でした。
しかし、ある事件がきっかけで・・・
しっかり者の姉とダメな弟の再会と別れに涙する感動作です。
「おとうと」ネタバレ
高野吟子(吉永小百合)は、東京の郊外で小さな薬局を営みながら一人娘の小春(蒼井優)と、義理の母・絹代(加藤治子)の3人で暮らしています。
吟子は、小春が小学生の時に夫を亡くしているため、女手一つで小春を育て、絹代の面倒をみてきました。
そんな小春もエリート医師との結婚が決まり、結婚式の招待状を大阪に住んでいる弟の鉄郎(笑福亭鶴瓶)に送りますが宛先不明で返ってきてしまいます。
小春の結婚式当日、家族、親戚、友人らに祝福されながら幸せな時間を過ごしていた小春たちでしたが、そこに突然鉄郎が現れます。
しかし、鉄郎が祝いに来たことを喜ぶ親戚は一人もいませんでした。
なぜなら、鉄郎はかなりの風来坊で親戚中からつまはじきにされていたのです。
10数年前、吟子の夫の十三回忌にひょっこり現れた鉄郎は、酒に酔っぱらい法事を台無しにし、吟子にきつく叱られてからは連絡を取り合う事もなく暮らしていました。
今回もその時のように小春の結婚式にひょっこり現れた鉄郎。
吟子と鉄郎の兄・庄平(小林念侍)に、結婚式に出席するなら酒は飲むなとお灸をすえられた鉄郎でしたが、やはり我慢が出来ず、お酒を飲みだしてしまいます。
招待客を見送るため吟子が中座した隙に、小春の結婚相手に絡みだす鉄郎。
結局悪酔いをして、マイクを奪い、暴れ、結婚式を台無しにしてしまいます。
小春の結婚相手の両親にさんざん文句を言われた吟子や庄平。
庄平は鉄郎に呆れ、縁を切ってしまいます。
結婚式の翌日、鉄郎を叱る吟子でしたが結局鉄郎のペースに持っていかれ曖昧になってしまいます。
鉄郎が大阪に帰りしばらくして、小春が実家に戻ってきます。
小春の結婚式で鉄郎が暴れたことがきっかけで離婚することになってしまったのです。
そんな時、大阪から鉄郎と付き合っている女性(キムラ緑子)が吟子の家にやってきます。
その女性は、鉄郎に貸した130万円を代わりに返して欲しいと頼みにきたのです。
そんな大金を証拠も無しに返済は出来ないという吟子に、女性は鉄郎が書いた借用書を見せます。
全額でなくても構わないからどうにかお金を工面してくれないかという女性に、吟子はコツコツ貯めた貯金を下ろし130万全額を渡すのです。
そんなことがあった後、吟子の前にまた鉄郎が現れます。
吟子が鉄郎の借金を返したことを知ってご機嫌をうかがいにやって来たのです。
たまたまそこに帰ってきた小春は、ぶつぶつと言い訳する鉄郎に「言い訳する前に謝りなさい」と怒りをぶつけます。
自分の非を認めず恋人のことばかり悪く言う鉄郎に痺れを切らした吟子は鉄郎を殴り、「お金のことはもういいから、もうお姉ちゃんなんて呼ばないで」と鉄郎と縁を切る決心をします。
追い出された鉄郎は恨み節を言いながら帰っていきます。
それ以降、鉄郎は消息をたち吟子たちの前に現れる事はなくなりました。
姿を消した鉄郎の捜索願いを出していた吟子に、大阪の警察から鉄郎が病に倒れ入院したと連絡がきます。
吟子は鉄郎に腹を立て、縁を切ったものの最後に会った鉄郎の体調がひどく悪そうだったのが気になって非情にはなれずにいたのです。
そんな吟子を咎める小春に、吟子は鉄郎が小春の名付け親になったいきさつを話します。
鉄郎が小春の名付け親になるのに反対だった吟子を説得したのは、亡くなった夫、小春の父親だったのです。
吟子の夫は、「たまには鉄郎君に花を持たせてやろう」と吟子を説得したのでした。
周りの人達からあまり褒められてこなかった鉄郎を思い、娘の名付け親になった鉄郎に沢山感謝したいと言う夫の話を聞き、吟子は鉄郎に罪悪感を抱いていました。
鉄郎に対していつも少し甘やかしてしまうのはその罪悪感からだったのです。
大阪に向かった吟子は、警察から鉄郎がいくつもガンを患っていて、もう先が長くない事を聞きます。
病院では長期入院を受け入れてもらえないため、民間のホスピス『みどりのいえ』で療養しているという鉄郎。
『みどりのいえ』の所長(小日向文世)に、自分の命日を4月7日と決めているようですと聞く吟子。
「おとうと」ラスト最後の結末
吟子が訪ねてきた事を知った鉄郎は、自分の惨めな姿を見せたくないと面会を拒みます。
喧嘩した日の事を謝る吟子に、他人行儀に話す鉄郎。
何を言っても鉄郎が話に応じないので一旦帰ることにした吟子は、鉄郎が借りていたアパートを訪ねます。
その部屋には鳥が放し飼いで飼われていました。
吟子はそのまま鳥の面倒を見ていてくれた大家に鳥のエサ代と未払いの家賃を支払います。
翌日鉄郎の看病をする吟子に、固形の物は食べられないから点滴の中にこれを入れてくれと、内緒でペットボトルに入れた酒を渡します。
病気になっても酒だけはやめられない鉄郎だったのです。
それから小春と、同級生で大工の亨(加瀬亮)の結婚が決まりますが、鉄郎の危篤の知らせが届きます。
吟子は再び大阪を訪れ、つきっきりで鉄郎の看病をします。
口から食事をすることが出来なくなっていた鉄郎でしたが一口だけ好物の鍋焼きうどんを吟子に食べさせてもらいます。
その夜、鉄郎が明日の朝まで持たないかもしれないと聞いた小春も亨の運転する車で大阪へと向かいます。
鉄郎は、吟子に今夜はここに泊まってくれないかとお願いをします。
夜中に起きるとしばらく寝れなくなるのがとても辛いのだと言って。
吟子は、鉄郎が目を覚ました時に自分を起こせるように自分の手と鉄郎の手をリボンで結びます。
その夜、たわいもない姉弟の会話をする吟子と鉄郎。
鉄郎は涙を流して吟子に感謝の言葉を伝えます。
4月7日、そこに小春と亨も到着し、みんなが見守る中、鉄郎は静かに息を引き取ります。
それから少し時が経ち、吟子、小春、そして姑の絹代の三人で小春の結婚のお祝いをします。
鉄郎が死んだことを理解していない絹代は、小春の結婚式に鉄郎は呼ぶのかと二人に聞きます。
今回は呼ばなかったという吟子に、鉄郎を毛嫌いしていたはずの絹代は「みんなにのけ者にされて一人ぼっちなんだろ?お酒さえ飲まなければいいんだから結婚式に呼んであげたらいいじゃない。」と話します。
絹代の鉄郎を気遣った言葉に吟子は涙するのでした。
完。
「おとうと」見どころ
山田洋次監督が、10年ぶりに現代劇でメガホンを取ったという事でも話題になった映画ですが、とてもハートフルで心がほっこりと温かくなるストーリーです。
ベテランの俳優さんたちの豪華な共演も見どころですが、何といっても吉永小百合さんの優しく母性溢れる演技が素敵です!
どんなことがあっても弟の鉄郎を思い世話を焼いてしまう姉の姿を繊細に美しく演じていました。
出演している俳優さん全て豪華ですが、中居正広さんが一瞬だけ友情出演しているので、どのシーンで出演しているのかチェックしてみて下さいね!
そして、弟・鉄郎役の笑福亭鶴瓶さん。
あちこちに迷惑をかける問題児を見事に演じきっていました!
お金とお酒にだらしなく、それでも悪びれず自分の思うがまま生きる鉄郎を鶴瓶さんが演じるとチャーミングに見えるから不思議です!
鉄郎の最後のシーンは鶴瓶さんの迫真の演技で涙が止まりません!
のけ者として親戚からもつまはじきにされてきた鉄郎の最後が、大好きなお姉ちゃんと大好きな姪っ子の小春に看取られる形で終わったのがとても良かったです。
こちらの鶴瓶さんもおすすめです。
そして、絹代の言葉に最後の最後にまたまた号泣してしまいました。
笑いあり涙ありの心温まる家族の絆に胸を打たれます!
山田洋次監督の描く人間味溢れるこの映画は、性別世代関係なく、家族や大切な人と見たくなるような作品です。
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