「トゥルーノース」ネタバレ!あらすじや最後ラストの結末と見どころ

映画「トゥルーノース」ネタバレ あらすじ
アニメ

映画「トゥルーノース」は清水ハン栄治監督の2020年の3Dアニメーション作品です。

この映画「トゥルーノース」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見どころについて紹介します。

北朝鮮の強制収容所で生きる家族の姿を描く「トゥルーノース」をご堪能ください。

 

「トゥルーノース」あらすじ

カナダ・バンクーバー

観客の拍手に迎えられる一人のアジア人男性は、TED(世界的な講演会)のステージに立つと、スピーチを始めます。

「12年前、私は母国から亡命しました……」

男性が口にした母国は、朝鮮民主主義人民共和国。

観客の誰もが“家族の物語”に、じっくりと聞き入ります──

 
1995年4月15日、平壌(ピョンヤン)

太陽節(最高指導者・金日成(キム・イルソン)の誕生日)を、盛大に祝う人々。

その祝典には、パク・ヨハンという少年と妹・ミヒも参加し、無邪気に笑っていました。

平壌生まれの兄妹は、父・ヨンジンと母・ユリと四人暮らし。

ある晩、ミヒが気になった事を聞いてみると、父の顔色が変わります。

「お父さん、最近よく来る背広のおじさん達を知ってる?」

 
ヨンジンの家に集まった親類は、誰もが深刻な顔をしていました。

部屋に飾られる日本で撮った写真、そして日本に住む知人への連絡は危険だと言う会話。

ほどなくしてヨンジンは行方不明となり、家に上がり込む当局幹部の男が「あなたの夫は、国家の党に対して深刻な罪を犯しました」と・・・

仏頂面の男は連れ立った看守に指示、ユリと子供たちは拘束されます。

訳が分からないままトラックの荷台に小さく座る三人は、同じ境遇の人々と収監先の政治犯強制収容所へ。

ここで彼らは、人間の暮らしとは程遠い冷酷で無慈悲な日々を送る事になります──

 

「トゥルーノース」ネタバレ

僅かな荷物を持った母・ユリ、息子・ヨハンと娘・ミヒ。

小さな窓が一つ、蜘蛛の巣だらけの粗末な小屋がこれからの居住空間です。

朝から晩まで、年寄りも幼い子供も関係なく過酷な肉体労働を強いられ、作業ノルマを達成しなければ連帯責任で罰を受ける。

炭坑で働くヨハンは遅い帰りとなり、その顔は殴られたように腫れ上がっていました。

 
収監者が恐れるのは、“完全統制区域”です。

そこは、反逆行為を犯した者が連行され、死が待ち受ける場所でした。

収容所の最高権力者であるハン所長に、睨まれれば一巻の終わり。

ただし、密告者となって気に入られた収監者には食べ物が与えられます。

日頃から十分な食事にありつけない収監者は、他人を売って少しでも空腹を紛らわすのでした。

 
収監者でありながら作業班の責任者となり、収監者の監視役をしているドンス。

今の地位を手放したくない彼もまた、ハン所長に告げ口。

完全統制区域に連行される収監者が助けを求めても、巻き添えを食いたくないと誰もが背を向けます。

ヨハンたち、子供の間でも悲しい差別はありました。

土埃にまみれて働くヨハンを、日本から来たと罵るのは白シャツを着た幹部の息子です。

侮辱される意味が分からず、父親に不信感を抱くヨハン。

母・ユリは、これまで通り健やかにと願うのでした。

 
ある晩、ヨハンの母・ユリと妹・ミヒは、公開処刑と称して母親を目の前で射殺された少年・インスを連れて帰ります。

たった一人の家族である母親を亡くし、孤児になったインス。

そのショックで吃音(きつおん)を発症してしまいますが、ユリやミヒの優しさに支えられ懸命に生きます。

「こ…こ…こんばんは」と、どもるインスに、最初は無関心だったヨハン。

しかし、心を開いた彼らは過酷な収容所で友情を育み、9年の歳月が経ちました──

相変わらず収容所に収監される者は後を絶たず、強いられる過酷な労働。

それでも、ヨハンとインスは身長も伸び顔つきも青年に、妹・ミヒも美しい女性に成長します。

 
季節は、寒さが厳しい真冬。

ただでさえ食事は少ないのに、農作物が収穫できないこの時期は衰弱する収監者が増えました。

看守たちの目を盗んで食料探しをするヨハンとインスは、年寄りの収監者に出くわします。

彼は体を壊した娘のために、飼育されるウサギを持ち出しました。

この時は、年寄りを見逃したヨハンですが“家族を守るため”密告者へと変貌します。

ウサギを盗んだ事がバレて、連行される年寄りの収監者。

「信じてたのに、何で裏切ったんだ?」と、ヨハンに憎悪が込み上げる年寄りの妻。

監視役へと立場を上げたヨハンは、無表情で冷血な態度を取り始めます。

 
優しかったヨハンが変わってしまい、戸惑うばかりの妹・ミヒ、そしてインス。

夫と娘を失った老婆はヨハン殺害を考え、その犠牲となったのは母・ユリでした。

作業中に老婆に刺されたユリは、収容所内の設備ではどうにもならず死を待つだけ。

そんな中でもユリは、深い悲しみに居る老婆の気持ちを想いヨハンを諭します。

 
母の死から数日後、ヨハンは共に生きる収監者と過ごし、元の優しい心を取り戻しました。

言葉がどもっていたインスも、気づけば滑らかな喋り方になっています。

苦しい環境にある事は変わらない収監者ですが、その心が一つになっていました。

そして、ヨハンの妹・ミヒはインスに恋心を抱き、彼もまたミヒに想いを寄せます。

しかし、その様子に眉をひそめるのは看守・リーで、彼はこれまでもミヒだけは守って来ました。

どんなに好意を示しても、受け入れてはくれないミヒ。

堪りかねたリーは力尽くで犯し、ボロボロになって帰ったミヒを見たインスはリーを襲撃。

その後、看守に捕まったインスは、死が待つ完全統制区域に送られました。

長い黒髪を短く切り落としたミヒに突き付けられるのは、リーの子供を授かった現実です。

 
ミヒと二人で、脱北する決意を固めたヨハン。

炭坑で使用するトロッコの底板を外すと、二人分の身を隠せるスペースがありました。

そして、少しずつ光が見え始めたヨハンとミヒの前に、生き残ったインスが帰って来ます。

更に、獄中にヨハンの父親が居たと言うインスは、託されたメッセージを伝えました。

「生きろ 心はいつも一緒だ 愛している……」

 

「トゥルーノース」最後ラストの結末は?

4月15日、太陽節で収容所内も穏やかな空気が流れ、ヨハンたちは脱北計画を実行します。

突然、インスとミヒに“互いを愛しているか”尋ねるヨハン。

頬を赤らめる二人を祝福するヨハンは、幸せそうでした。

毒薬を手にする彼らは祝典の最中、看守の目を盗んで炭坑で落ち合う約束を交わします。

 
険しい顔をした数名の軍将官を迎える、ハン所長の挨拶が始まりました。

「自己批判の機会をあたえる」そう言って収監者に懺悔を促すと、ヨハンが名乗り出ます。

壇上にあがるヨハンが妹・ミヒへの感謝を口にすると、彼女は兄の想いに気づきました。

「私達だけで、行けってことかも…」

 
そして、ハン所長を振り切り軍将官に報告を始めるヨハン。

その内容は、国に忠誠であるべきはずの収容所内の看守たちが、南朝鮮の歌を愛好していると言うもの。

すると、収監者たちはヨハンを救うべく立ち上がり、騒然となる会場からミヒとインスが抜け出します。

途中、看守のリーに遭遇し毒薬を飲もうとするミヒは、インスに守られ危機を脱しました。

 
かつては、優しい青年だったリー。

しかし、いつの間にか人倫の道を踏み外していた自分に呆然とします。

どんなに過酷な収容所暮らしでも、心を失わなかったミヒに思い知らされるリーは、二人を見逃しました。

ミヒとインスは、炭坑のトロッコへと急ぎます──

 
TEDのステージで“家族の物語”を話しているのは、インスです。

二人はあの日、ヨハンが来るのを待っていましたが、彼は来ませんでした。

「ヨハンは知っていた……トロッコには二人しか乗れない事を」

救われた命を大切に生きるインス、そして彼を見守るミヒの隣には子供が居ました。

THE END

 

「トゥルーノース」見どころ

登場する人々は3Dアニメーションで描かれていますが、立体紙模型のような柔らかな折り目があります。

時として、人々の顔に浮かび上がる陰影。

収監者には絶望、そして彼らを監視して容易く命を奪う権力者や看守は冷血に映るかもしれません。

全編を通して笑うといった場面は少なく、乏しい表情。

しかし、人間としての尊厳を失わず支え合う主人公たちの姿を見た時、温かみある素材感のアニメーションに心は救われるでしょう。

 
北朝鮮にある、政治犯強制収容所で生きる者たちを描いた本作。

本編は僅か93分ですが、私は鑑賞前から長く感じるんだろうな…と想像していました。

実際、重いものが全身にズッシリ圧し掛かって、鑑賞後は深いため息を吐きました。

それでも、鑑賞して良かったと思える作品です。

 
冒頭から見入った私の目頭が最初に熱くなったのは、主人公であるヨハンに対する父親・ヨンジンの想いでした。

「強くなれ 母さんと妹を守れないぞ」と、ヨハンにだけ厳しい父親。

まだ小学生のヨハンは、父親の真意を理解しないまま「分かりました」と返事します。

父親とヨハンの間には張り詰めた空気が流れますが、もちろん嫌いだからじゃありません。

いわゆる“在日朝鮮人の帰還事業(1959~84年)”で日本から北朝鮮に帰国した父親は、日常的に当局の監視下にあったようです。

ぐっすり眠るヨハンを、愛おしそうに見つめる父親。

どれほど、家族との平穏な暮らしを望んでいただろう……

そして、その望みは絶望の淵に居る皆が抱いているのだと思うと、胸が締め付けられます。

 
ヨハンたち家族に、暗雲が立ち込めるのは本編開始から8分。

玄関ドアを荒々しく叩く音、やって来たのは家族を強制収容所に連行する看守たちでした。

淡々と家宅捜索を始める看守の中には、あのリーの姿もあります。

政治犯とされてしまった父親、それは間違いだと訴える母親・ユリ。

怖がる妹・ミヒを守るヨハンに近づくリーは「怖がらないで」と、落ち着かせます。

リーは決して高圧的では無く、あくまで“仕事”をしている青年。

ここから数年、看守の立場にあるリーに芽生える心の変化も、注視してみて下さい。

 
強制収容所の高く重い扉が開いて、ヨハンたちが目にしたのは“ゴミ扱い”される痩せ細った収監者。

同じ収監者でも、監視役の地位を得たドンスは顔色も良く腕力もあります。

しかし、当初受けた“看守の手先”という印象は、物語が進む事で変わってくるでしょう。

ヨハン、そして看守のリーやドンスを通して、“自分ならここでの暮らしでどうなってしまうだろうか?”

そう自問する方も、多いかもしれませんね。

何をするにも許可が必要、過酷な労働を強いられる収監者が得られる食事は微々たるもの。

そんな中でも、希望を捨てない母・ユリや妹・ミヒの姿が胸を打ちます。

 
皆が寝静まった夜、脱北者を知らせる、けたたましいサイレンが鳴り響きます。

身柄を拘束された彼らに待ち受けるのは、残酷な拷問そして処刑だと。

大人たちだけで無く、子供たちにも確実に存在する偏見と差別。

理不尽な仕打ちに心を痛めるヨハンと、母親・ユリがぶつかるシーンもとても辛いです。

そして、その直後に描かれる惨たらしい出来事は、悔しくて堪りません。

強制収容所の最高権力者であるハン所長が、収監者を集めて始めたのは公開処刑。

「お母さん!」「インス!」と呼び合う親子の姿、銃を構える看守のリー。

あまりにも不条理な死が息苦しくて、全身が強張ってしまいます。

 
それでも、ここまで本編開始から30分も経っていないんです。

その後も衝撃を受けるシーンは続きますが、本作は誰の命も尊いのだと言う事も教えてくれます。

ささやかな希望の光だった、母・ユリの死。

その悲劇は収容所が生んだ負の連鎖で、ユリは老婆の過ちを咎めませんでした。

迫る母の死に悔しさと怒りを抱えるヨハンに手を差し伸べるユリ、そして妹・ミヒの流す悲しいけど温かい涙。

母の死後、兄妹とインスは衰弱する収監者を看病し、その死を悼みます。

ある女性の最期、ミヒは彼女のために童謡『赤とんぼ』を歌って旅立ちを見送ります。

もちろん悲しみに包まれるシーンですが、人々が寄り添い想い合う姿はとても温かいです。

 
本作も残り30分となった頃、ほんの少し緩んだ気持ちがミヒに起きた悲劇によって再びギュッと締め付けられます。

更に、脱北計画を進める中で、ヨハンを手助けする男性が口にする言葉も重いです。

二人しか乗れないトロッコに、男性は「妻と子供がいる 残しては行けない」と。

もしも、男性が脱北すれば、家族の命は奪われてしまうのでしょう。

ヨハンたち家族も陥った、このような“連帯責任”の恐怖は、随所で印象深く描かれます。

 
凄惨な光景ばかりが多い本作でも、ミヒが魅せる表情に私は胸が震える感動を覚えました。

特に好きなのは、インスが完全統制区域から生還したシーン。

フッと微笑むインスにミヒは嬉しさと同時に、短くなった髪を気にして照れるんです。

逞しく生きるミヒの仕草に少女の愛らしさを感じ、頬を染める純愛はクライマックスに向けて光を与えてくれます。

 
本作を締めくくる場面は、雪が吹き荒ぶ完全統制区域。

生きる希望を失いかけた収監者に、手を差し伸べ変顔をして笑わせるのはヨハン。

そう言えば子供の頃のヨハンは、変顔が得意だったと思い出しました。

そして“優しい彼のままで生きているんだ”と、胸がいっぱいになりました。

 
10年という長い時間をかけて完成に至った『トゥルーノース』は、世界が注目。

在日コリアン4世である監督・清水ハン栄治が、凄まじい熱量を込めて描いた現実を目にした、あなたの胸に湧き上がる想いは?

衝撃的な内容ではあるものの、心に留めて置くべき映画として紹介させて頂きました。

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