映画「小野寺の弟、小野寺の姉」は、 向井理・片桐はいり主演、2014年の日本映画です。
この映画「小野寺の弟、小野寺の姉」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
大人になっても一緒に暮らす不器用な姉弟の恋愛を描いた「小野寺の弟、小野寺の姉」をお楽しみください。
原作は西田征史の小説で、舞台化もされている映画です。
■ スタッフ
監督: 西田征史
製作: 大畑利久、三好順作
脚本: 西田征史
撮影: 相馬大輔
音楽: 池頼広■ 主要キャスト
小野寺 進:向井理
小野寺 より子:片桐はいり
岡野 薫:山本美月
浅野 暁:及川光博
河田 耕輔:ムロツヨシ
齋藤 亜沙子:寿美菜子
祖父江 好美:麻生久美子
酒井 啓介:大森南朋
「小野寺の弟、小野寺の姉」あらすじ
とある古い一軒家に暮らす小野寺姉弟。
共に独身のより子(片桐はいり)と進(向井理)は、親から譲り受けた一軒家で共に暮らしています。
姉、より子(片桐はいり)40歳。
近くの商店街にあるメガネ店で販売員をしており、風水や占いに詳しく、生活の中にも取り入れている。弟の畳貯金は、弟が大好きなご飯の香りをより良いものにする高級炊飯器を買う為の物だと思っている。
弟、進(向井理)33歳。
調香師として『ありがとうの香り』を作り出すために頭を悩ませている。
姉には内緒のつもりでしている畳貯金、その目的は自分のいたずらが原因で怪我をさせてしまった姉の前歯の治療費のため。
中学生の時の怪我がもとで前歯が変色してしまい自分に自信が持てないより子(片桐はいり)は、勤務先にくる営業の浅野暁(及川光博)に淡い恋心を抱きながら、かつての恋人、祖父江好美(麻生久美子)を忘れられないまま新しい恋に踏み出そうとしない弟、進(向井理)を気遣っていました。
一方進(向井理)もまた、早くに亡くなった親の代わりになって自分を育ててくれたより子(片桐はいり)の幸せを願い、姉を置いて自分だけが幸せになる事に抵抗を感じています。
そんな二人の元に、ある日配達間違いで見知らぬ名前が書かれた手紙が届けられてきました。
宛名は岡野薫(山本美月)。
家まで手紙を届けようと言い出すより子(片桐はいり)に、嫌々ながら付き合わされた進(向井理)でしたが、扉を開けた薫(山本美月)を一目見た瞬間、彼の心に変化が表れ始めます。
共に恋に臆病になっている姉弟、この二人の恋の結論はいかに…?
「小野寺の弟、小野寺の姉」ネタバレ、最後のラスト結末は?
より子(片桐はいり)が想いを寄せる浅野(及川光博)は、物腰も柔らかくいつも優しく声をかけてくれます。
いつも前歯を隠すようにして笑い、自分なんか…という気持ちが染みついてしまっているより子(片桐はいり)でしたが、優しい浅野(及川光博)への気持ちは日に日に増すばかり…
そんなある日、浅野(及川光博)から『明日、お時間ありませんか?』と誘われました。
その日はちょうど、より子(片桐はいり)の誕生日。
『まさか…』という気持ちと、それでも期待してしまう気持ちとで浮足立つより子(片桐はいり)。待ち合わせ場所にやってきた浅野(及川光博)は『行きたい場所がある』と言っておしゃれな雑貨屋さんへと向かいます。
そこで『小野寺さんは、どちらが好きですか?』など、より子(片桐はいり)の意見を聞く浅野(及川光博)。
真剣な表情で品定めする浅野(及川光博)を見詰めながら、もしかしたら、という期待感がムクムクと高まってくるより子(片桐はいり)でしたが、しかし彼が選んでいたのは、より子(片桐はいり)の勤務先の向かいで働く齋藤亜沙子(寿美菜子)へのプレゼントでした。
浅野(及川光博)はただ、風水に詳しいより子(片桐はいり)の意見を参考にしたかっただけなのです。
浮き立った気持ちを一気に潰されたより子(片桐はいり)は、精一杯の笑顔で明るくプレゼントを一緒に選びましたが、家に帰りつくなり部屋にこもって一人泣くのです。
そこへ帰宅した進(向井理)は、いつもならきちんと整頓されている玄関の靴が散らばっているのを見て、姉の恋が上手くいかなかったことを悟ります。
進は、姉とも仲が良くいつも一緒だったかつての恋人祖父江好美(麻生久美子)と別れて以来の自分の気持ちの変化に戸惑っていました。
このまま結婚するだろう、と思われていた好美(麻生久美子)との別れの原因、実はより子にあったのです。
一緒に暮らそう、と言い出した好美(麻生久美子)に『自分が家を出たら姉が一人になる。自分だけが先に幸せになるわけにはいかない』と同棲を拒否した進。
そんな彼に絶望して好美(麻生久美子)は去ったのでした。
以来、恋に前向きになれなかった進(向井理)に新しい風を運んできたのが薫(山本美月)でした。彼女もまた進(向井理)に好意を抱いていたのです。
しかし、なかなか踏み出せない進(向井理)は何度も薫(山本美月)の気持ちを見ないふりでやり過ごしてしまいました。
そんな進(向井理)がやっとクリスマスに彼女を誘い、想いを伝えたとき薫(山本美月)は、この恋に見切りをつけ自身のスキルアップのための留学を決めた後なのでした。
奇しくも同じ日に失恋した姉と弟。
姉の恋が破れた事を悟った進(向井理)は、何事もなかったかのように振る舞う姉に『誕生日プレゼント』と言って、畳貯金をまとめた札束を無造作に渡します。
『それで歯を直しなよ』と。
その言葉に思わず顔が歪むより子。
『ごめんね、姉ちゃん、失恋しちゃった』と涙のにじむ声で笑い飛ばすように言う姉と、それを唇を歪ませ自身も泣きそうになりながら聞く弟。
それでも二人は、変わらない毎日を送る為に、お互いの存在を慈しみながら前を向いて明るく言葉を交わします。
彼らの恋は終わってしまったけれど、姉と弟二人の生活はこれからも続いてゆくのです。
彼らの毎日が、ささやかでもいい、小さくても良い、幸せでありますように、と願いたくなるような温かな作品です。
「小野寺の弟、小野寺の姉」見どころ
なんといっても主役の二人がとてもいいです。
正直、似ているとは言い難い、はいりさんと向井さんを姉と弟にした事が、この映画の完成度をより高めていると思います。
はいりさん自身も『遺伝子的に無理がある』とおっしゃっていたそうですが、弟の事ばかり中心に据えて考えてしまう姉と、いつも寝癖頭でぼんやりしているのに姉の幸せを願う気持ちが芯が通っている弟として、本当に無理なくお二人の演じる姉弟が成り立っていました。
監督も『休憩中に2人して同じ部屋でパイプ椅子の上で寝ていた。
一応男と女なのになぁ、と思った』とおっしゃっていましたが、それぐらいお二人の空気感が普段から姉弟に近いナチュラルなものだったという事ではないでしょうか。
この空気感が、見た目はあまり似ていないお二人を見て『こんな姉と弟いるいる』という気持ちにさせてくれるのかもしれません。
また作中にちりばめられた伏線と笑いの数々…あとになってアレはこうだったんだ、という発見に繋がったり、進の会社の出す入浴剤の香りやより子のコンタクト、姉弟の口喧嘩など画面の隅々にまで監督のこだわりが詰まった作品だと思います。
そういったこだわりを全て拾って辿り着いたラストシーンは、こちらの涙腺をいたく刺激し、しかしその涙は決して悲しいものではないのです。
本当に、きっと誰もが持っている当たり前の温かさなんだけれど、当たり前すぎて時に見失ってしまうその温もりを思い出させてくれるような、そんな涙でした。
笑って泣けて、じんわり心が温まるこの映画、気持ちが疲れている時におススメです。
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