映画「移動都市/モータル・エンジン」はヒューゴ・ウィーヴィング主演、リスチャン・リヴァーズ監督の2018年の映画です。
この映画「移動都市/モータル・エンジン」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見どころについて紹介します。
移動型の都市を舞台にある少女の戦いを描くSFアドベンチャー「移動都市/モータル・エンジン」をご堪能ください。
「移動都市/モータル・エンジン」あらすじ
遥か先の未来。
かつて引き起こされた「六〇分戦争」で文明は焼失し、大地は汚染されてしまいました。
生き残った者達は巨大な駆動機関の上に都市を丸ごと乗せた「移動都市」を建設し、その上で暮らし始めます。
やがて大きな移動都市他の都市を捕獲し、取り込んで資源や住民を奪い取ってゆくようになりました。
「捕食移動都市時代」の到来です。
千年以上の昔はヨーロッパと呼ばれた大地の片隅で資源を採掘する小さな移動都市・ザルツハーゲンンに、一人の女性がいました。
彼女に名前はへスター・ショウ(ヘラ・ヒルマー)。長年、ある思いを胸に生き続けていました。
やがて、ザルツハーゲン中に警報が鳴り響き、あたりは騒然となり始めます。
巨大な捕食移動都市「ロンドン」が接近してきたのです。
「ロンドン」の操縦を指揮するのは高名な史学士(考古学者)でもあるサディアス・ヴァレンタイン(ヒューゴ・ウィーヴィング)。
街中の貴族が久しぶりの「狩り」に無邪気に熱狂する一方、ヴァレンタインは冷静にザルツハーゲンを追い詰めてゆきます。
ザルツハーゲンはサイロに貯蔵されていた資源を捨てて身軽になり、細い山の間の道を通って逃げようとしました。
しかし間に合わず、銛を何本も打ち込まれて捕獲され、ロンドンに取り込まれてしまったのでした。
操縦室からその様子を見ていたマグナス市長も満足げでした。
その頃、人込みを押しのけて道を走る一人の青年がいました。
ロンドン歴史博物館の史学士見習い トム・ナッツワーシー(ロバート・シーハン)です。
彼は今日も遅刻寸前で焦っていました。
汗だくで博物館に辿り着いたトムを待っていたのは、遅刻常習犯のトムに呆れているチャドリー・ポムロイ館長(コリン・サーモン)と、ヴァレンタインの一人娘 キャサリン(レイラ・ジョージ)でした。
「六〇分戦争」を調査しているキャサリンは、閲覧の為にトムが記録室の鍵を開けてくれるのを待っていたのです。
トムもまた六〇分戦争に興味があり、キャサリンとの話もいつしか熱を帯びてゆきました。
飛行船乗りになる夢を捨てて優秀な史学士だった両親と同じ道を歩んでいる事や、遂には量子エネルギー兵器「メデューサ」が使われた時の映像や、その残骸も隠し持っている事を明かしました。
これまでも何度も兵器の残骸を見つけた事はありましたが、工学ギルドに横取りされ続けて悔しい思いをしていたのです。
しかし、話の途中、トムを「下層出身者」と見下している同僚の史学士ハーバート・メリファントに「取り込んだ移動都市ザルツハーゲンのゴミが仕分けられる時間じゃないのか?」と横から口を挟まれ、慌てて下層のゴミ収集所に向かいました。
「今はラッシュの時間だ。間に合う訳ないですよ」
意地の悪いハーバートの言葉を聞いたキャサリンはトムの後を追いかけ、駅では身分証明書を提示してトムを順番待ちさせることなく列車に乗せてくれました。
お陰で、トムは遅れることなくゴミの収集所に辿り着く事が出来ました。
ここから壮大な冒険が始まるのですが・・・
「移動都市/モータル・エンジン」ネタバレ
その道の途中、トムは友人の修理工 ベヴィス・ポッド(ローナン・ラフテリー)と出くわします。
トムは気さくに話しかけましたが、ベヴィスはトムの横にいたキャサリンに気付き、素っ気ない態度で立ち去ってしまいました。
ゴミ収集所周辺は、ザルツハーゲンからの移民達が移動中で人込みに溢れていました。
その中には、口元を隠したヘスターも混ざっていました。
ゴミ収集所に着くや否や、トムは作業者の元に慌てて駆け寄り、手にしていたゴミを奪い取りました。
それはザルツハーゲンが資源を採掘する際に地層の中から掘り出していたオールドテク(戦争以前の技術や、その頃に製造された製品)―トースターでした。
作業者にとってはただのゴミでも、トムにとっては過去の技術を知るための発掘品だったのです。
「貴重な過去の遺産をもっと丁寧に扱ってくれよ!」
「その通りだ。こんなに状態の良いオールドテクは博物館でもお目にかかれない」
作業者に抗議するトムに話しかけてきた者がいました。
同じように貴重な発掘品を探しに来たヴァレンタインでした。
ヴァレンタインは貴重なオールドテクをいち早く見つけたトムの慧眼を褒め、自分の収穫も見せてくれました。
それはフュージョン・インバーターでした。
それを見た瞬間、トムの顔色が変わりました。
それが電子機器を制御する部品で、「メデューサ」にも使われていたからです。
「以前には僕も見つけた事がありましたが、工学ギルドに根こそぎ持ち去られました・・・」
「勿論、これは私がちゃんと処分する。奴らには渡さん」
その時、ヴァレンタインの背後に忍び寄る者がいました。
「これは母の恨み。パンドラ・ショウの復讐だ。思い知れ!」
ナイフを手にしたヘスターでした。
口元に布が取れ、頬の大きな傷が露になっていました。
振り向いたヴァレンタインの腹部にナイフを突き立て、更にとどめを刺そうとしましたが、トムに止められて失敗しました。
警官隊から逃れたヘスターは最下層で解体中だったザルツハーゲンの中に逃げこみました。
トムも後を追い、崩壊寸前の移動都市の中を駆け抜けてヘスターに追い付きました。
その時、床が抜け落ち、ヘスターは排気口に落ちかけました。
慌ててトムが手を伸ばし、ヘスターの腕を掴みましたが「あの男がかつて何をしたか知っているか?ヘスター・ショウの事を聞いてみろ」と言い残し、自らトムの腕を振りほどいて落ちてゆきました。
そこへ、ヴァレンタインがやってきました。怪我は軽傷だったのです。
「あの暗殺者は妙な事を言っていました。彼女の母親を貴方が殺したと・・・」
「・・・そうか、余計な事を知ってしまったな」
おもむろにヴァレンタインはトムを突き飛ばしました。
訳も分からず、トムも排気口に落ちてゆきました。
その直後にキャサリンがやって来ましたが、ヴァレンタインはただ「暗殺者と一緒にトムも落ちてしまった。助けられなかった・・・」とショックを受けたような表情を装っていました。
突然現れたヘスターの事が気になったキャサリンは彼女の正体や目的について問いただしましたが、ヴァレンタインは「何も知らない」と言うだけでした。
暫く後、排気口から落ちたヘスターとトムは地表(アウトランズ)で意識を取り戻しました。
「6ヶ月!6ヶ月もかけてロンドンに入り込んだのに、もう少しだったのに、貴方のせいでヴァレンタインのへの復讐に失敗してしまったわ!」
憤りを隠せず、その場から立ち去ろうとするヘスターに「せめて交易都市まで連れて行ってくれ!」と、トムは必死で追いすがりました。
同じ頃、ヴァレンタインは市長から、無理をしてユーラシア大陸に渡ったにも拘らず大した成果を上げられていない事を責められていました。
「どこの誰とも分からない男を史学ギルドの長にまで抜擢した恩を忘れるな」
「承知しております。もう少し時間をください」
焦りの色を隠せないヴァレンタインは、密かにある施設に向かいました。
そこでは、世界を崩壊させた量子エネルギー兵器「メデューサ」復活の研究が進行中だったのです。
昼間、ゴミの中から見つけたフュージョン・インバーターを研究中の科学者に渡し、早くアイトソープを安定させ、メデューサを復活させるよう急かしました。
科学者はヴァレンタインがヘクター・ショウに襲われた事や、彼女が何故ヴァレンタインを狙うかもを知っていました。
更に、シャークムーア刑務所にヘクターを執拗に探している者が収監されている、と教えてくれました。
それは「放浪民戦争(ノマド・ウォー)」で残虐行為の限りと尽くした「ラザロ旅団」の「復活者」と呼ばれるサイボーグ兵士 シュライクでした。
ただひたすらヘスターを探していた大量破破壊マシーン シュライクは、偶然辿り着いた集落の住民を皆殺しにして刑務所に収監されていたのです。
ヘスターへの異常な執着を確認したヴァレンタインは、牢を破壊してシュライクを開放してやりました。
その頃、外(アウトランド)に放り出されたトムとヘスターは、当てもなく荒野を彷徨っていました。
賞味期限が2118年(トム達の時代から千年以上前!)の保存食を食べ、満足な飲み水さえなく、地面を掘って出た泥水を飲むヘスターにトムは嫌悪感を露わにします。
取り敢えず、交易都市を目指していた二人でしたが、夜中、ヘスターが横を見ると寝ていた筈のトムがいません。
真夜中、移動都市のライトを見かけたトムは、何の迷いもなく「ここだ!助けてくれ!」と大声を上げて自分の位置を報せていたのです。
真っ青になりながら駆け寄って来たヘスターがトムを地面に問答無用で組み伏せるや否や、近づいてきていた移動都市から銛が次々と発射されました。
外界の事に疎いトムは、放浪者を狩って暮らす「スカベンジャー」を呼び寄せてしまったのです。
スカベンジャーの銛を避けて逃げ回っていたトムとヘスターでしたが、やがて逃げ切れなくなり、ヘスターは足を貫かれて動けなくなってしまいます。
何とか岩陰に逃げ込んだトムでしたが、そこでヘスターを見失ってしまいます。
スカベンジャーの移動都市が近づいて来て、あわや轢かれようとした時、トムは穴の中に引きずり込まれてしまいます。
モグラの様に地中を進む車に乗った夫婦がトムとヘスターを助けたのでした。
部屋に案内された二人は、安全な場所が見つかったとひとまず安堵します。
「・・・みんな、僕のせいだな。ゴメン・・・」トムが謝ると、「・・・母が死んだ時、私は8歳だった。母は考古学者だったわ・・・」ヘスターは自分の生い立ちを話し始めました。
ヘスターは考古学者だった母パンドラに連れられ、世界中を旅していました。
その時、時々やって来ていたたのがヴァレンタインでした。
同じ考古学者として協力し合っていたヴァレンタインとパンドラでしたが、ある日、パンドラが「失われたアメリカ大陸」で何かを発見した時から、二人はぶつかり合いだしたのです。
そしてある日、強引に遺物を奪おうとしたヴァレンタインを止めようとしてパンドラは殺され、ヘスターも頬に大きな切り傷をつけられ、パンドラに託された瞳の形をしたペンダントだけを持って逃げたのでした。
「ヴァレンタインがそこまでこだわった遺物って何だったの?」
「分からないわ…」
疲れていたのか、二人はやがて眠りに落ちました。
朝、目が覚めたトムは地中走行車が進路を変えた事に気が付きました。
異変を感じ取り、部屋から出ようとしました鍵が掛かっていて外には出られませんでした。
手持ちのナイフで床をこじ開け、飛びおりて逃げようとしましたが、足をケガしていたヘスターは無理だと言って行こうとはしませんでした。
トムはヘスターを置いてゆく事は出来ず、結局その場に留まりました。
「アンタは馬鹿よ。逃げられたのに。私だったら逃げてたわ!」
礼も言わないヘスターに、トムは心底呆れました。
やがて荒野の中にある人身売買市「ラストオーダー市場」に到着すると、地中走行車の夫婦は部屋に閉じこめていた者達を奴隷商人に引き渡してゆきました。
夫婦はそうやって金を稼いでいたのです。
荒野で捕らえられ、引き渡された人々はオークションにかけられ、次々と売られてゆきました。
やがてヘスターの番になりましたが、顔の傷のお陰でソーセージ製造業者に安値で買い叩かれそうになりました。
その時、人込みの中から高値を叫んだ者がいました。
驚いた奴隷商人は声の主を見つけて、嫌な笑いを浮かべました。
「普通なら喜んで引き渡すところだが、今回は事情が違う。この女を50キルケでアンタに売るより、アンタを『ロンドン』のヴァレンタインに引き渡して50万キルケもらった方が得だからな」
声の主は移動都市へのテロ行為で賞金首とアナ・ファン(ジヘ)だったのです。
奴隷商人の腹黒い言い分を黙って聞いていたアナは、話が終わった商人に散弾銃を突きつけました。
「じゃぁ、これでも喰らいな」
銃声が響き、商人は吹っ飛びました。
会場は大混乱となり、ヘスターとトムは隙をついて逃げだしました。
外へ出た二人の前に、立ちふさがる者がありました。シュライクです。
アナや、彼女に賛同する仲間達はヘスターを守ろうとしますが、シュライクに倒されてゆきます。
更に、トムがシュライクに攻撃しようとすると、ヘスターがそれを阻止しました。
トム達はアナの飛行船に乗り込み、逃げようとしますが、トムがロープを登っている最中にシュライクが端を摘み、飛行船を引き戻そうとし始めました。
アナは、既に機内にいたヘスターにナイフを渡し、トムを見捨ててロープを切るように言います。
しかし、ヘスターはナイフをトムに投げ渡し、受け取ったトムはロープを切ってシュライクから逃れました。
機内に入った途端、トムとヘスターはアナの仲間達に囲まれました。
ヘスターは身構えましたが、アナは味方でした。
アナはヘスターの母パンドラと知り合いで、彼女が死んだと知って以来ヘスターを探していたのです。
「ずっと死んでるんじゃないかと思っていたよ。8歳の少女が、どうやってアウトランドで生きてゆけるものかって不思議だった。でも、さっきその理由が分かった。」
そこでトムも事態を理解しました。
「ヘスター、君はあのシュライクに育てられたのか?」
彼らが想像した通り、母親を殺されたヘスターは、逃げて気を失っている時にシュライクに発見され、連れて帰って育てられたのです。
シュライクは壊れた人形やガラクタなど、壊れたものを集め続けていました。
ヘスターの顔の傷を見たシュライクは、彼女も傷モノだと思って連れてきたのでした。
シュライクに助けられてからも、ヘスターは母を殺された時の記憶に苦しんでいました。
そんな姿を見続けていたシュライクは、ある日ヘスターに、記憶を消して一旦体を「殺し」、機械仕掛けにして蘇り、自分と同じ復活者になるよう言います。
ヘスターも一度はそれに賛同しました。
しかし、移動都市「ロンドン」が海を渡ってヨーロッパにやって来たという話を知り、ヘスターは復讐を遂げようとシュライクの元から去ったのでした。
約束を破られて怒り狂ったシュライクは、一心不乱にヘスターを探し回っていたのです。
その頃、キャサリンはベヴィスから「ヴァレンタインがトムを突き落とすのを見た」と告白され、父親が裏で何か企んでいるらしいと気付き出していました。
そして、ヴァレンタインが隠している事を探り出そうと、彼が密かに出入りしている大聖堂の中に忍び込もうとします。
しかし、真正面からは無理です。
キャサリンが目をつけたのは博物館の奥に隠されている、大聖堂まで続く長い階段「猫忍び」でした。
行ってみると、博物館内は荒らされ、館長は傷だらけになっていました。
トムが隠し持っていた古代兵器の部品を狙って、工学ギルドがやって来てあちこち探し回ったのです。
それでも館長は誰もが忘れ去ってしまった「猫忍び」に案内してくれました。
館長もまた、ヴァレンタインたちが何か恐ろしい事を企んでいると薄々感じていたのです。
丁度その頃、ヴァレンタインは市長に無断でロンドンの進路を変えていました。
目指すは強固な「盾の壁」に守られた静止都市 シャングオです。
アナに連れられ、トムとヘスターは空中都市「エアヘイブン」にやって来ました。
そこにはアナの仲間であるキャプテン コーラ(レジ=ジーン・ペイジ)など、腕利きの飛行船乗りが集まっていました。
彼等はロンドンがシャングオに進路を向けた事から、何かが起ころうとしていると察知していました。
そして、ヴァレンタインがヘスターの母 パンドラから何を奪ったかを聞き出そうとしてきました。
子供だったヘスターは母親が何を見つけたかをはっきりとは理解していませんでした。
しかし、話を聞いていたトムは、パンドラが見つけたものは量子エネルギー兵器の制御装置である事を突き止めます。
更に、ヴァレンタインがフュージョン・インバーター(兵器を作るのに必要な部品)を集めている事や、ロンドンが進路を急に変えた事から、シャングオへの侵攻が間近である事を察知しました。
ヴァレンタインの野望を食い止める為、アナ達はシャングオへ向かう事にしました。
その時、急に辺りの灯りが消えました。
「これは、陽動作戦・・・混乱に乗じて襲い掛かってくる!」
ヘスターが気付いたのと同時に、シュライクが現れました。
周りいた者達を次々と倒して、エアヘイブンも破壊してヘスターを奪い去ろうとするシュライク。
遂には邪魔をするトムを締め上げようとしますが、ヘスターが必死に止めました。
その様子からシュライクは、ヘスターがトムに特別な感情を抱いていると気付きます。
「ヘスター・・・・この男を・・・・愛しているのか?」
ヘスターは、戸惑いながらも頷きました。
その直後、体中に受けた攻撃のせいでシュライクの体は壊れ始め、思うように動かなくなります。
もう長くないと悟ったシュライクは、ヘスターに「お前を約束の縛りから解く・・・そして、これはお前のものだ・・・」パンドラの形見だった首飾りを返し、その後すぐにシュライクは動かなくなりました。
エアヘイブンが焼け落ちる寸前、トムやヘスターはアナの飛行船で逃げ出しました。
「猫忍び」を通って大聖堂に忍び込んだキャサリンは、中でヴァレンタインが巨大な量子エネルギー兵器 メデューサを建造していたと知ってしまいます。
そこへ、知らない間に都市の進路が変わっている事に憤慨した市長がやって来ました。
そして、ヴァレンタインが作り上げたメデューサを目の当たりにして、すぐに計画を中止して進路を戻すように命令します。
しかし、周りの者達の中に市長に味方する者は一人もおらず、殺されてしまいます。
影から見ていたキャサリンは、父親の裏の顔を知って愕然としました。
一旦はその場から逃げ出しましたが、このまま見過ごす事は出来ないと思い直します。
そしてベヴィスの制止を振り切って再び大聖堂に向かったのでした。
夜が明け、ロンドンの主導権を握ったヴァレンタインは街中にシャングオへの侵攻を宣言しました。
街は興奮と熱気に包まれました。
同じ頃、シャングオに辿り着いたトムやヘスターは「盾の壁」を守る守護艦隊と合流した後、最高指揮官であるクワン提督(キー・チャン)に面会しました。
アナはロンドンへの先制攻撃を提督に申し出ました。
それを聞いたトムは「ロンドンには罪のない市民も大勢いるんだ!」と攻撃をやめさせようとしますが「我々も自国民を守らなくてはいけない」と、却下されます。
シャングオ側の準備が進む中、絶望したトムは何処かに姿を消しました。
そんな中、ロンドンがシャングオの近くまでやって来ました。
「メデューサ用意!」
ヴァレンタインの命令により、大聖堂の屋根が開き、中からメデューサが顔を出しました。
「発射!」
メデューサの攻撃をいち早く察知したアナが全員に壁から離れるよう命じた直後、荷電粒子が盾の壁を直撃し、壁の一部は吹き飛び、待機していた艦隊も壊滅状態となりました。
想像を超えた攻撃の凄まじさにシャングオの人々やアナ達は一気に戦意喪失してしまいました。
そんな時、ヘスターは母の残してくれたペンダントの中にメデューサの攻撃を中止させ、自爆させるコードが入ったクラッシュドライブが隠されていた事に気付きます。
「まだ手はある。母さんの残してくれたクラッシュドライブを使えばメデューサを破壊できる!」
士気を取り戻したアナ達は、残った戦力をかき集め、ロンドンへの特攻に望みを賭ける事にしました。
トムもまた、戦闘に参加すると決意してアナの飛行機に乗り込みました。
アナ達の部隊が飛び立った直後、メデューサから二回目の攻撃が放たれ、壁は更に壊されました。
爆風でアナ達が操縦する機は大揺れしましたが、何とか持ちこたえてロンドンに辿り着きました。
キャプテン・コーラ達がロンドンの対空砲を引き付けている間に、アナ、トム、ヘスターは大聖堂に向かいました。
大聖堂の屋根に飛行機を横づけにして、アナは操縦をトムに任せて大聖堂の中に侵入しました。
メデューサがある部屋に行きつく前にヴァレンタインを見つけたアナは直接斬りかかりましたが、揉み合っている内に逆に刺されてしまいます。
しかし、実はそれも陽動でした。
ヴァレンタインがアナと戦っている隙にヘスターがメデューサの制御装置に向かっていたのです。
ヘスターはクラッシュドライブを使って攻撃を強制終了させ、メデューサを自爆させて三回目の攻撃を食い止めました。
メデューサを失って茫然自失のヴァレンタインの前に立ちはだかった者がいました。
キャサリンです。
「キャサリン、こんなところで何をしているんだ?危ないから、すぐに逃げるんだ」
「何から?メデューサはもう無い。危険な事なんて何もないわ」
「何も分かっていないんだな。壁はまもなく崩れ落ちるんだ」
その時、操縦室の方から悲鳴が響き渡りました。
ヴァレンタインの部下が操縦室にいた者達を皆殺しにし、ブレーキやエンジンを止める制御装置を壊し、盾の壁に向けて暴走させたのです。
驚いたキャサリンは操縦室に向かい、その隙にヴァレンタインは待機していた飛行機に乗り込みました。
キャサリンが必至に暴走を止めようとしていると、トムから無線が入りました。
ロンドンが暴走していて止める術がないと知らされたトムは、一か八か、キャサリンに頼みごとをしました。
ロンドンから飛び立って逃げようとしていたヴァレンタインの前に、ヘスターが立ちはだかりました。
「ヴァレンタイン、もうアンタを何処へも行かせない。ここで殺してやる」
ヘスターが銃を突きつけても、ヴァレンタインは笑っていました。
「どんなに邪魔をしても決してあきらめない。やはり、血は争えないな・・・母親から聞いていないのか?本当は気付いていたんだろう?」
ヘスターの脳裏に、愛おし気に抱き合うパンドラとヴァレンタインの姿がフラッシュバックしました。
ヘスターの父親はヴァレンタインだったのです。
動揺したヘスターの一瞬のスキをついて、ヴァレンタインはヘスターから銃を奪い取りました。
トムがキャサリンに頼んだのは、移動都市を捕獲する際の取り込み口を開放する事でした。
キャサリンが指示通りに取り込み口を全開にすると、トムは飛行機のままでそこに突っ込んでゆき、最深部にあるエンジンに銃弾を撃ち込んで破壊しました。
「移動都市/モータル・エンジン」最後ラストの結末は?
ヴァレンタインとヘスターは飛行機の上でもみ合っていました。
そして、遂にヘスターはがヴァレンタインを追い詰めました。
「私を殺したいのか?道連れにしたいのか?」
開き直るヴァレンタインの顔を暫く眺めた後、ヘスターは「・・・いいえ、私は生きる」と言って、飛び降りました。
そこにはロンドンから脱出したトムの飛行機がやって来ていました。
ヘスターを乗り移らせたトムは、一旦ヴァレンタインの機から離れ「歴史に埋もれろ!」とミサイルを発射しました。
ミサイルに当たったヴァレンタインの機は大破し、墜落しました。
荒れ地に墜落したものの、ヴァレンタインはかろうじて生きていました。
ヴァレンタインは急いで機内から出ようとしましたが、脱出するより早く、エンジンを失ったものの未だ進み続けていたロンドンに踏み潰されてしまいました。
その直後、ロンドンは山にぶつかって停止しました。
ロンドンから逃れた人々は、シャングオに向かって歩いていました。
やがて、彼らの前にクワン総督と警備兵達が現れました。
武器を持ち、警戒している様子でした。
先頭にキャサリンが進み出ると、クワン総督は兵達に武器を収めさせ、ロンドン市民を迎える意を示しました。
キャサリンをはじめ、ロンドン市民達は安堵の表情を浮かべたのでした。
飛び続けていた飛行機で、ヘスターが「これからどうするの?」とトムに尋ねました。
「世界を回るよ。風に任せて」
「・・・私も一緒に行くわ」
その答えにトムはにっこり笑って、二人は抱き合ったのでした。
THE END
「移動都市/モータル・エンジン」見どころ
現文明が喪失した後の、荒廃した世界を描いたSF作品です。
この作品は随所に「価値観の違い」「立場が違うと物の見方が変わる」という思いが込められていたように感じました。
トムは、現代なら何てことない電化製品であるトースターを見つけて大興奮していました。
博物館でも「ミニオン」を古代アメリカの神として崇めていたと誤解していました。
ヴァレンタインはロクに会った事もないシャングオの人々を「資源を独占する野蛮人」としか思っていませんでした。
だからこそ、何の躊躇もなく壁を壊して侵攻し『狩り尽くしてやるぞ!』と宣言したのでしょう。
(ロンドンの住人がほぼヨーロッパ系、シャングオの人々がアジアやインドなどの雑多な人種で構成されていた事も意味があるように思えました)
また、ヴァレンタインの私生活においても、キャサリンにとっては偉大な政治家・歴史学者でしたが、ヘスターにとっては母親の仇で、陰謀を企てて他国を侵略する極悪人でした。
その人物像も終盤で覆され、キャサリンは父親の裏の顔を知り、ヘスターは憎い仇だと思っていたヴァレンタインはかつて母が愛した人で、自分の実の父親であったと知って共にショックを受けます。
その他にも、極悪人と思っていたアナ・ファンが、実は定住都市を守ろうとする英雄の一員であったり、親切に人狩りから救ってくれたと思った夫婦が、実は彼ら自身が奴隷商人に助けた人々を売り渡していたり、人間の醜悪な部分を集めて作られたと思われていた「復活者」シュライクが愛情をもってヘスターを育てていたと分かったり、先の読めないスリリングな展開になっていました。(若くても顔に傷のあるへスターより、年老いていても肌が白く、シミや傷のない老婆の方が奴隷オークションで高く売られようとしていたのも興味深い点でした)
原作小説「移動都市」を読んでいないせいか、やや展開が早く、用語の説明がなく話が進んだり、都合がよすぎると違和感を覚えたりする部分もありました。
しかし、最後にロンドンとシャングオの飛行艦隊が交戦する場面や、メデューサ発射の場面は迫力があり見応え充分でした。
それと共に、本などで得た知識や狭い視野・考え方で人物や物事を判断する事の恐ろしさや愚かさも描いているようで、自分の価値観について考えさせられる作品でもあったように思います。
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