映画「阪急電車 片道15分の奇跡」は、中谷美紀主演、三宅喜重監督の2011年の日本映画です。
この映画「阪急電車 片道15分の奇跡」のネタバレ、あらすじや最後ラスト、結末、見所について紹介します。
列車に乗り合わせた人々が織りなす群像劇を描く「阪急電車 片道15分の奇跡」をお楽しみください。
原作は有川浩の連作短編小説集です。
三宅喜重監督はこの「阪急電車 片道15分の奇跡」が劇場用映画のデビュー作となりました。
「阪急電車 片道15分の奇跡」スタッフ・キャスト
■ スタッフ
監督: 三宅喜重
製作: 福井澄郎、松下康、見城徹、角和夫、桐畑敏春、中村仁、越智常雄
製作総指揮:籏啓祝、服部洋、小玉圭太、若林常夫、三宅容介、伊藤隆範、村上博保
脚本: 岡田惠和
撮影: 池田英孝
音楽: 吉俣良■ 主要キャスト
高瀬翔子:中谷美紀
森岡 ミサ:戸田恵梨香
伊藤 康江:南果歩
権田原 美帆:谷村美月
門田 悦子:有村架純
萩原 亜美:芦田愛菜
小坂 圭一:勝地涼
カツヤ:小柳友
マユミ:相武紗季
羽田 健介:鈴木亮平
披露宴の会場係:大杉漣
小峰 比奈子:安めぐみ
小林駅の駅員:菊池均也
門田 悦子の友達:森田涼花
樋口 翔子:高須瑠香
健吾:高橋努
遠山 竜太:玉山鉄二
萩原 時江:宮本信子(若い頃の時江:黒川芽以)
「阪急電車 片道15分の奇跡」あらすじ
多くの人々が利用する阪急電車。
そこには沢山の人の人生があり、物語があります。
自分を裏切った元彼の結婚式に乗り込んだOL、イケメン彼氏のDVに悩む女子大学生、進路に悩む女子高生、曲がった事が大嫌いな老婦人、ママ友の輪から抜け出せないでいる主婦、コンプレックスから抜け出せないでいる女子大生など…
それぞれの人生が絡み合う時、そこには心温まる物語が生まれます―――。
「阪急電車 片道15分の奇跡」ネタバレ
美人でしっかり者の高瀬翔子(中谷美紀)は、結婚予定の彼氏(鈴木亮平)に呼び出され、突然別れ話を持ち出されます。
『お前は一人でも大丈夫だろ。でも彼女には俺がいないと駄目なんだ』そう熱く語る男(鈴木亮平)の隣でハンカチを握りしめ泣く女(安めぐみ)。
その光景を見ながら翔子(中谷美紀)は別れる代わりに…と、自分を結婚披露宴に招待するという約束を取り取りつけました。
当日、翔子(中谷美紀)は真っ白なドレスを着て出席します。
少女趣味の花嫁は絶対に選ばないであろうエレガントなドレスに身を包んだ翔子(中谷美紀)はとても美しく、その姿を見せつける事で、元彼に失ったものの大きさを後悔させたかったのです。
一瞬自分に見とれた元彼に溜飲を下げる翔子(中谷美紀)でしたが、そのままの格好で乗った電車内では涙が止まりません。
それを見て、小さな女の子が声を挙げます。
『花嫁さんだ』
その言葉を咎めたのは女の子の祖母でした。
孫の亜美(芦田愛菜)と一緒に乗っていた萩原時江(宮本信子)は、優しく声をかけると自分の隣へ誘い、翔子(中谷美紀)の話をゆっくりと聞いてくれたのでした。
人の優しさに触れたことで落ち着きを取り戻した翔子(中谷美紀)に時江(宮本信子)は、とある駅で降りる事を勧めます。
そして翔子(中谷美紀)は、見知らぬ駅に降り立ち、新しい自分の始まりを予感するのでした。
そんな翔子(中谷美紀)と時江(宮本信子)の姿を見ている者がいました。
女子大生の森岡ミサ(戸田恵梨香)です。
彼女はイケメンだけれどDVの酷いカツヤ(小柳友)と付き合っていますが、最近その横暴な振る舞いにとても悩んでいました。
かといって別れを切り出すのも怖いという悪循環に陥っていたミサ(戸田恵梨香)はある時、楽しそうに彼氏の話で盛り上がる女子高生三人組と乗り合わせます。
その中の一人門田悦子(有村架純)には付き合っている彼氏がいるようです。
高校生の彼女に対して、社会人の彼は悦子(有村架純)の事をとても大切にしているようで、一線を越えるのは彼女の大学受験が終わってから、と決めているらしい…。
そんな話を楽しそうにする高校生たちを見ていて、ミサ(戸田恵梨香)の中にも勇気と行動力が生まれました。
もっと自分を大切にしてくれる人と付き合うべきだと、カツヤ(小柳友)の部屋に置いてある私物を、彼の留守中にこっそり運び出して別れる決心を固めたのです。
カツヤと別れたミサ(戸田恵梨香)は、ある日電車の中でとてもやかましい中年女性の集団に出会います。
我先にと車内に乗り込み、座ろうとしている女性の席目がけてカバンを投げ席取りする、人数をかさに着たかのようなその態度に憤るミサ(戸田恵梨香)でしたが、席を取られた女性はミサ(戸田恵梨香)に向かってにこやかにほほ笑み、別の車両へと移って行ったのでした。
終始やかましい軍団に辟易していたミサ(戸田恵梨香)ですが、その中に具合が悪そうな女性がいる事に気が付きます。
胃を抑えて苦しそうにしている彼女に気付くこともなく喋り続ける軍団に痺れを切らし、ミサ(戸田恵梨香)が介抱し一緒に途中の駅で降りる事になりました。
女性の名は伊東康江(南果歩)。
子供の付き合いから発生したママ友軍団から抜けられず、誘われるたびに、高級な食事や彼女たちの振る舞いがストレスとなって、胃を痛めていたのでした。
そんな彼女に苦言を呈するミサ(戸田恵梨香)。
あなたが電車を降りる程体調を崩しても誰も一緒に降りようとはしなかったじゃないか、その言葉に弱々しく頷いた康江(南果歩)は、しばらく駅で休んだ後、家族の待つ家へと帰ります。
高級なランチを一人で食べるより、安くても家族三人で食べる食事の方が美味しい、家族の顔を思い浮かべる康江(南果歩)の顔を自然と綻ぶのでした。
自分の与り知らないところで、ミサ(戸田恵梨香)の恋のけじめをつけさせた女子高生の門田悦子(有村架純)は、受験の事で悩んでいました。
自分の進みたい大学はあるものの、そこを受けるには偏差値が足りない為、受験する事自体を悩んでいたのです。
煮詰まってしまった悦子(有村架純)は、彼氏の遠山竜太(玉山哲司)を呼出し、ホテルに誘って彼に八つ当たりしました。
自暴自棄になっている悦子(有村架純)を見て、彼女の悩みごと包むように抱き締めた竜太は、それでも、こんな形で初めてを迎えるのは嫌だ、と言います。
大事だから、大切にしたい、だから頑張ろうよ、そう不器用だけど真摯に語る竜太(玉山哲司)を見て悦子(有村架純)の気持ちは自然と癒されたのでした。
翌日、希望大学の前に立った悦子(有村架純)は、たまたま通りかかった大学生カップル、に受験について質問をします。
急な質問に戸惑いながらも『むっちゃ勉強したよ』と率直に話してくれた権田原美帆(谷村美月)と小坂圭一(勝地涼)に礼を言って、竜太(玉山哲司)の元に駆けてくる悦子(有村架純)の表情は明るく輝いていました。
悦子(有村架純)に勇気を与えた美帆(谷村美月)と圭一(勝地涼)もまた、電車の中で縁を結んだ二人です。
地方から進学の為都会に出てきた美帆(谷村美月)は、イマイチ周囲に馴染むことが出来ず、大学生になったら名字からとったあだ名『ゴンちゃん』を卒業したいと思っていたのに、それを友達に打ち明けることが出来ず、あだ名は『ゴンちゃん』のままでした。
そんなある日、電車の中で空を熱心に見上げている圭一(勝地涼)に気付きます。
気になって一緒に見上げてみるとヘリコプターが数機。
圭一(勝地涼)は、パンク風なファッションに身を包む軍事オタクなのですが、その奇抜な見た目から周囲に溶け込めず孤立している地方出身の大学生でした。
ヘリコプターを見ながら言葉を交わした二人は、持っていた参考書がきっかけで、同じ大学に通っている事に気が付きます。
共通点の多かった二人は急速に惹かれあい、圭一(勝地涼)から『ミホちゃん』と呼ばれる彼女の顔は幸せそのものでした。
「阪急電車 片道15分の奇跡」最後のラスト結末
その日も二人は電車に乗ってデートを楽しんでいました。
しかしそこへ、もの凄く大きな声で喋って大笑いする中年女性の集団が乗り込んできました。
周囲の迷惑を顧みない大騒ぎに圭一(勝地涼)も美帆(谷村美月)もドン引きです。
それを見ていた亜美(芦田愛菜)が急に『なんであのおばちゃんらうるさいの?学校でも電車では静かにしなさい、って言われるよ』と、時江(宮本信子)に訪ねました。
心底不思議そうな顔をした孫娘にボヤキながらも答えようとしたその時、亜美(芦田愛菜)の言葉に憤慨した一人の中年女性が食って掛かってきました。
『どんな躾をしているのか』そう言って激高する女性に時江は、スッと背筋を伸ばして立ち上がると真っ向から論破していきます。
その姿を称賛のまなざしで見つめていた圭一(勝地涼)と美帆(谷村美月)は、思わず拍手をしてしまうのでした。
ラストシーン。
時江(宮本信子)に勧められた駅が気に入った翔子(中谷美紀)はその街に引越しをしていました。
駅に降り立った彼女の前に数人の小学生が走り込んできます。
コソコソと話す内容は、どうやら誰かを仲間外れにする相談の様でした。
そこへ一人の少女が降りてきます。
わざわざ彼女に近付いて、芝居がかった台詞回しで孤立させようとする少女たち。
それを見ていた翔子(中谷美紀)は、少女の名前が自分と同じ『ショウコ』であることに気が付きました。
なんだか縁を感じた翔子(中谷美紀)は、こっそり少女にに話しかけ勇気づけます。
俯きがちだったショウコの顔が、翔子(中谷美紀)の言葉で少しづつ前を向き始め、最後には笑顔で走り去ったショウコ。
その背中を見送った翔子(中谷美紀)は、電車から降りて来たミサ(戸田恵梨香)と目が合いました。
やかましい中年女性に席を奪われたのが翔子(中谷美紀)だったことに気付いた二人は、意気投合してどちらからともなく食事に誘います。
またここで、二つの人生が合わさって新しい物語が生まれるようです。
完。
「阪急電車 片道15分の奇跡」見どころ
とっても温かな物語です。
原作がとても上手くまとめられた脚本、そして演出だな、と思いました。
実は原作内にはもう一組、この阪急電車に乗り合わせるカップルがいるのですが、そこは気持ちいいほどサッパリとカットされています。
確かスペシャルドラマで放送されたように記憶していますが、その二人がいなくても自然と物語を繋げているので、違和感なく映画の中に入り込めました。
登場人物の誰もが、心に孤独や辛さを抱えています。
この物語の素敵なところは、その辛さを癒したり悩みを解決へと導くキーパーソンが、たまたま電車に乗り合わせただけの他人だという点ではないかと思いました。
これが、孤独を抱えていても人は一人ではないんだ、という温かなメッセージを伝えてくれた気がするのです。
そういった何人もの登場人物が繋がっていく展開は岡田准一主演の「陰日向に咲く」を思い出しました。
唯一残念だったのが、作品中の時江がやかましいおばちゃん達に注意するシーン。
この場面、映画ではバックミュージックによって台詞が消されているんですが、原作ではきっちりおばちゃんたちを論破するんです。
啖呵を切るようにして紡ぎだされる台詞の数々がとても印象深かったので、時江を宮本信子さんが演じられるなら、と期待していた部分でもありました。
おばあちゃん、と言われる年齢になっても筋の通らない事には立ち向かう、そんな格好よさを映画でも見たかったな、と思います。
人は誰でも、ふとした時に淋しさを覚えたりするものですが、それを埋めてくれるのはなにも身内や友達だけではない、偶然の出会いで助けられることもあるという、人の温かみに満ちたこの物語は、見ると力を与えて貰えるような気さえします。
また、中谷さんの身に着けている服や小物がとても素敵で、印象的でした。
ラストシーンで翔子が羽織っているショールは、エスニック柄がカジュアルなイメージを持たせながらも、凛とした中谷さんの印象と引き立てていたと思います。
原作の持つ世界観を大切に作られた、所謂『実写物』と呼ばれる映画の中では成功作品だと思いますので、原作ファンの方はもちろん、孤独や淋しさを抱えて少し落ち込んでいる方にもご覧になって頂きたいです。
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