映画「おかあさんの木」は、鈴木京香主演、磯村一路監督の2015年の映画です。
この映画「おかあさんの木」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
出征した息子たちの無事を祈る母の姿を描く「おかあさんの木」をご堪能ください。
「おかあさんの木」あらすじ
現代―
長野県のとある場所に7本の桐の木が植えられています。
その場所が区画整理の対象になり、担当者が土地の持ち主である老婆 サユリ(奈良岡朋子)に許可を取りにやって来ました。
しかし、サユリは「あの木は切ってはならん」と頑なに拒みました。
そして、あの木にまつわる話を始めたのです。
それはある女性とその子供たちの悲しい話でした・・・
「おかあさんの木」ネタバレ
大正4年。
長野の片田舎にある郵便局に勤める田村謙次郎(平岳大)は、同じ村のミツ(鈴木京香)に恋心を抱きます。
そして、字が読めないミツに自分が書いた恋文を読んで気持ちを伝えました。
ミツも謙次郎の気持ちを受け入れ、二人は夫婦になりました。
二人は仲睦まじく暮らし、ミツは次々と子供を産んで一郎・二郎・三郎・四郎・五郎・六郎の6人の息子に囲まれて暮らしていました。〔6番目の息子・誠は、子供のいない姉夫婦に養子に出していました〕。
謙次郎の同僚で友人の坂井昌平(田辺誠一)にはサユリ(志田未来)と言う娘がおり、彼女は密かに五郎(石井貴就)に思いを寄せていました。
謙二郎と昌平もその気持ちに薄々気が付いており「将来は夫婦かな」と冗談を言って笑ったりしていました。
しかし、悲劇は突然にやって来ました。
謙次郎が仕事中、突然の心臓発作で亡くなってしまいます。
ミツは亡き夫に代わって畑を耕して子供たちを育てますが、時には寂しくなることもありました。
そんな時にミツを慰め、弟たちの面倒をみて支えてくれたのは一郎(細山田隆人)や二郎(三浦貴大)でした。
そして、時代は戦争に向かって突き進みます。
貧しいながらも平和に暮らしていたミツ達の家にもその影は忍び寄って来ていました。
昭和11年、一郎が徴兵されます。
出征する一郎を見送ったミツは、息子の無事を祈って桐の苗木を庭に植えました。
やがて、二郎や三郎も兵役検査を受け、次郎は甲種、視力の悪い三郎(大鶴佐助)は乙種合格となりました。
お国の為に役に立つ事が出来ないと三郎は嘆きましたが、ミツはせめて一人だけでも傍にいてくれるのは嬉しいと本音をのぞかせました。
そして、二郎の出征の日がやって来ました。
ミツは二郎が大好きな玉子焼きを乗せた弁当を持たせて見送り、その後で一郎の為に植えた木の横に二郎の為の苗木も植えました。
やがて数日が過ぎた時、大雨の中を昌平が家にやって来ます。
その様子から、昌平が一郎の戦死を知らせる電報を持ってきたことを察します。
同じ村の人達は軍神となった一郎の事を褒め称えますが、ミツは誰もいないところで「褒められてもちっとも嬉しくないよ」と一郎の木にそっと語り掛けていました。
時は流れ、昭和16年に日本がアメリカに宣戦布告すると、乙種合格だった三郎のみならず四郎(大橋昌広)にも召集令状が届けられました。
三郎はお国の為には働けると喜び勇んで出征していきましたが、フィリピン沖で乗っていた輸送船が撃沈されて帰らぬ人となってしまいます。
役所の担当者 鈴木(有薗芳記)が戦死の連絡と中身の入っていない骨箱をもってきましたが、ミツは落胆のあまり受け取る事が出来ませんでした。
一方、五郎は学校を出た後は郵便局員となっていました。
サユリは相変わらずに五郎の事を想い続け、貴重な砂糖を使っておはぎを作って差し入れたりしていました。
そんな中、今度は四郎の死亡が知らされます。
ガダルカナル島で闘っていた四郎の部隊は敗北による撤退を潔しとせず、全員で玉砕したのです。
周りからは息子4人を立派に送り出したと褒められ、婦人雑誌に記事が載ったりもしたのですが、本音では嬉しくないと呟く事もありました。
そんなある日、養子に出した誠(安藤瑠一)がミツに会いに来ました。
その次の日、誠は志願兵として出征する事が決まっており、別れを言いに来たのでした。
育ての親に遠慮して、ただその身を案じるしかないミツは、一郎達の木の横に誠の分の苗木も植えました。
戦争はなかなか終わる気配がなく、ミツは消息が分からない二郎の事を心配し続けていました。
そして、県庁に行けば情報を教えてもらえると聞き、一人で汽車に乗って向いました。
しかし、県庁内で迷ってしまいます。
その時に親切にしてくれた男性(波岡一喜)がいましたが、警察の姿を見ると逃げていってしまいます。
実は彼は反戦運動をしており、警察や憲兵から逃げていたのでした。
そして、はるばるやって来たものの、結局二郎の消息は分からず終いでしたが、暫くすると二郎からの手紙をサユリが届けてくれ、生きていると分かって安心する事が出来たのでした。
しかし、幸せな時も束の間、今度はサユリが神奈川の軍需工場に行くことになります。
サユリはなけなしの砂糖でおはぎを作り、五郎に別れを告げました。
その頃、二郎は中国で軍務についていました。
そこは日本軍によって一応の平和が保たれていました。
ある日、上官に呼ばれた二郎は「君のお父上は既に亡くなり、兄弟も戦死している。その分、生きて帰るんだぞ」といわれます。
命を捨ててでも国の為に尽くせと言われてきた二郎は面食らいます。
そして半年後、南方への配属が通達されます。
そして二郎が任地へ発った直後、反日勢力による襲撃により二郎のいた日本軍庁舎は壊滅し、そこにいた者は皆殺しにされました。
同じ頃、畑仕事をしていたミツの元に兵務課の鈴木がやってきました。
また子供の誰かが召集されると気が付いたミツは、封書を受け取らずに「帰ってくれや」と拒否し続けます。
しかし、帰ってみると五郎が召集令状に捺印していました。
落胆したミツは、五郎の見送りには行かないと告げます。
しかし、いざ出征の当日になると、ミツは居ても立ってもいられなくなり、汽車が出発する直前に駆けつけました。
しかし、どうしても出征させたくないと、足にしがみついて止めようとします。
飛んできた憲兵に見とがめられ、「この非国民が!」と蹴飛ばされ、引き離されて連行されてしまいます。
警察での取り調べ中も口を開こうとしないミツを、憲兵は容赦なく殴りつけてきました。
しかし、そこに兵務課の鈴木が飛び込んできて「この人は5人の息子を兵隊に出し、3人が天皇に命を捧げた愛国の母ですよ。その愛国心を疑うとは何事ですか?!」と庇ってくれたお陰で釈放されました。
何とか家に戻ったミツは、辛い思いをさせてしまったと呟きながら五郎の木の苗木を植えました。
昭和20年、長引く戦争は泥沼化して終わりが見えない状態でした。
南方に行かされた五郎は、運よく二郎と同じ部隊に配属されて久しぶりに再会します。
二郎は目や腕などを負傷していたものの元気で、五郎は以前に雑誌に乗ったミツの記事や挿絵を見せてやります。
二郎はそれを見て「何処か寂しそうだ」と呟きます。
そして五郎に「二人で生きて帰ります」と手紙を書くように言いました。
「おかあさんの木」最後ラストの結末は?
そんなある日、ミツは納屋に隠れている男を見つけます。
それは以前に県庁で道を教えてくれた青年でした。
反戦運動を咎められ、憲兵や警官に追われていたのです。
ミツは彼を匿い、食事を出してやりました。
よく見ると青年は息子達と同じ年頃で、思わず息子達を想って青年を抱きしめてしまいました。
青年は次の日の朝、静かに立ち去りました。
戦争が続く中、六郎は特攻隊員として、誠は沖縄での戦闘で死んでしまいました。
そんな中、南方からの五郎の手紙がやっとミツの元に届きました。
二郎と五郎が生きていると知って、ミツは手紙を大事そうに抱きしめました。
しかし、終戦間際になると南方は激戦地となり、二郎は戦死、五郎は行方不明になってしまいました。
やがて昭和20年8月15日に終戦となりましたが五郎は帰還せず、ミツの心配をよそに季節は流れてゆきました。
それでもミツは希望を捨てていませんでした。
そして1947年の冬がやって来る頃、負傷した足を引き擦りながら、やっと五郎が帰ってきました。
何とか家に辿り着いた五郎が見たのは、兄弟の木の側に冷たくなって横たわっているミツでした。
そして現代
サユリの話が終わると、市の職員は涙をうかべて伐採計画を見直すと言ってくれました。
サユリは帰還した五郎と結婚して、10年前に五郎が他界するまでずっと夫婦生活は続きました。
県の職員たちが帰って、まどろみながらもサユリはずっと呟いていました。
「あの木を切ってはいけない。あれはおかあさんの木だから・・・」
完
「おかあさんの木」見どころ
戦時中、次々と出征してゆく息子達を複雑な思いで送り出し続けたごく普通の母親の姿を通して、戦争の悲しさを描いていました。
物語の序盤で突然に夫を亡くしてしまい、泣き崩れるミツを息子たちが「泣かんでください!」と励ますシーンは、親を想う気持ちが感じられて涙を誘います。
やがて日中戦争や太平洋戦争が勃発し、息子達は徴兵され戦場に送られてゆきます。
周りからは「おめでとう」「日本の母の鑑」と褒め称えられますが、本心では息子達には無事でいてほしい、戦場など行かないでほしいと思っています。
しかし、時代の流れには逆らえず涙を隠しながら送り出すしかありません。
二郎が出征する時には好物の卵焼きを持たせたり、三郎の兵役検査の結果が悪いと知って「これで、あの子はそばにいてくれる」と密かに喜んだりする様子には、息子達には何としても生きていてほしいと言う気持ちが垣間見えます。
しかし、ミツの願いも空しく、出征した息子達は戦死してゆきます。
一郎の戦死を告げられ、周囲からは村の名誉だと言われますが、庭に植えた桐の木にむかって「褒められてもうれしくないよ」と人目を忍んでささやく姿や、とうとう五郎までが出征する日「これ以上、息子を失いたくない」と、堪らなくなって列車に乗ろうとする五郎の足にしがみついて止めようとする姿は胸を打ちます。
戦争の時代、日本中の母親が同じように人目を忍んで泣いていたことでしょう。
こんな悲劇は二度と繰り返してほしくないと思わせてくれる作品です。
みんなの感想