映画「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」は、マーゴット・ロビー主演、クレイグ・ガレスピー監督の2017年の映画です。
この映画「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のネタバレ、あらすじや最後ラスト、結末、見所について紹介します。
フィギュアスケート界を揺るがした事件の真相を描く「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」をお楽しみください。
これで「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のすべてがわかります。
「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」あらすじ
貧しい家庭で、幼い頃から暴力と罵倒の中で育てられたトーニャ・ハーディング。
天性の才能と努力でアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させ、2度のオリンピック代表選手となった。
だが、夫・ジェフの友人がトーニャのライバル・ナンシーを襲撃ししまい・・・
世界中から愛され、憎まれた女性…。フィギュアスケート界を揺るがした事件の真相とは?
「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」ネタバレ
物語は関係者のインタビューから始まります。
最初に出てくるのはトーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)。
元五輪フィギュアスケート選手ながら、タバコをくゆらせて不貞腐れたような顔でインタビューに応じます。
「私は貧しい家の出だけれど胸を張って生きてた。フィギュアの世界では典型的な“女性らしさ”が求められるけれど、こっちはアメリアの女性選手で史上初めてトリプルアクセル(3回転半)を飛んだんだ。そんな価値観、クソくらえよ!」
次に出てくるのは元夫のジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)
「あの頃の事は本当に後悔してる。アメリカ中、いや世界中から非難されて辛かったよ・・・」
トーニャの母親 ラヴォナ・ハーディング(アリソン・ジャネイ)
「私は必死で働いて月謝を稼ぎ、送り迎えや衣装づくりもしてトーニャにフィギュアを続けさせた。なのに、トーニャは私を“怪物”と呼ぶ。その上、あの事件のおかげで世界中から非難された。全く不幸な人生だよ」
トーニャのコーチ ダイアン・ローリンソン(ジュリアンヌ・ニコルソン)
「トーニャの評判は両極端で、愛されるか嫌われるかのどちらか。アメリカと似てるわ。その点で彼女はアメリカ人そのものね」
ジェフの親友でトーニャの元ボディガード ショーン・エッカート(ポール・ウォルター・ハウザー)
「ジェフとトーニャはナンシーを蹴落としたがってた。だから俺がアドバイスしたんだ『いい方法がある』って」
これは1994年、トーニャがライバルのナンシー・ケリガンを襲撃させ、出場不能に追い込んだ事件の全容です。
トーニャのフィギュアスケート人生は4歳から始まりました。
スケートリンクで子供たちを指導していたフィギュアスケートのコーチ ダイアンの元へ、突然ラヴォナがトーニャを連れて訪ねてきます。
「この子は朝から晩までスケートの事しか言わない。黙らせたいから、コーチしてやってくれない?もしかしたら才能が開花して、将来アイスショーに出られるかもしれないしね」
ダイアンは一度は断りますが、頑として引き下がらないラヴォナの強引さに負けて仕方なく引き受けます。
フィギュアを始めて半年後、トーニャは大会で優勝します。
彼女の才能は本物だったのです。
そして、それを最大限に引き出したのは、いつもリンクの側で「平凡すぎる!」「気合を入れな!」と怒鳴り散らしていたラヴォナでした。
友達なんて必要ないから話もさせない、練習中はトイレにも行かせない、練習中だけでなく私生活でも気に入らないときには容赦なく殴る、を繰り返してトーニャをスケート漬けにしたのです。
「あの子は怒りで力を出すタイプだったんだ」
後のインタビューでもラヴォナは悪びれる事なく語ります。
技術はずば抜けていたトーニャでしたが、フィギュアで高得点を得る為に必要な「優雅さ」が欠けていました。
ラヴォナはウェイトレス、父親も労働者で家は貧しく、アルバム用の写真を撮る日にフィギュアの衣装で学校に行き、その写真を大会用につかうような暮らしが体から染み出していたのです。
「子供時代の楽しい思いでは殆ど無い。ディズニーランドも家族旅行もした事ない。欲しいものがあったら手に入れる方法を考えたわ」
ダイアンに「周りになじませるため、毛皮のコートを着せてやって」と言われたラヴォナは「あの子は12歳で3回転を飛べる。周りから浮いて当然」「周りになじませる為に月謝を払ってるんじゃない」と文句を言いますが、結局、トーニャの父親がウサギを何匹も狩って皮をはぎ、お手製のコートを作ってやりました。
貧しい中でも優しかった父親がトーニャの支えでしたが、ラヴォナと離婚して家を出てゆく事になってしまいました。
トーニャが泣いてすがっても無駄でした。
やがてトーニャは成長し、リンクに突っ立っていた相手を「邪魔なんだけど」と睨みつけるような気が強い女の子に成長しました。
ある日、リンクで滑り続けるトーニャにジェフが一目ぼれし「腹減ってない?」と声を掛けて交際が始まります。
最初は優しかったジェフでしたが、やがてトーニャを殴るようになります。
初めの頃は抵抗していたトーニャでしたが「これも愛情表現よ。ママと同じ」と受け入れるようになります。
顔に青あざを作っているトーニャを見て「私なら別れるね」とラヴォナは言い捨てますが、トーニャはジェフと別れようとはしませんでした。
ある日、得点が伸びずに無理やりトリプルアクセルに挑戦して失敗した事を非難されラヴォナと口論になったトーニャは、はずみで腕をナイフで刺されてしまい、そのまま家を出てジェフと暮らし始めます。
二人は貧しく、ホームセンターで働きながらお金を稼ぎながらの生活でしたが、二人で大会の衣装を選び、一緒に会場に向かう幸せな生活がしばらく続きました。
しかし、大会で得点は伸びず、とうとう「私より下手な選手が高得点てどういう事?!」と審判に食って掛かります。
そして返って来た「見栄えも考慮に入れているの」と言う答えに激高し「死ね、クソばばぁ」と暴言を吐いて会場を飛び出してしまいます。
そして諫めに来たダイアンにも暴言を吐き、彼女を解雇してしまいます。
1991年 ミネアポリスでの全米選手権。
新しく雇ったコーチ ドゥディ・ティーチマンの励ましで遂に全米史上初めて女子でトリプルアクセルに成功します
「今まで散々『出来ない』って言われてきたけど、出来た!ざまぁみろって感じだった。実力を見せつけてやった。生まれて初めて『私は世界一のフィギュアスケーターだ』と思えたんだ・・・」
インタビューでそう言った後、トーニャは涙を流し出します。
「ごめんなさい、もう誰にもこんな事は聞かれないから・・・」
その実力を世間に見せつけ、大会でも好成績が続いたトーニャでしたが、それを鼻にかけるようになり、ジェフの怒りを買う事が多くなってゆきます。
暴力に耐えかねてジェフの元を離れ、接見禁止命令までとるものの、説得されてよりを戻してしまいます。
そして1992年 アルベールビル五輪にアメリカ代表として出場します。
世界で初めてオリンピックでトリプルアクセルを決めた女子選手になる事を夢見ていましたが、ジャンプに失敗し、4位に終わってしまいます。
また、ジェフの暴力も再び始まり、警察を呼んだり、接見禁止命令を申請したりした挙句、遂に離婚します。
しかし、二人の家を出て引っ越したその日、ジェフがいきなりやって来てドアをこじ開け、トーニャに銃を突き付けて外に連れ出します。
車に乗っている最中、スピード違反で警察に捕まりますが、警官はトーニャの流血には気づかずに酒と銃を押収して去って行ってしまいました。
独りぼっちになり、目標を失くし、トーニャは生活の為にウェイトレスを始めました。
ある日、トーニャが働くレストランにかつてのコーチ ダイアンが現れ2年後に再びオリンピックが開催される事を告げます。
「今はそんな風には思えないかもしれないけれど、これは世界が与えてくれた2度目のチャンスよ」
トーニャは再びダイアンに師事する事を決意します。
再び練習漬けの日々が始まりました。
リンクでの練習は勿論、ダンスレッスンやロッキーばりの筋トレも行って体のキレや体型を元に戻してゆきました。
しかし、大会で勝ち残れない日々が続きました。
遂に頭にきたトーニャは、帰ろうとする審判の一人を駐車場で捕まえて詰め寄りました。
「ジャンプは全部成功したのに得点が低いのは何故ですか?」
審判はここだけの話にして欲しいと前置きしたうえで答えてくれました。
「女子フィギュアスケーターに求められるのは技術だけじゃない。理想的な家族像も必要だ。アメリカ代表となる上で君にはそれが欠けているんだ」
家族愛とは程遠い人生を送ってきたトーニャでしたが、オリンピック代表資格を得る為に何とか「理想的な家族」を手に入れようとします。
まず向かったのはラヴォナが働くレストランでした。
しかし、ラヴォナの態度は相変わらずでした。
「今更、愛情なんて私に求めるんじゃないよ。私は手作りケーキを作ってやる代わりにメダルを取れる才能を引き出してやったんだ。感謝されても非難される覚えはないね」
トーニャは幻滅してその場を立ち去りました。
そして、ジェフに連絡を取り「オリンピックに出る為にはあなたが必要なの」とよりを戻しました。(まだトーニャに未練のあったジェフは内心喜びますが、トーニャは用が済んだらサッサと別れる気でした)
オリンピック代表選考が近づく中、練習に励むトーニャの元に「練習中、後ろから撃つ」と脅迫状が届きます。
ジェフは「よくある事だ」と気にしませんでしたが、トーニャはショックを受けて大会予選を棄権してしまいました。
この事をきっかけにジェフは「トーニャのライバル ナンシー・ケリガンにも脅迫状を送れば、怯えて練習に身が入らなくなり、代表の座を逃すかもしれない」と彼女を陥れる策を考え付きます。
早速ジョーンと相談し、アリバイ作りの為に人を雇って遠くに行かせ、そこから脅迫状を投函させる事にしました。
誰を行かせるかなどの手配は自称「諜報活動とテロ対策のプロ」のショーンが行いました。
しかし、特にこれと言った変化はない上に、ショーンは活動資金が足りないと言ってきます。
ジェフは効果が無いなら計画は中止する、トーニャは妨害工作なんてどうでも良いと言いましたが、ショーンは今更計画を中止する訳にはいかないと反対します。
そして1994年1月6日、ジェフの元に慌てた様子のトーニャから電話がかかって来て,急いでTVを付けるように言われます。
TVのニュースはどの局も、ナンシー・ケリガンが練習中に何者かに膝を殴打された事件について報じていました。
脅迫状を送るだけの筈が、何処で間違ったのかショーンが雇った男達が暴走してしまい、ナンシーを襲撃してしまったのです。
ジェフとトーニャは大変な事になったと頭を抱えますが、ショーンだけは「俺たちが歴史を変えた。これで噂が広まれば、俺を雇いたいとオファーが殺到して大金が入って来る」と大喜びしていました。
「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」ラスト最後の結末
ジェフとトーニャは「何も知らなかった」と口裏を合わせようとしますが、事情聴取にきたFBIから実行犯の名前を聞き「どこから情報が漏れたんだ?」と動揺します。(実は、調子に乗ったショーンがあちこちで「俺がナンシーを襲撃させた黒幕だ」と吹聴していたのです。
ジェフやトーニャの前では「拷問されても喋らない」と豪語していましたが、後に自宅にやってきたFBIに「全てジェフの指示だった」とあっさり白状します)
事件が起きた当初は、ナンシーのライバルとしてマスコミもトーニャに注目していましたが、襲撃に関与しているらしいと分かって来るにつれてある事ない事をセンセーショナルに報道し始めます。
やがてトーニャもジェフが首謀者ではないかと疑いだし、二人の間もギクシャクし始めます。
そして、トーニャが「ジェフが主犯だ」とFBIに供述し、それをジェフが知った事で亀裂は決定的になります。
全米スケート協会はトーニャのオリンピック代表資格取消も検討しますが、トーニャは法的措置を盾にそれを回避し、半ば強引にリレハンメルオリンピックに出場します。
しかし、様々なプレッシャーから試合の前のトーニャの精神は極限状態になっていました。
出場前、靴紐が固すぎると制限時間ぎりぎりまで結び直し、競技中に靴紐が切れるアクシデントに見舞われます。
演技を中止し、泣きながら審判団にやり直しを頼み込み、認められて演技し直すものの結果は8位に終わりました。
オリンピックの後には襲撃事件の判決言い渡しが待っていました。
シェフ、ショーン、実行犯には懲役18か月。
トーニャには罰金と500時間の奉仕活動、そして今後すべてのスケートの大会への出場禁止が言い渡されました。
その判決にトーニャは青ざめます。
「私からスケートを除いたら何もありません。懲役刑を受けても構いませんからスケートを続けさせてください。私からスケートを奪わないでください」と涙ながらに訴えますが、聞き入られる筈もありませんでした。
その後、トーニャはラスベガスで女子プロボクサーとしてデビューします。
「世間は分かりやすい悪人を作り出そうとするものよ。結局、みんな私の事を見たいって事よね」
今では再婚して一児をもうけ、大工仕事などをして生計を立てているトーニャは、インタビューを受けながら満足そうに笑うのでした。
THE END
「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」見どころ
世界中の話題となった「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の首謀者と言われたトーニャ・ハーディングの生涯を描いた作品です。
事件当時、トーニャはとんでもない悪人の様に報道されていました。
しかし、この作品で彼女がどのような生い立ちで、どれだけ周りと戦いながらフィギュアスケートを続けてきたかを知ると「あの事件の裏で、こんな事が起こっていたのか」と、マスコミの影響力や事件の複雑さに驚かされます。
また、裕福な家の出の選手しか続けることのできないフィギュアスケート界の構造に少し嫌悪感を覚えたりもしました。
どこかで何かが違っていたら、逆境を跳ね返して女子選手で全米初のトリプルアクセルを決めた偉大な選手の物語、または夫や母親のDVに耐えながら偉業を成し遂げた感動の物語となっていたような話です。
しかし、ジェフの親友・ショーンが立てた妄想交じりのバカげた計画のせいでトーニャは大悪人の様に扱われ、今では段々と忘れられつつある存在となってしまいました。
それを思うと少し可哀そうにもなりますが、あそこまで周囲に対してけんか腰で接していては、優雅な雰囲気のフィギュアスケートの世界では浮いていただろうなと納得もしました。
まるで本人たちの映像を見ているような気になり、作品の世界に引き込まれてしまうほどに俳優たちの存在感が際立っていました。
特にラヴォナ役のアリソン・ジャネイが太々しい雰囲気を見事に再現していて、ラストで流れる実際のインタビューとそっくりで驚かされたり、トーニャ役のマーゴット・ロビーとインタビュー中「世間が敵になったんだ。アンタらだよ。アンタらが敵だったんだよ」と、時々カメラをにらむ眼光の鋭さは真に迫っていたりして素晴らしかったです。
勿論ストーリー展開も見事で、重苦しい話が少しコミカルな感じで作り上げられたのは流石です。アカデミー賞にノミネートされたのも納得の出来でした。
事件の内幕をシリアスに描いているのかと予想して見てみたら、アクが強く個性的な人々が次々と出てきて「本当にこんな事が起こったの?」と思ってしまう程に突拍子もないストーリーがコメディのように展開されて「苦労すれば人間が良くなるって訳でもないんだよね~」と引き込まれてしまう秀作でした。