映画「キャプテン・フィリップス」は、トム・ハンクス主演、ポール・グリーングラス監督の2013年公開の作品です。
この映画「キャプテン・フィリップス」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末と見どころについて紹介します。
海賊に襲撃された貨物船船長の運命を、緊迫感たっぷりに描く「キャプテン・フィリップス」をお楽しみください。
「キャプテン・フィリップス」あらすじ
米国貨物船マークス・アラバマ号。
ソマリア沖を進む船は、海賊の襲撃に遭いました。
これは、2009年4月8日に実際に発生した事件を基に描かれた映画です──
アラビア半島東部オマーンの港町にあるサラーラ港を出港した、米国貨物船マークス・アラバマ号。
目的地は、アフリカ大陸東部に位置するケニア。
インド洋に面した、湾岸都市にあるモンバサ港です。
援助食糧、飲料水その他、積載量は3000トン以上。
船長は、50代のリチャード・フィリップス(トム・ハンクス)。
米国バーモント州アンダーヒルの自宅から、空港まで送ってくれる妻。
心配事が尽きない、子供たちが居る平凡な男です。
フィリップスらが向かうケニア、その隣国ソマリア・エイルという海辺の町。
「デカく稼ぐチャンスだぞ!」との煽りに、血眼になって群がる若者。
建ち並ぶ小さな家は、トタン屋根にボロボロの壁。
漁業での暮らしは成り立たず、今ではシージャックのためにある古びたモーターボート。
破綻国家で、ボスや将軍に隷従する痩せ細った彼ら。
銃器を手にした海賊となり、手柄を上げる事で命をつなぎます。
マークス・アラバマ号は、イエメン、ジブチに囲まれたアデン湾を通過。
無事だったのは護衛する海上部隊がいたからに過ぎず、この先のソマリア沖は無法地帯。
海賊は暴力行使も厭わないと知りながらも、航路変更は出来ません。
単独での航海となった早朝、抜き打ちで緊急時訓練を行う船長フィリップス。
そこに、ソマリア・エイルの武装した若者が乗るモーターボート2艘が迫り、その距離2.3km。
援軍なしの状況、1艘に500mまで迫られるも、凌いで振り切るマークス・アラバマ号。
しかし、その1艇は翌朝も出現すると、極上の獲物を逃がすまいと繰り返し発砲。
攻防の末、梯子を掛けられたマークス・アラバマ号に、4人のソマリア人が乗船。
「…アルカイダじゃない」と、リーダー格の男ムセ(バーカッド・アブディ)。
操舵室に残る、フィリップスと数名の船員を拘束し占拠します。
そして・・・
「キャプテン・フィリップス」ネタバレ
甲板、調理場を歩き、船内に身を潜めた船員を捜す海賊。
十数名の船員が潜む機関室のドアを開け、足を踏み入れた1人が悲鳴を上げました。
それは、ソマリア人の最年少ビラル。
フィリップスの会話を無線で聞き、裸足だと知った船員が撒いたガラスを踏み負傷します。
張り詰めた空気の中、海賊を翻弄する船員。
そして、機関室で1人になったムセに飛び掛かり、拘束に成功。
「ブリッジ応答せよ!お前らのボスを捕えたぞ 船長と交換しよう」
フィリップスはマークス・アラバマ号の救命艇、そして3万ドルを海賊に持たせます。
本来なら数百万ドルを手に入れるはずだった海賊は、ムセを人質に取られ失敗。
頭に血がのぼり怒号を飛ばす彼らは、船員に銃口を向けフィリップスを救命艇の中へ。
解放されたムセが救命艇に乗り込み、フィリップスは外に出るはずでした。
しかし、ムセの合図で背後から殴打。
「…お前は、人質だ」
航進する、アメリカ海軍駆逐艦ベインブリッジ。
艦長カステラーノに、マークス・アラバマ号が海賊に襲撃されたとの情報が入ります。
任務は、拘束された船長フィリップスが乗る救命艇の拿捕。
海賊にとって、身代金を要求できる格好の餌食フィリップス。
ソマリアに上陸される前に、遂行しなければなりません。
夜の海、マークス・アラバマ号、そして無人偵察機が救命艇を追跡します。
狭い座席で眠ったフィリップスは、海賊の1人ナジェの怒号で目を覚ましました。
最年少ビラルにも容赦しない、気性の荒いナジェ。
ガラスで怪我したビラルの足を手当てするフィリップスが、包帯を裂くナイフを取り出すと激昂します。
暑く淀んだ空気、波に押し戻されて進まない救命艇。
無線にも応えないソマリアの仲間に、焦りが募る海賊。
その夜、やっと無線が繋がっても、船の襲撃に失敗した4人は罵られるのでした。
「…将軍は、船長抜きなら戻るなと言ってる」
大金を得られても、彼らの暮らしが豊かになる訳ではない。
心では葛藤し、それでも海賊行為をするしかない彼らは、苦悶の表情を浮かべます。
追い打ちを掛けるように、救命艇に浴びせられるライトの光。
警笛を鳴らす駆逐艦ベインブリッジの出現で、慌てふためく海賊。
「フィリップス船長を引き渡せば、全て解決だ!救命艇、応答せよ」
無線機を握りしめ「アルカイダじゃない!俺たちは漁師だ」と、応えるムセ。
圧倒的な戦力差を前に体を竦めるも、人質フィリップスを盾に身代金を要求。
互いに譲らないまま再び朝を迎え、交戦区域へと突入します。
護衛を伴い当初の任務であるモンバサ港へと舵を切る、米国貨物船マークス・アラバマ号。
駆逐艦ベインブリッジで指揮を執る艦長カステラーノは、海賊と接触を図るため複合艇を送ります。
士官の呼び掛けに姿を現したのは、ムセと銃を突き付けられた人質フィリップス。
「家族に連絡をしてくれ “今ここに居る”と…座席番号15だ!」
そう叫ぶフィリップスの意図が伝わった艦内は、位置の特定を開始。
接近する複合艇に、銃口や撮影カメラを向けられ激昂するムセ。
救命艇内では、フィリップスに銃を押し当てるナジェが、飛び交う怒号に狂乱し発砲。
事態の悪化に複合艇は退避するも、弾はフィリップスの横を通過しただけでした。
「乗組員の命に責任を持て 彼らを危険に晒すのか?一緒に道を探ろう」
艦長カステラーノに説かれるムセは、少しの沈黙ののち降伏の意志はない返答をします。
ソマリアに到着するまで、およそ12時間。
アメリカ海軍特殊部隊の艦船が、駆逐艦ベインブリッジを援護。
出現した2艦を凝視する、ムセとナジェ。
救命艇を操縦するエルミは、立ち上がるフィリップスに気づき声を荒げます。
血が滲む手を押さえ焦燥に駆られるムセに、投降するよう声を掛け続けるフィリップス。
「ここまで来て、今さら降参は出来ない!」と、虚ろな表情のムセ。
不条理な人生を送るソマリア人の若者に、フィリップスは口ごもるのでした。
夜、小便を理由に、船べりに立つ最年少ビラルの隣に来たフィリップス。
隙を突いて海に飛び込むと「逃がすより殺す!」と、ナジェは乱射。
空からは、シールズ隊員がパラシュートで降下。
照明弾が発射され、抵抗するフィリップスと逃がさないムセを捉えた艦長カステラーノ。
救命艇に連れ戻されたフィリップスは、激昂するナジェに暴行されます。
「やめろ殺すな!俺たちが殺される」と、力尽くでナジェを制止するムセ。
しかし、救命艇は包囲され、追い詰められるムセもまた銃を発砲して威嚇。
殺すと喚き、フィリップスの額に銃を押し当てました。
「君は漁師じゃない!」と、ムセの心に訴えるフィリップス。
ただの漁師でありたかった、破綻国家のシワ寄せを受ける4人の若者。
美味い物を食って、車だって買いたい、ソマリアではない別の国で──
「…救命艇へ お金のことを話し合おう。 ……君たちの族長がここに来る」
無線で呼び掛けるのは、艦長カステラーノから指揮権を引き継いだ、シールズ指揮官(マックス・マーティーニ)。
フィリップスの救出に万全を期すシールズ隊員が、空と海で待機。
身元が割れ、疑心暗鬼になるナジェ。
しかし、ムセは「すべて上手く行く」と、フィリップスの額に押し当てる銃を下ろします。
上空のヘリや軍艦が夜の海をライトで照らし、救命艇に接近する海軍の複合艇。
船べりに来たフィリップスを確認した士官は「船長、今までの席に戻って」と、合図。
事態を収束させる取り引きのために、1人で海軍の複合艇に乗り込むムセ。
そのまま軍艦にあるヘリ格納庫に誘導されると、族長が来るのを不安そうに待ちます。
「キャプテン・フィリップス」最後のラストの結末は?
軍艦とロープで繋がる救命艇は大きく揺れ、慌てふためくナジェと操縦士のエルミ。
ゆっくりと確実に、軍艦へと引き寄せられる救命艇。
自分は救出されるのか?或いは、海賊共々せん滅。
最後が近いと推察するフィリップスは、家族への手紙を書き残します。
「書くのはよせ!殺されるぞ」と、案ずる最年少ビラル。
その行為はナジェに見つかり、ビラルは命令通りにフィリップスを殴打。
鬼気迫る形相のナジェとエルミに縛り上げられ、響くフィリップスの叫び声。
緊張が走る、シールズ指揮官。
救命艇に残った3人の海賊に、狙撃手は照準器を合わせます。
極限状態のフィリップスに近づくビラルは、あどけなさが残る16歳ほどの少年。
「武器を捨てて降参しろ」と、涙を滲ませるフィリップスに、ナジェの命令通り目隠し。
しかし、差し迫った恐怖に「やめろ!殺すな」と、ナジェに抵抗するビラル。
同様に、ムセや族長が解決すると必死にナジェをなだめる、操縦席に座るエルミ。
そんな2人に「誰も来るもんか!」と、ナジェは絶望の声を荒げるのでした。
狙撃手は海賊に、海賊は人質フィリップスに銃口を向ける一触即発の状態。
そして、3人の海賊を捉えた次の一瞬、狙撃手が撃ち抜きます。
突然の銃声に「何なんだ?」と、狼狽するフィリップス。
必死に目隠しをずらした彼が見たのは、ナジェの死体と船内に飛び散った3人の血でした。
救命艇から救出されたフィリップスは、軍艦の医療室へ。
軍艦のヘリ格納庫では、シールズ隊員がムセを拘束。
仲間の死を伝えられたムセは、茫然自失──
2009年4月8日に発生した、米国貨物船マークス・アラバマ号の襲撃事件。
人質となった船長フィリップスが救出されたのは、4月12日でした。
THE END
「キャプテン・フィリップス」見どころ
監督・ポール・グリーングラス×主演・トム・ハンクス
この初タッグ、しかも実話を基にした作品とあって、公開前から傑作を確信した方も多かった事でしょう。
大型貨物船を襲撃した海賊は、船長リチャード・フィリップスを拉致。
空腹を満たす食糧を奪うでもなく、最大の目的は身代金を要求するための人間の捕獲です。
圧倒的な悪だと思い至る、ソマリア人の海賊たち。
しかし、緊迫の134分を観た者は、不条理で満ちた世の中に思いを巡らせる事になります。
内戦によって、無政府状態になったソマリア。
その間、他国は漁獲できないはずの排他的経済水域に外国船が入域。
「漁師だ」と言っていたムセは、暮らしのために必要な魚を奪われた現実を嘆きます。
また、船員が疑問視するのは、海賊行為が多発している航海ルートを推し進める現実です。
非武装の貨物船マークス・アラバマ号。
船員は戦士として乗船しているのではなく、運送業務に従事しているだけ。
海賊と遭遇し運送の中断を訴える船員と、断固として任務遂行を優先させる船長の対立もあります。
燃料費等、莫大なコストが掛かる海上輸送のリスクとデメリット。
武器が溢れるソマリア国内の矛盾など、本作を通して様々な問題を考えさせられます。
ソマリア・エイルの浜辺。
外に出ていた女子供が慌てて家の中へ身を隠す理由は、元締めが乗る車が来たから。
「…将軍の命令だ!」と威嚇発砲、ハッパを噛み荒ぶる若者が海賊となって海へ出る。
同じ町の人間同士でもいがみ合い、自分の存在価値を外国船の襲撃成功で誇示するのです。
突如、レーダーに示された、2艇の追尾船。
「訓練ではない、本番だ!」とのアナウンスに、マークス・アラバマ号の船員の顔つきが変わります。
放水やジグザグ走行を試みる、マークス・アラバマ号。
船員の決死の覚悟、危機を脱したいとの願いを蹴散らす、海賊の凄まじい執念と鬼の形相。
小型モーターボートから大型貨物船に乗り移る場面は、息をするのも忘れてしまうほどの衝撃。
そして、制圧するために怒涛の如く浴びせられる、母国語のソマリア語(なのでしょうか?)
ずっと銃口を向けられる、あの場に自分が居たなら……想像するだけで体が震えます。
頬がこけ、まさに骨と皮だけのような、リーダーのムセ(バーカッド・アブディ)。
鋭い目つきのナジェやエルミ、そして最年少ビラルの怯える顔。
公開当時、彼らが俳優ではなく素人だと言うことも、大きな話題になりました。
リーダーのムセも然る事ながら、一番猛々しいナジェの存在感も際立っています。
観る者の心を鷲掴みする彼らは限りなく野蛮で、やはり息が詰まります。
しかし、彼らも人生に悶え苦しんでいる……そんな思いを抱かされるのです。
狭い救命艇で、時間経過と共に疲弊して行く海賊4人とフィリップス。
その終止符を打ったのは、アメリカ海軍特殊部隊。
最強とされる狙撃手によって、ナジェ、エルミ、ビラルは同時に射殺されました。
トム・ハンクスが魅せる、精神的ダメージを受けたフィリップスの、意識が混濁した有り様は圧巻。
本作のパワーワードである「生きて還る──」を果たし、胸が熱くなります。
そして、拘束されるムセの姿に、言い知れない空虚感を覚える方もきっと居るでしょう。
ただの救出劇にとどまらない、『キャプテン・フィリップス』。
どうぞ、最後までご堪能下さい。
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