「生きちゃった」ネタバレ!あらすじや最後ラストの結末と見どころ

映画「生きちゃった」ネタバレ あらすじ
ヒューマン

映画「生きちゃった」は仲野太賀主演、石井裕也監督の2020年公開の映画です。

この映画「生きちゃった」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見どころについて紹介します。

学生時代から一緒に過ごしてきた男女3人が30歳になって向かえる厳しい現実を描く「生きちゃった」をお楽しみください。

 

「生きちゃった」あらすじ

仕事中、耳鳴りと目まいに襲われる厚久(仲野太賀)。

風邪かな?そう思い上司に伝えると「早引けしていいぞ」と言われます。

セミが鳴く夏の昼間、フラフラとした足取りで狭いアパートに帰る厚久。

玄関のドアを開けると台所、隣の居間には誰もいないけど扇風機が回ってる。

風邪のせいで気が遠くなりそうな厚久の耳に、荒い息づかいが聞こえます。

奥にあるもう一つの部屋にゆっくり近づくと、妻・奈津美(大島優子)が知らない男と肌を重ねていました。

 
息を飲む厚久、それに気づいた奈津美はジッと厚久を見上げます。

耐え切れ無くなった厚久は、ガラス戸を割り「ダメだ、ごめん」と外へ。

幼稚園に通う5歳の鈴(太田結乃)に「パパ!」と呼ばれ、どうにか微笑んだ厚久。

風邪を引いた厚久に「鈴に風邪をうつさないで」と、アッサリと言い放つ奈津美。

そして、厚久が思いもしなかった胸の内を明かします。

結婚してから、ずっと苦しかった……

 
奈津美とではなく、早智子という婚約者と結婚を控えていた厚久。

しかし、婚約を破棄してまで奈津美と結婚して、鈴が生まれました。

「…早智子さん、今頃どうしてるんだろう?可哀想」

そう言って泣いている奈津美に「今さら」と、言う事しか出来ない厚久。

すでに離婚の意志が固まっている奈津美が、一方的に言葉をぶつけても無言のまま。

厚久がどう思っているのか分からず、顔を歪ませる奈津美。

「なんか言って、私を全否定してもいいんだよ!」

奈津美から目をそらす厚久は、奈津美を見ることなく離婚を受け入れました。

そして・・・

 

「生きちゃった」ネタバレ

家族3人で暮らした狭いアパートから、無くなった厚久の物。

あの日の男・洋介(毎熊克哉)が、入れ替わるように住み着きます。

 
かつては、プロの歌手を夢見ていた厚久。

ジャンルはラブソング、親友の武田(若葉竜也)と2人で、ギターを弾いて歌っていました。

妻と娘のために働いて、庭付きの家を建てたら犬を飼う夢も叶えたかった厚久。

どうにかやり繰りして中国語と英語を習い、武田と起業も考えましたがフェードアウト。

離婚した今は習い事もやめて、養育費を振り込むだけです。

 
厚久と奈津美と武田は幼馴染み。

高校生の頃に、男女として距離が近かったのは奈津美と武田。

離婚を知った武田は、厚久の気持ちを汲み取れない奈津美を責めます。

しかし、まだ鈴がお腹にいた頃に生まれた疑念を、ずっと消すことが出来なかった奈津美。

──それは、奈津美が買い物から帰った時のこと。

狭いアパートの狭い居間、厚久が元婚約者の早智子(柳生みゆ)の前で泣いていました。

呆然とする奈津美に厚久は「ごめん」と繰り返し、それ以上は言いません。

「…自分でも分からないけど、ここへ来てしまったんです」

そして“ごめんなさい”と、繰り返し奈津美に謝る早智子──

それ以来、厚久の様子は変わり奈津美は“愛されていない”と思いながら暮らしました。

 
元夫婦の間に入った武田は、厚久の本音を聞き出そうとします。

「今、寂しいか?ムカつかないのか?……鈴ちゃんに会いたくないのか?」

何を聞いても首を横に振り、目を滲ませる厚久。

「彼女を…悲しませた」と、武田に伝えます。

 
シングルマザーになった奈津美は、スーパーでバイトの日々。

まともな仕事に就かない、洋介の面倒も見ながらの暮らしは金欠つづき。

洋介にカネの愚痴をこぼせば「もらえるだろ、前の旦那に!」と、言い返されます。

顔を背けて「仕事選ばなきゃ、いくらでもあるだろ…」とまで。

しかし、鈴と洋介との暮らしを手放す気はない奈津美。

「あのさ、デリヘルなんて簡単に出来るよ。……絶対に別れない」

鬼気迫る奈津美に、洋介は動けません。

 
もうすぐ鈴の誕生日。

電話で話す厚久に「お金、振り込んで欲しい」と伝える奈津美。

聞き入れる厚久は、何か伝えようとしますが言葉が出てこず諦めました。

「ごめんね」と繰り返し、電話を切った奈津美は泣き崩れそうな自分を悔い止めます。

 
お盆、実家に帰省した厚久、去年は一緒だった奈津美と鈴はいません。

それでも何気ない時間を過ごす父(嶋田久作)、母(伊佐山ひろ子)、兄(パク・ジョンボム)。

唐突に「奈津美と去年別れた」と、打ち明ける厚久に驚きながらも、父母はためらいなく奈津美を非難。

家に引きこもっている厚久の兄は、弟をジッと見ています。

奈津美は厚久の家族を嫌い、父母が奈津美を好きになる事もありませんでした。

 
ワイシャツ姿の洋介は仕事を始め、引きこもりの厚久の兄が上京します。

テレビニュースは、デリヘルで働いていた女性が新宿歌舞伎町のホテルで殺害された事件。

奈津美と顔を見合わせる洋介は、鈴のために自販機でジュースを買おうと外へ。

3人の楽しそうな声が、狭いアパートを訪ねた厚久の兄に聞こえます。

ドアをノックしようとした手を止め、出て来た洋介に背を向ける厚久の兄。

衝動的に洋介を追いかけ腕を掴みますが、言葉が出て来ず首を横に振るだけ。

 
リュックを背負い、片手には買い込んだ缶ビールが入るビニール袋を握る厚久の兄。

「何だよ!」と洋介に凄まれると、頭突きを食らわせますが返り討ちに。

それでも執拗に洋介を追うと、道端にあるレンガを拾い何度も殴打し殺害します。

動かない洋介、厚久の兄はレンガを握りしめ涙を流しました。

 
兄が収容される、刑務所を眺める厚久。

大麻常習者だった長男が「大麻やめます」そう言ったんだと、面会後に冷笑する父。

厚久は刑務所をもう一度眺め、兄を思います。

 
洋介を亡くした奈津美のもとに、現れた田代(鶴見辰吾)という男。

早速、連帯保証人にサインしていた奈津美に、400万円の支払いを求めます。

籍を入れた訳ではない、洋介と奈津美。

しかし、返済を逃れることは出来なかった奈津美は、実家に鈴を預け仕事へ。

派遣型風俗店で身を強張らせ、その時を待ちます。

 
かつて家族3人で暮らした、狭いアパートのドアを叩く厚久。

空っぽの部屋から返事はなく「ごめん」と呟く厚久に、過去のあの日が浮かびます。

──元婚約者・早智子は、自分は子供が出来ない体なんだと厚久に告げました。

「だから、こうなって良かったのかも……可愛がってあげてよね」

厚久に微笑み掛けながらも、自分も子供が欲しかったと涙ぐむ早智子。

感情が溢れる厚久は「ごめん…奈津美を大切に思ってる」と、ハッキリと伝えます──

 

「生きちゃった」最後のラストの結末は?

何度目かの仕事、サラリーマン風の男(北村有起哉)が待つホテルに行った奈津美。

そこで、おもむろに包丁を手に取る男は、奈津美を殺害します。

翌日、訪ねて来た刑事(芹澤興人)に、奈津美の死を知らされた厚久。

親友の武田と葬式に向かいますが、奈津美の母(原日出子)から絶縁を迫られます。

何も言う事が出来なかった厚久は、大切な鈴と会うことも許されません。

 
声を押し殺して、こぼれ落ちる涙も隠す厚久。

しかし武田は、厚久は誰よりも奈津美を愛していたと感じることが出来ました。

そして、厚久を助手席に乗せ、鈴がいる奈津美の実家へ向かいます。

 
車から庭で遊ぶ鈴を見て、それだけで胸がいっぱいになる厚久。

ずっと言いたかった言葉を鈴に伝えるためにやって来たけど、武田の前でしか言えません。

本音を吐き出せず苦しむ厚久に「出せ!全部だしちゃえ!言えよ!」と発破をかける武田。

乱暴にクラクションを鳴らすと、2人が乗る車を鈴が見ていました。

武田に勇気を貰った厚久が、鈴のもとへ走り出します──

完。

 

「生きちゃった」見どころ

アジアの映画監督6人が描き出す“6つの物語”からなる、映画製作プロジェクト。

『B2B(Back to Basics)A Love Supreme』原点回帰。至上の愛──

2019年、上海国際映画祭で打ち出された、この企画への参加を決めた映画監督・石井裕也。

わずか3日で書き上げた脚本、時間と予算がない中で完成したのが本作『生きちゃった』。

監督として凄まじい熱量を持って挑んだ作品は、観るにあたり覚悟がいるかもしれません。

それは、画面を通してジメジメどんよりした空気感が、体中にまとわりつくから。

夏の蒸し暑さが原因ではなく、不快指数が上がる人間ばかりを観ているからです。

それでいて、彼らから目を離すことが出来ない、何とも厄介な映画なのです。

 
彼らの間にあった過去や感情、日常もほとんど観る者が思い巡らせる手法。

本編91分、ただただ破滅へと向かう過程をみせられた挙句に、置いてきぼりを食う!?

初鑑賞のあと、私は真っ先に「ふぅ~、疲れた」って思ったことを覚えています。

だけど、訳もなく重めの映画を観たくなる時ありませんか?

正直、いまも脚本を読み解けた訳ではありません。

今回、久しぶりに『生きちゃった』を見直しましたが、やっぱり難しい。

『生きちゃった』って意味が分かりそうで分からない、もどかしくて“知りたい”が募る。

そして、役者の凄まじい演技を観られる本作は、やはり心に引っ掛かる映画なのです。

 
主人公・厚久を演じた仲野太賀。

様々な役を演じ分ける彼が、本作でも言葉ひとつ、表情ひとつで惹き付けます。

もはや、日本映画界に必要不可欠な存在であることは言うまでもありません。

ちなみに、石井組の映画初出演は『町田くんの世界』(2019年)の西野という高校生役。

本作で魅せた感情を押し殺す30歳の父親役とは全然違う、全力で愛を告白する西野も最高ですよ。

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厚久の幼馴染で親友・武田を演じた若葉竜也。

小さい頃から活躍しているのは知っていましたが、伸びしろがエグ過ぎます!

名立たる監督の映画に出演し、確かな演技力と存在感をまざまざと見せつけた20代。

そして、30代の現在も目が離せません。

 
何度も観たい作品とは言えませんが『葛城事件』(監督・赤堀雅秋2016年)。

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そして、真逆の顔を魅せる初主演映画『街の上で』(監督・今泉力哉 2021年)も良いんです。

石井裕也監督との再タッグは、是非とも脱力系キャラでほのぼのさせて欲しいですね。

 
ひたすら、本音を口にすることが出来ない厚久。

そんな厚久と夢を分かち合い、苦しみも受け止める武田。

ラスト20分は、ほぼこの2人だけ。

絶望から這い上がろうとする者のトテツモナイ姿を、これでもかと畳みかけます。

そんな実力派の2人に負けていないのが、奈津美を演じた大島優子。

鑑賞中やその直後は、奈津美の感情をスグに理解するのが難しくて、個人的にはキライな人物でした。

だけど後日、ボーッと奈津美を思うと、彼女の言葉が浮かんで切なくもなるのです。

正直、鑑賞前は完全にナメていましたが、凄みのある大島優子に感服しました。

 
主要キャスト3人の他に、注目して欲しいのは厚久の家族です。

不可解な言動が多いけど、ボソッと出る辛辣な言葉がジワジワ効いてくるかも!?

父・十郎を嶋田久作、母・花子を伊佐山ひろ子が演じ、掴みどころがない雰囲気は◎

そして、兄・透を演じたのは、映画監督であり俳優でもあるパク・ジョンボム。
※個人的に傑作だと思う石井裕也監督の『アジアの天使』(2021年)にも、ちょい役で登場!

引きこもりの兄が大麻を吸ってニヤけても、体を張ってやめさせる訳じゃない父母。

ただただ、遠くから叫んでいるだけ。

あまりのシュールさに、ハマる人が続出の名言はお聞き逃しなく!

 
“歌でなら、日本語じゃなければ言いたいことを素直に言える”。

そんな具合の厚久が、もうこの世にいない奈津美への愛を英語で伝える場面が、私は無性に好きです。

本作のビジュアルポスターにある「すごく」「今でも」「ずっと」も、印象的。

また、腹の底から振り絞って声に出せた、鈴に知っていて欲しい“父親の気持ち”も。

伝えることが下手クソな厚久の精一杯が、伝わってくるのです。

 
誰の愛もま~るく収まらない、だけど彼らは確かに心に愛を持っていたと思います。

相手を思うから苦しくて、言って欲しくて、言えなくて。

この賛否ある映画を観て、あなたにも色んな意味で苦しんで欲しい!

もしかしたら、大いに心を揺さぶられる名作との出会いになるかもしれませんよ!

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