映画「悼む人」は、高良健吾主演、堤幸彦監督の2015年の日本映画です。
この映画「悼む人」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
死者を悼んで旅する男を通して描かれる物語「悼む人」をお楽しみください。
原作は天童荒太の長編小説で第140回直木賞受賞作です。
■ スタッフ
監督: 堤幸彦
製作: 木下直哉
脚本: 大森寿美男
撮影: 相馬大輔
音楽: 中島ノブユキ■ 主要キャスト
坂築静人:高良健吾
奈儀倖世:石田ゆり子
甲水朔也:井浦新
坂築美汐:貫地谷しほり
福埜怜司:山本裕典
水口:甲本雅裕
弁護士:堂珍嘉邦
沼田響子:麻生祐未
沼田雄吉:山崎一
比田雅恵:戸田恵子
蒔野抗太郎:椎名桔平
坂築巡子:大竹しのぶ
「悼む人」あらすじ
事故や事件で亡くなった方の現場に跪き、その死を悼む青年・坂築静人(高良健吾)。
彼はその死因や原因には興味を示さず、死者がどのように愛し愛された人生を送ってきたかを思い浮かべながら。
まるで何かの儀式のようにしてその死を悼むのでした。
そんな静人(高良健吾)の行為は、遺族をはじめ周囲の人間からはなかなか受け入れられません。
警察に通報される事も少なくなく、理解してくれる人もいない中で黙々と悼みの行為を続ける彼を黙認し、ただひたすらその帰りを待ち続ける家族ですが、そんな家族の中にも大きな転換期が訪れます。
死とは、愛とは、生きるとはなんなのか―――
壮大なテーマを掲げる物語の始まりです。
「悼む人」ネタバレ
静人(高良健吾)は試行錯誤を重ねた今、被害者が誰に愛され誰を愛したか、そしてどんなことをして人から感謝されていたか、この2点に絞って思えておく形で自身の悼みを確立しています。
携帯電話も持たず、悼みを続ける静人(高良健吾)と連絡を取る術はありませんが、彼を待つ家族にも大きな変化が訪れています。
母の巡子(大竹しのぶ)は病が進行し、もはや病院ではなく自宅療養で最期の時を迎える事に…。
また、静人(高良健吾)の行為により婚約を破棄された妹・美汐(貫地谷しほり)は、幸せから一転シングルマザーとなる事が決まってしまったのでした。
そんな坂築家を訪ねてきた記者がいます。
とある事件の現場で静人(高良健吾)を知った雑誌記者・蒔野(椎名桔平)は次のネタにするべく彼の家族を訪ねてきたのです。
そこで息子の行為がネット上でちょっとした都市伝説のようになっている事を知らされる巡子(大竹しのぶ)。
賛否で言えば圧倒的に否の意見が多い掲示板を見せつけるようにして母親の言葉を引き出そうとする蒔野(椎名桔平)でしたが、彼女はネット上の言葉ではなく、貴方が出会った静人が静人、貴方にどう映ったか、貴方に何を残したか、そう詰め寄って倒れてしまいます。
その頃静人(高良健吾)は、甲水朔也(井浦新)の亡くなった現場で倖世(石田ゆり子)と知り合います。
なぜか静人(高良健吾)と行動を共にする倖世(石田ゆり子)。
いくつかの事件現場を共にし、やがて辿り着いた場所で彼女は初めて感情をあらわにします。
夫からのDVで亡くなった女性を悼もうとする静人(高良健吾)に対し、この人は旦那に愛されてなんかいない!と言い切り、夫を殺した過去を告白したのです。
最初の夫からDVを受けていた彼女を救ってくれたのが、甲水朔也(井浦新)だったのです。
寺の長男である彼は、倖世(石田ゆり子)のような女性を守るシェルターを設立した誰からも愛される存在でした。
彼のおかげでDV夫との離婚が成立した倖世(石田ゆり子)に、朔也(井浦新)は結婚を申し込みます。
人生で初めての幸せを手にした倖世(石田ゆり子)でしたが、そんな彼女に、自分を殺してほしい、と言い出した朔也(井浦新)。
愛とは執着に過ぎないという彼は、殺してくれたら倖世(石田ゆり子)を愛せるかもしれないと言い、願いを叶えてくれないのならほかの女性を探すだけだ、とまで言い切ります。
追い込まれた倖世(石田ゆり子)は、彼が去っていく恐怖に耐えられず遂には朔也(井浦新)を刺してしまいました。
以来倖世(石田ゆり子)の側には死んだはずの朔也(井浦新)が付いて回ります。
全てを静人(高良健吾)に話した彼女に、そいつに殺してもらえよ!と叫ぶ朔也(井浦新)。
その彼の言葉のままに静人(高良健吾)にぶつかる倖世(石田ゆり子)でしたが、もちろん静人(高良健吾)は応えません。
そんな事をしては悼みが出来なくなる、と言うのです。
その頃蒔野(椎名桔平)の元に、母から父を奪ったリリコから連絡が入ります。
父が会いたがっていると何度も連絡を受けながらも、幼い自分と母を捨てた父を許せず、危篤と聞いても会いに行こうとはしません。
苛立ちをぶつける様に中学生を相手に買春行為に走るのです。
しかし小生意気な中学生に向かい、お前が死んでも誰も思い出さない、思えを悼む人間なんてどこにもいない!!と怒鳴りつけその場を後にするのでした。
その足で向かった先はリリコのお店。
亡くなった父を悼み集まる常連客を視線を受けながら、彼が見つけたのは一冊のスケッチブックでした。
それは、最期の時が近付き喋れなくなった父の筆談ノートです。
日々の雑用を頼む筆談が次第にある一言の繰り返しに変化していきます。
父の願いはただ一つ。『コウタロウ(椎名桔平)にあいたい』。
スケッチブックを手に店を後にした蒔野(椎名桔平)は、人通りのない道で拉致されてしまいます。
犯人はホテルに残してきた少女の彼氏を始めとする不良グループでした。
馬鹿にされたと憤った少年らにより、大怪我を負わされ地中深く埋められながら、そこにあの少女がいる事を知ると必死で、君はこんな死に方をするんじゃないぞ!と、少年らのグループから抜け出せと声を上げる蒔野(椎名桔平)。
誰かに覚えられるような死に方をするんだ!!そう叫んできっちり埋められた蒔野(椎名桔平)ですが、間一髪助け出されます。
匿名の少女から、人が埋められている、との通報が入ったというのです。
蒔野(椎名桔平)の言葉は少女の胸に届いていたのでした。
静人(高良健吾)と倖世(石田ゆり子)は、荒れた雷雨に巻き込まれ廃車バスに逃げ込みます。
そこで、朔也(井浦新)と話したいという静人(高良健吾)。
悼まれている相手から直接話が聞ける機会なんて滅多にないから、という静人(高良健吾)に、悼むという行為に疑いはないのかい?と問う朔也(井浦新)。
悼みを行う事に常に迷いを抱えながらの静人(高良健吾)ですが、朔也(井浦新)のしたことは人を苦しめる自殺に過ぎない、と彼の死について初めて責めるようなことを口にするのでした。
「悼む人」最後のラスト結末
翌日、嵐の中を歩き始めるも、倖世(石田ゆり子)が体調を崩し、病院で入院する事になりました。
そこで初めて、自分の行為がネット上で話題になっている事を知った静人(高良健吾)はそこに、母が大変な状況であるとの書き込みでやっと巡子(大竹しのぶ)の現状を知るのです。
医師が往診に出てしまった後、倖世(石田ゆり子)は朔也(井浦新)が死の間際に漏らした言葉をつぶやきます。
君から生まれたい、そういって絶命した朔也(井浦新)の真意を図り切れずにいる倖世(石田ゆり子)に静人(高良健吾)は、それは彼があなたに感謝しているという事なのではないか、そう言って朔也(井浦新)の悼みを始めるのでした。
翌朝。
家に帰る道中でも悼みを続ける静人(高良健吾)。
山にある火薬工場に向かう彼に、途中の洞くつで待ってる、と伝えた倖世(石田ゆり子)でしたが、彼女が向かったのは高い大橋でした。
そこから飛び降り死者にならないと静人(高良健吾)の中に残れないと、そう思ったからです。
しかしすんでのところでその静人(高良健吾)に助けられ、そんな事をしなくてももう僕は貴女の事を覚えています、と言われる倖世(石田ゆり子)。
彼女が静人(高良健吾)に惹かれたように、彼もまた彼女を愛してしまっていたのです。
洞窟に戻り愛し合う二人。
夜になって、洞窟の向こうでこちらを見ている朔也(井浦新)に気付いた倖世(石田ゆり子)。
そっと静人(高良健吾)の側を離れた彼女は、朔也(井浦新)に向かって悼みを行うのでした。
翌朝、ここからは一人で悼みを続けるという決意を伝える倖世(石田ゆり子)。
そうして歩くうち、またあなたに会えるかもしれない、そう言って去りゆく静人(高良健吾)の背中をそっと見つめるのでした。
自宅出産で産気づく美汐(貫地谷しほり)。
美汐(貫地谷しほり)の産みの苦しみが、階下のベッドに横たわる巡子(大竹しのぶ)の耳にも届いています。
やがて響き渡る赤ん坊の泣き声を聞きながら、そっと目を閉じる巡子(大竹しのぶ)。
生まれたばかりの赤ん坊を美汐(貫地谷しほり)から受け取った彼女の側には、家族が集まってきます。
そこへ帰ってくる静人(高良健吾)。
夢のような幻を展開させながら物語はもくもくと歩みを続ける静人(高良健吾)の姿を映しだして物語は終わりを迎えます。
完。
「悼む人」見所ポイント!
とてもテーマが重く、複雑で難しい物語でした。
亡くなった方を覚えておく、しかも自分に全く関わり合いの無い全くの他人の死を…。
そんな旅を黙々と続ける主人公の姿から、自分は何を学べるだろう、と言う思いで観ましたが、結局のところ自分の中に残ったものの整理が出来ないままでいます。
他人からはなかなか理解を得られないだろう悼みを行い続ける静人の姿は、高良健吾さんによって小説や映画の中だけではない、本当にこういう方がいるのではないか、と言うリアルを感じさせてくれました。
何かを求めたり、人からどう思われるかではなく、ただひたすらに自分の信じた道を歩む、それだけでも実際は難しい事だと思いますが、これほどまでにとらえどころのない行為を淡々と続ける。
この作品を見てどういった事を感じるのか、何かを得られるのかは本当に人それぞれ、十人十色な感想が得られそうな作品です。
一度ではなく、自分の人生で様々な転換期を迎えるたびに見返したくなるような、そんな物語でした。
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