映画「黒い司法 0%からの奇跡」は、マイケル・B・ジョーダン主演、デスティン・ダニエル・クレットン監督の2019年の映画です。
この映画「黒い司法 0%からの奇跡」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見どころについて紹介します。
立証不可能な冤罪に挑んだ若き黒人弁護士の奇跡の実話「黒い司法 0%からの奇跡」をご堪能ください。
「黒い司法 0%からの奇跡」あらすじ
アメリカ合衆国 アラバマ州モンロービル。
1986年11月、田舎町のクリーニング店で、遺体となって発見された18歳の白人女性 ロンダ。
1987年6月、容疑者 ウォルター・マクミリアン(ジェイミー・フォックス)、通称 ジョニー・D逮捕。
ボールドウィン郡裁判所、陪審員は有罪で終身刑を求め、裁判官が下したのは死刑判決でした。
正義の名の下に、罪を犯した者には当然の報いを受けさせる。
しかしその判決は、まるで元から決まっていたかのよう。
住民の殆どが白人の、この町を掌握するのはテイト保安官、そしてフォスター裁判官という男たち。
ジョニー・Dに付く弁護士は、手を尽くす事なくカネを受け取って逃げ出すばかり。
真実は、公正な裁判が行われないうちに、黒人のジョニー・Dは死刑囚監房に収容されたのです。
ジョニー・Dの有罪を決定付けたのは、明らかに不自然な証言と1つの裏付けだけ。
いずれも根拠に乏しいものだったにも拘わらず、真相を追う者は居ません。
身に覚えのない殺人事件の犯人にされ、死刑執行のその日を待つだけのジョニー・D。
絶望する彼に光をくれたのは、若き弁護士 ブライアン・スティーヴンソン(マイケル・B・ジョーダン)でした。
本作は、実話に基づく物語です──。
「黒い司法 0%からの奇跡」ネタバレ
ハーバード大学ロースクール卒業、弁護士資格を取得したブライアンは、故郷のデラウェア州からアラバマ州へ旅立ちます。
“すべての国民は、法の下に平等”
志は、公正に裁判を受ける権利すら奪われてしまった、社会的弱者を守り支援する。
しかし、そんなブライアンの想いを嘲笑うかのように、黒人そして白人同士でも支配する者される者を生み、ここはソレがまかり通る町でした。
移住早々、冷たい視線を向けられるブライアン。
それは彼が黒人だから、そして有罪判決の死刑囚を手助けする厄介な男だから。
アラバマ州刑務所、依頼人の死刑囚6名との面会を前に、白人刑務官はブライアンを丸裸にして侮辱。
肩を震わせるブライアンは、ネクタイを結び直しスーツ姿で死刑囚の元へ。
彼らは、誰一人として話を聞いてくれる人物と出会っていませんでした。
弁護士にも見放され、裁判官が「犯罪者は死刑でいい」とまで言ったと。
ジョニー・Dも、これまでの弁護士のようにブライアンも直ぐに去ると諦めています。
学生時代、インターンで訪れた刑務所で、同じ年の黒人死刑囚と出会ったブライアン。
彼と話をした数時間、白人刑務官の粗暴な言動。
ブライアン自身の心にも深い傷を残していた差別、そして目の前には冤罪で苦しむジョニー・D。
彼の無罪を証明するため、裁判記録を読み漁るブライアンは司法取引があったと考えます。
事実、犯人逮捕に至らず、テイト保安官らは焦っていました。
そこに突然現れた、1人の男 ラルフ・マイヤーズ(ティム・ブレイク・ネルソン)。
クリーニング店で起こった殺人事件、唯一の証言者だった彼は刑務所の常連。
彼自身も別の殺人罪で裁判の真っ最中、減刑を約束した司法取引が行われた。
そして、たまたま名前が挙がったのが黒人のジョニー・D。
彼なら犯人らしく見える、これで住民は納得するだろう──。
ブライアンの同志 エバ・アンスリー(ブリー・ラーソン)も、憤りを感じます。
基本的人権の保障に取り組む団体 EJI(Equal Justice Initiative)を設立した、ブライアンを支えるエバ。
黒人を擁護する白人の彼女も弾圧を受けますが、ブライアンと共に冤罪を晴らすため尽力します。
検事 トミー・チャップマン(レイフ・スポール)に、会いに行ったブライアン。
以前は、公選弁護人だった彼なら、力を貸してくれるだろうと期待します。
しかし、チャップマンもジョニー・Dは有罪と、決め付ける1人でした。
支配する側に回ったチャップマン、歪んだ実態にウンザリするエバは、証拠集めに奔走するブライアンを心配します。
なぜなら、彼を不快に思うのはこの町に住む多くの白人、あまりにも強大な敵でした。
ジョニー・Dの家を訪ねると、彼の家族と近所に住む者が集まりブライアンを歓迎します。
事件当日はバザーが開催され、ジョニー・Dと朝から晩まで一緒だったと、アリバイを証言する者は10人以上も居ました。
夫が犯人にされた理由は、白人女性との浮気が一因かもしれないとジョニー・Dの妻 ミニーが打ち明けます。
すると「…黒人へのリンチだ!」と、ジョニー・Dを心配し集まった者たちは騒然。
その過ちから悪意のある噂が次々と広まり、ついには殺人犯……それが白人の慰めに。
「父さんだけじゃない、私たちも死刑囚 同然」と、白人の視線に子供たちも怯えていました。
「無実が勝ち取れるはずです…その日まで私は諦めません」
ブライアンの熱意を信じるミニーや子供たち、近所の者たちは握手を交わします。
現実には、ジョニー・Dの再審請求を求める事は、困難を極めました。
黒人への弾圧はもちろん、ジョニー・Dを擁護する白人巡査への不当な処罰も。
それでも、ジョニー・Dと面会したブライアンは、法廷で無実を証明してみせると約束。
手渡された家族写真を見て、絶望しか無かったジョニー・Dが少し微笑みました。
不当な判決、冤罪から依頼人を救出するため奔走、次第に協力者も現れ始めます。
しかし、心から罪を償う死刑囚 ハーブにも寄り添う、ブライアンを襲ったのは怒りと悲しみでした。
ジョニー・Dに対する証言をした、重要証人 マイヤーズと面会するブライアン。
首に火傷の跡が残るマイヤーズは、幼少期の辛い記憶があるようです。
証言の真相には触れなかったものの、マイヤーズもテイト保安官を恐れる1人だと確信できました。
クリーニング店の事件後、身に覚えのない罪で拘束された彼が、取調室で見たのは「ロンダを殺したのは…」と、慌てている保安官でした。
マイヤーズの、当初の供述を収めた録音テープを入手したブライアンは、歪んだ実態を耳にします。
「俺は何も知らねえ、本当だ……もし無実の奴をハメろと言うなら絶対にお断りだ!」
テイト保安官の脅しに屈しなかったマイヤーズ、しかし彼を服従させるのは保安官にとって簡単な事でした。
数日後、ブライアンの元に、囚人 ハーブの死刑執行が決まったと悲報が届きます。
彼との約束通りブライアンは立ち合い、涙を流しました──。
偽証に良心が痛むマイヤーズは、ブライアンに隠し事は通用しないと全てを話します。
ジョニー・Dと同日、死刑囚監房に収容されたマイヤーズ、それは証言を拒んだから。
それから数日後、囚人1名の死刑が執行され、彼は独房の中で恐怖に襲われました。
漂うのは皮膚の焼ける臭い……幼い頃に火傷したマイヤーズのトラウマを知る、保安官の企みです。
マイヤーズが指示通りに供述すれば死刑囚監房から解放、郡拘置所へ戻れる司法取引をしました。
1992年4月、ボールドウィン郡裁判所
クリーニング店、白人女性 ロンダ殺害事件の再審を問う審理が行われます。
多くの白人が傍聴席を埋め、ジョニー・Dの家族、近所の仲間も彼を見守るなか開廷。
証言台に立つマイヤーズはブライアンの支えで、証言は偽証だったと伝えます。
しかし1か月後、フォスター裁判官が下した判決は再審請求は棄却、またしても救いを阻む強大な力が動きました。
「黒い司法 0%からの奇跡」最後ラストの結末は?
「…まだ、終わりじゃない」州最高裁に訴え、再審への道を目指すブライアン。
更に、ジョニー・Dの真実を人々に知ってもらうため、TV出演します。
『60ミニッツ』で、ジョニー・D、マイヤーズ、そしてチャップマン検事もインタビューに答えました。
3か月後、再審請求が認められても尚、悪あがきをするチャップマンを訪ねたブライアン。
「検事の務めは有罪判決の保持じゃない、あなたが守りたい町で真犯人は野放しだ!」
きっと、チャップマンの心にもあるはずの、正義に訴え掛けます。
1993年3月、ボールドウィン郡裁判所
女性裁判官 パメラー・バシャーブによって、ジョニー・Dに対する起訴取り下げ請求の審理が始まります。
「法の下に平等と言うなら……財産、人種、地位を問わず、ジョニー・Dと家族の悪夢を終わらせねばならない」
満員の法廷に、ジョニー・Dの身の潔白、起訴取り下げを申し立てるブライアンの言葉が響きました。
すると、チャップマン検事はブライアンに同意して、ジョニー・Dに対する起訴を取り下げると言い出し法廷は騒然。
「静粛に!……被告人側の請求を認め、死刑を取り消します」
チャップマンの隣に座っていたテイト保安官は、唖然とした顔で法廷を去りました。
バシャーブ裁判官の声に涙を流すジョニー・Dの元へ、駆け寄る家族や仲間。
囚人たちが叩く鉄格子の賑やかな音が、死刑囚監房から解放され外の世界へ出る、ジョニー・Dを送ります。
1993年4月、死刑に関する上院公聴会
ブライアンは人々に、より良い社会づくりとはどんな事なのか語り掛けました。
彼の隣では、ジョニー・Dが微笑みます。
THE END
「黒い司法 0%からの奇跡」見どころ
晴れ渡る空、松の木を切り倒す音、仕事をする日常。
暗くなってきた帰り道、車を走らせるジョニー・Dの視界にパトカーの青色灯。
狙っている銃口、両手を開き見えるようにハンドルの上へ置くジョニー・D。
テイト保安官の言動、容易く無実の罪を着せる現実に、冒頭から身震いします。
「最も困っている人のために闘え…」
不当な裁判で死刑囚となった人々を救うため、母の教えを体現するブライアン・スティーヴンソン。
誇らしさを感じても命がけの仕事になる実情、計り知れない危険の中に彼を送り出す家族も怖かったと思います。
映し出されるのは日常、大袈裟な身振り手振りで表現される事は無く、その日その時の自然な感情。
それぞれの家族の深い愛情、熱い想いが伝わり、演技を越えて観る者に訴え掛けます。
本作に登場する検事・チャップマンが『60ミニッツ』を家族で見ているシーンは、また違った意味で考えさられました。
「執行の日が来て、彼が電気椅子へ…満足ですか?」という質問に「満足ですね」と、答えるチャップマン。
後に起訴を取り下げる決断をした彼ですが、TVを見ていた彼の妻の張り詰めた表情は、短いシーンでも印象的です。
アラバマ州刑務所を訪れたブライアンを、侮辱した白人刑務官の心の移り変わり。
それに気づいたあなたは、悲しみの中にほんの少し希望のようなものを感じるでしょう。
彼が、初めて死刑執行を担当する事になったのが囚人・ハーブ。
ベトナム戦争で惨劇を目の当たりにし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患った彼は、殺意の無い殺人を犯しました。
その罪を償うハーブ自身も苦しみを味わう犠牲者、しかし無垢な子供の命を奪ってしまった…やり切れません。
死刑執行の日、恐怖に襲われるハーブの耳に届いたのは、鉄格子を叩く音と仲間の声。
「独りじゃない」その別れに、きっと胸が締め付けられ身体が熱くなるでしょう。
鉄格子を叩く音は、ジョニー・Dの出所の時も鳴り響きますが、全く別の音に聞こえます。
本作は現実に起きていた事、それも僅か30年前となれば自分の暮らしと、あまりの違いに愕然とする人も多いでしょう。
そして現在も尚、闘いが続いている事を忘れてはいけません。
同じく理不尽な扱いを受ける実話「告発」もかなり重い映画です。
エンドロール、劇中に登場する実在の人物たちの写真や映像が流れ、彼らのその後を伝えます。
想像するだけでは、きっと足りないであろう悲しみや救いの喜び、更には強い憤りを感じるでしょう。
「もう、本編は終わった」とは言わず、事件の行方も知って欲しいです。
差別、貧困、不正によって、生きる事を制限される人々を、懸命に救ったブライアン・スティーヴンソン。
原題は『JUST MERCY』
強い信念で“公正な慈悲”を訴える勇姿を、どうぞ最後までご堪能下さい。
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