映画「君の誕生日」はソル・ギョング主演、イ・ジョンオン監督の2019年の映画です。
この映画「君の誕生日」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見どころについて紹介します。
愛する者を失った遺族の心の傷と愛を描いた感動作「君の誕生日」をご堪能ください。
「君の誕生日」あらすじ
ジョンイル(ソル・ギョング)には、妻・スンナム(チョン・ドヨン)と二人の子供がいます。
しかし、下の娘・イェソル(キム・ボミン)がまだ、よちよち歩きの頃にベトナム勤務となり、家族は離れて暮らしていました──
2016年、ジョンイルは大きな荷物を抱えて韓国に帰国。
チャイムを押し妻・スンナムの出迎えを待ちますが、彼女はドアを開けようとはしません。
モニターに映るおじさんが、父だとは気づかない小学生になった娘・イェソル。
名前を呼ばれてもドアを開けない母を、イェソルは不思議そうに見つめるだけでした。
家族が離れて暮らした数年の間に、ジョンイルの職場では死者を出すストライキが発生。
責任を問われた彼は無罪判決が出るまでの3年、刑務所に服役していました。
貯金は夫のため弁護士費用に消え、慎ましい暮らしをして来た妻・スンナム。
しかし、夫婦の表情を曇らせる理由は他にありました。
それは、高校生の息子・スホ(ユン・チャンヨン)の死。
2年前の2014年4月16日、海上に浮かぶ大型客船セウォル号が沈没。
同級生たちと修学旅行を楽しんでいた、スホも犠牲となりました。
最愛の息子が迫りくる死に恐怖を感じていた時、父であるジョンイルは塀の中。
ひとり悲しみに打ちひしがれるスンナムは、その日から心を閉ざすようになったのです。
そして・・・
「君の誕生日」ネタバレ
父・ジョンイルの出現に、戸惑っていた娘・イェソル。
はじめは叔母さん(イ・ボンリョン)と三人で過ごし、次第に父親に甘えるようになりました。
父娘で甘い物を食べに行くと「半分、持って帰っていい?お兄ちゃんの分」と、イェソルは優しい子に育っています。
母が居ない間に父を家に入れたイェソルは、洗面所の切れた電球を交換する父に大喜び。
「あれも直せる?」と、玄関の照明を指さすと、仕事を終えたスンナムが帰宅します。
久しぶりに向かい合う夫婦、喪失感を抱える妻・スンナムは離婚を決意。
夫・ジョンイルは家族の再生を望みますが、彼も悲しみと罪悪感を抱えていました。
後日、ジョンイルは遺族のサポートをしてくれる、支援団体の代表者と出会います。
「スホ君を想う人たちと共に、時間を過ごすんです」
もうすぐ、スホの誕生日──
息子の死を受け入れられないスンナムは、去年のスホの誕生日は娘・イェソルと二人きり。
同じ境遇の遺族は、微笑みと涙で大切な子供たちを想って時間を共にしていました。
息子・スホを想って話をして欲しいと言われても、ジョンイルは多くを話せません。
純粋な笑顔を見せるイェソルも、兄の死で傷ついていました。
水に入ることを怖がり、母・スンナムが兄を想って泣いているのも知っています。
そして、もう死んでしまった兄にだけ新しい服を買って来る母。
幼いイェソルは時に愛されていない寂しさを感じ、スンナムもイェソルの泣き声に心が押しつぶされます。
「ごめんね ママが悪かった」──
妻・スンナムに受け入れてもらえないジョンイルですが、娘・イェソルとは穏やかな時間を過ごしました。
ある晩、仕事でスンナムが遅くなり、イェソルが眠るまでそばに居たジョンイル。
そのままになっている息子・スホの部屋で、真新しいパスポートを見つけます。
韓国とベトナム、離れている母と父をスホは会わせようとしていました。
「スンナム すまない…」
「…私たちが一番つらい時、何をしてた?今さら父親ぶらないで」
息子の死は夫のせいでは無い、そう分かっているスンナム。
だけど今は、やり場のない気持ちをジョンイルにぶつける事しか出来ませんでした。
家族を支えられるよう、ゼロからやり直すジョンイル。
空港職員に懇願し、出国スタンプが押されたスホのパスポートを妻・スンナムに渡します。
穏やかな気持ちで夫婦が息子の写真を眺めていると、同じく犠牲になった同級生の話に。
遺族たちは家庭環境も様々で、補償金を貰って顔を見せなくなる者もいました。
何気なく「…補償金は貰ったのか?」と、口にしたジョンイル。
その言葉に気が触れるスンナムは「お金が目当て?」と、口論となり夫婦はすれ違います。
この時期、国内の話題は“セウォル号の生存者への学費援助が可決”。
そして、“セウォル号の被害者の親が高校の教室を占拠している”。
どれも度が過ぎると、人々から非難の声が上がっていました。
一人の少女・ウンビン(クォン・ソヒョン)。
バイトを掛け持ちし、ハンバーガー店でも働き始めた彼女はベトナムに行くと言います。
同じハンバーガー店の、バイト仲間・ソンジュン(ソン・ユビン)。
一度行った事があるベトナムの話を、ウンビンに聞かせます。
「…スホが立てた計画通りに旅をした 彼の父親がいるから一緒に行く予定で…」
ソンジュンは小中と同じ学校に通った、スホの親友でした。
スホとソンジュンが繋がっていると知ったウンビンは、居た堪れない気持ちになりその場を去ります。
「君の誕生日」最後ラストの結末は?
あの日の悲劇で、心に深い傷を負ったのは家族だけではありません。
スホの死から彼の母・スンナムを見かけても、どうして良いか分からず避けていたソンジュン。
スホが通った高校、教室で彼の席に座る少女・ウンビン。
隣に住むスホの弟分・ウチャン(タン・ジュンサン)は、幼いイェソルをスホに代わって大事にして来ました。
ベトナムから戻ったジョンイルは、ずっと仕事漬けだった事を悔やみ“スホを想ってくれる人々と時間を共に”と、願っています。
スホの誕生日が近づき、頑に心を閉ざしていたスンナムも支援団体が誕生日会を開く事を許しました。
たくさんの人が集まった、スホの誕生日会。
スホとの思い出話にみんなが笑顔になり、息子が友達に愛されていた事を実感するスンナムも胸がいっぱいになります。
「スホが一緒に居てくれると思うと心強い…」
同じように子供が犠牲になった母親は、勇敢なスホを称えました。
誰もが混乱していた船内で、スホは自分の救命胴衣を友達に譲っていたのです。
涙を流す人たちの中で、嗚咽を抑えきれない同級生がいました。
それは、スホの夢であるベトナムへ行こうとしていた少女・ウンビンです。
ウンビンもスホに命を救われた一人でした──
とても苦しくて寂しい日々を送って来たスンナムは、誕生日会で笑顔を取り戻します。
夫・ジョンイルや娘・イェソルと一緒に、前を向く勇気をくれたのはやはりスホでした。
温かい光りに照らされた家族は、スホを想って大切に日々を生きて行きます。
完。
「君の誕生日」見どころ
2014年4月16日、韓国南西部の沖合で大型客船セウォル号が沈没。
それは人災とも言われ、まさに起こるべくして起きた事故の犠牲者は300人以上。
韓国から飛び込んで来た痛ましいニュースは、日本でも連日報じられました。
本作の監督・脚本を務めたのは、イ・ジョンオン。
遺族や犠牲となった者たちを想う友人に話を聞き、その痛み悲しみに触れた彼女が心を込めて作り上げました。
描かれるのは、あくまで日常の中でふと頭に浮かぶ、心を苦しめる消す事の出来ない気持ち。
「いってらっしゃい」と見送って「おかえり」と迎えるはずのその人は帰って来ず、もう誕生日を祝ってあげられない。
生きていれば、いつかは死が訪れると分かっていても、突然その日が来るなんて…
沈み始めた船内では、生徒たちが携帯電話で家族らに連絡を取ったと当時も伝えられました。
母・スンナムは息子・スホからの電話に、気づかなかった自分を責めています。
そして父・ジョンイルも息子と過ごした日々を思い出そうにも、頭の中は真っ白。
楽しい思い出があるはずなのに、後悔ばかり浮かんでしまうのが人間なのでしょうね。
人々の悲痛な表情に胸が締め付けられ、観ているのがとっても苦しい。
それでも鑑賞して頂きたいと思う理由は、愛に溢れた映画だからです。
もう、触れる事は出来ないけど、確かに感じられる大切な人のぬくもり。
最後には、きっと胸に優しい想いが込み上げるでしょう。
韓国が誇る名優、ソル・ギョングとチョン・ドヨンの共演。
どうぞ、彼らに寄り添って、この映画が伝えたいメッセージを感じて下さい。
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