映画「泣くな赤鬼」は、堤真一主演、兼重淳監督の2019年の映画です。
この映画「泣くな赤鬼」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
元教師と生徒が絆を取り戻す物語「泣くな赤鬼」をご堪能ください。
「泣くな赤鬼」あらすじ
2018年4月、病院の待合室。
斎藤智之(柳楽優弥)は、一人の“しょぼくれたオヤジ” に気づき声を掛けます。
「センセ~…赤鬼先生!」
そう呼ばれ、振り返ったのは智之の “最後の先生” 小渕隆(堤真一)でした。
「ゴルゴ…だよな?」
──2005年4月、城南工業高校・野球部。
新入部員の中で、一際威勢の良い一年生・斎藤智之(堀家一希)。
野球センスもあり、甲子園への熱い気持ちを持つ智之に小渕も期待していました。
入部早々、漫画『ゴルゴ13』の作者が “さいとう” だからと言うだけで、先輩に “ゴルゴ” とあだ名を付けられます。
この二人の感動の絆の物語が始まります。
「泣くな赤鬼」ネタバレ
「努力は報われる!」がモットーの小渕は、甲子園を目指す熱血監督。
その厳しい指導に部員たちは、陰で “赤鬼” と呼びながらも心を一つに練習に励んでいました。
ところが、監督の指示を無視して自分本位のプレイをすると言う問題児だったゴルゴ。
“悔しい感情” が分からないと言い、努力、我慢することに意義を見出せないゴルゴを、赤鬼は試合に出す事はありませんでした。
赤鬼はその精神を鍛え直そうと、和田圭吾(武藤潤)とゴルゴに三塁手のポジション争いをさせる事にします。
おなじ中学で、野球を続けてきたゴルゴと和田。
実力不足ですがゴルゴと真逆で努力家の和田は、赤鬼の練習に必死に食らい付きます。
結局、ゴルゴの蔑む態度は一向に変わらず、グラウンドに来る事はありませんでした。
それでも赤鬼だけは、まだ退部した訳では無いとゴルゴの背番号を手元に残し、戻って来るのを待っていました。
じつは、心の隅に野球への思いがくすぶっていたゴルゴ。
ある晩、ひとり黙々とバットを振る和田を見つけ声を掛けますが、ゴルゴは冷やかす事しか出来ません。
そんなゴルゴに、和田は部活を辞めるよう声を荒げます。
さらに「赤鬼だって、同じこと言ってた…」と、口走るのでした。
翌日、ゴルゴは退部届を赤鬼に渡します。
そして、誰とも分かり合えないまま3年生、さいごの夏を前に学校を辞めてしまいました。
2007年7月、地区予選・準決勝を家のテレビで見る智之。
城南は勝ち、インタビューに答える小渕が「甲子園に行きます…」と、答える姿を彼はジッと見つめます。
甲子園初出場を懸けた、地区予選・決勝。
2対2の同点、9回の裏ツーアウト満塁、一打サヨナラのチャンスは相手の陵青高校。
城南のピッチャー・山口の投げた球は打ち返され、サード・和田の前へ・・・
和田は捕ることが出来ず、甲子園への夢は途絶えたのです。
力を落とす城南野球部、和田や小渕の姿を智之はスタンドから見ていました──
妻・雪乃(川栄李奈)に “赤鬼” を紹介する智之。
雪乃は、まさに赤鬼のような小渕の顔を見て無邪気に笑いますが、彼らの間には微妙な空気が流れていました。
金髪に柄シャツ、見た目こそヤンチャですが、妻と子供のため仕事に励むオトナになった智之。
対して、今の小渕は赤鬼とは言えないほど、無気力なオヤジでした。
高校を途中で辞めてしまい、ゴルゴと呼ばれるのも久しぶりだった智之。
赤鬼先生と別れた彼の顔は、どこか寂しそうです。
智之が通っていた城南から異動して、今は進学校・西高で野球部の監督をしている小渕。
生徒からは “ぶっち” と呼ばれていました。
進学校とはいえ真剣に部活に取り組みたい部員たちは、まともに指導をしてくれない小渕に不満を抱いていました。
西高のレベルでは、あの頃の城南の野球は出来ないと小渕は決めつけていたのです。
城南に居た頃の小渕は野球部が最優先、同じ年頃の娘・佐知(佐藤玲)の事も、妻・陽子(麻生祐未)に任せきり。
久しぶりにゴルゴに会ったと伝えると、陽子も彼の事を覚えていました。
これまで小渕が見て来たチームで一番甲子園に近かったのが、ゴルゴや和田が在籍していた時代でした。
小渕の最も熱の入った、厳しい指導を受けたのが彼らだったのです。
ある日の放課後、智之の妻・雪乃が西高に小渕を訪ねて来ました。
すると、彼女は小渕の顔を見るなり泣き出してしまいます。
智之はガンを患い、近づいている死に怯えていました。
母・智美(キムラ緑子)そして雪乃、まだ赤ん坊の息子・シュウとの別れ。
そんな智之の姿に雪乃は「赤鬼の話しばかりするトモ君に顔を見せて…」と、言うのです。
今更、何が出来る…と、気になりながらも踏み出せない小渕でしたが、妻の陽子、娘・佐知に後押しされ、教え子・ゴルゴに最期まで向き合うと決意するのでした。
小渕が病室を訪ねると、笑顔で迎える智之。
そんな夫の顔を見て、雪乃は嬉しそうにしています。
小渕が「お前、何か欲しいものとか無いのか?」と、聞くと「会いたい人なら…」と、雪乃は智之が良く話すと言う “和田” の名前を明かします。
早速、小渕は和田に会いに行くと、スーツを着こなす立派な社会人になった彼の姿に目を細めます。
「ゴルゴって覚えてるよな?…斎藤智之」と、彼がガンに侵されている事を伝えました。
すると、和田はゴルゴと三塁手を競わされた時の話をします。
「あいつの事を、見放したのは先生じゃないですか…」
そう言って和田は、城南の野球部員は先生の夢のための道具でしかなかった、自分はゴルゴを奮起させるためだけに利用されたと、思いを吐き出し去ってしまいます。
あの頃、ゴルゴの事を妬んでいた和田。
そして、あの夜「赤鬼だって、同じこと言ってた…」と、ゴルゴに吐いた嘘。
和田は、後悔していました・・・
はじめて、和田の気持ちを知り “甲子園” に翻弄されていた、あの頃の自分を間違いだったと後悔する小渕。
そんな心の内をさらけ出した小渕に、智之は「また、野球がやりたい」と、言いました。
数日後、西高の野球部員は、いつもとは違う小渕の姿を見ます。
あと僅かな時間しか残されていない教え子のために、一緒にグラウンドに立って欲しいと“ぶっち” が頭を下げているのです。
病院では、母・智美と妻・雪乃が医師に外出許可を願い出てくれ、智之の夢を叶えようとしていました。
グラウンドに立つ姿を雪乃とシュウに見せたいと、母に素直に話す智之。
みんなが、智之のやり残した事に全力で手を貸してくれました。
まるでピクニック気分で、たくさんのお弁当を持った雪乃とシュウ、智美。
西高へ着くと「こんにちは!」と、野球部員が智之を迎えてくれました。
グラウンドの土の感触、グローブとボールを持ったゴルゴはキャッチボール、そして赤鬼のノックを受けます。
「死ぬ前にやり残した事が、野球なんてさ」と、うしろに付いてくれる西高の生徒に話し掛けるゴルゴ。
バカげた事をしているだろうけど…、笑うゴルゴは「ありがとう」と、心から感謝しています。
思うように身体が動かず球を捕れないゴルゴですが「もう一丁来い!」と、気合を入れ直し身体を投げ出してキャッチして見せるのでした。
雪乃と智美も、その姿に笑顔で喜びます。
しかし、なかなか起き上がれないゴルゴに、突然「ボールファースト!」と、声が響きました。
「しっかりしろよ、サード!」と、ゴルゴに発破を掛けるのは和田でした。
和田に抱き起こされたゴルゴは「お前じゃないと…」と、グローブを渡します。
赤鬼のノックを10年振りに受ける和田は、しっかりとキャッチ。
「ナイスプレイ!」と、ゴルゴの大きな掛け声に赤鬼も笑みがこぼれます。
夕暮れ、和田はあの頃に感じていた、ゴルゴへの嫉妬心を打ち明けました。
そして、部活を辞めたのはアノ嘘が原因なのか、ゴルゴに尋ねます。
「…俺が、自分から勝負を降りた」と、和田の心に残るわだかまりを解いてくれたゴルゴ。
夕日に照らされた二人は、目を滲ませています。
帰り道、ゴルゴは「俺…赤鬼、ケッコー好きだったよ」と、小渕に言いました。
突然の事に、涙が流れる小渕は「赤鬼は、人前で泣かないよ」と、意地を張ってみせます。
「泣くな赤鬼」最後ラストの結末は?
数日後、小渕に「トモ君に会いに来てくれないかな…」と、雪乃が電話を掛けてきました。
ベッドに横たわり天井を見上げるゴルゴは、苦しそうに呼吸をしています。
微かな声で「くやしい…」と、言いゴルゴは一筋の涙を流しました。
そんな彼を小渕は、よくやったと褒め「ありがとな、俺の生徒になってくれて」と、声を詰まらせます。
人前では泣かない赤鬼が、顔をぐちゃぐちゃにして泣いていました・・・
あの夏、決勝戦で負けてから野球への情熱が薄れて行った小渕。
そして今、はっきりと思い出したのは、あの時「あきらめんじゃねぇぞ、赤鬼!」と、スタンドから叫んだゴルゴの姿でした。
やり遂げる事が出来なかったものの、野球への情熱は消えていなかったゴルゴ。
「努力は報われる!」と、あきらめない気持ちを教えてきたつもりの自分が、あきらめてしまった。
最期にゴルゴは、小渕に大切な事を思い出させてくれたのです。
あの頃、無視をしていた野球の “サイン” を小渕に送ったゴルゴ。
ソレに小渕も応え、二人の心は解けるのでした。
──放課後、西高のグラウンドに、野球への情熱を取り戻した小渕の大きな声が響き渡ります。
はじめて見る監督の姿に戸惑う部員たちですが、本気の小渕に西高のグラウンドには活気が溢れるのでした。
それから半年が経ち、グラウンドにあつまった野球部。
新入部員の挨拶がはじまり、その中に一際威勢の良い一年生がいます。
まるで、あの時のゴルゴのように自信に満ち甲子園を目指す彼に、小渕はしみじみと頷き微笑むのでした。
完。
「泣くな赤鬼」見どころ
過去に置いて来てしまった大切なもの──
3年間の高校生活を、途中で手放してしまった生徒。
生徒を導くことが出来なかった教師。
悔しさと後悔が残る日々を過ごしてきた二人が再会し、やっと分かり合えたのは生徒の命が燃え尽きようとしているときでした。
【やり切れなかった高校時代】と【近づく死と向き合う今】の時間軸を交錯させ、それぞれが掛け違えたボタンを直す。
堤真一と柳楽優弥が、青春の代名詞とも言える高校野球を通して【人生を悔いのないように生きる】という事を伝えてくれます。
これからの活躍が期待される、若手俳優の演技がひかる今作。
そこに、川栄李奈や竜星涼といった演技派、さらにベテランのキムラ緑子、麻生祐未。
観る者に彼ら一人一人が抱える思いが伝わり、切なさで胸が痛くなります。
甲子園初出場を目指して、ガムシャラだった教師・赤鬼を演じた堤真一。
気迫あふれる鬼監督の顔と大きな声。
10年後、心にシコリを残す物憂げな表情に覇気のない声。
その秀逸な演技は、物語へと引き込んでくれます。
そして、ゴルゴを演じた柳楽優弥の凄さを、あらためて見せつけられるでしょう。
今作はガンを患った余命わずかな役どころで、おどけた顔から死への恐怖をぶちまける姿。
最期に素直な思いを伝える二人の表情、悲しいけど温かいモノが残る素晴しい場面です。
ちなみに柳楽優弥のデビュー作はこちらです。
そして堤真一のデビュー作はこちら。
止まっていた時計が動き出した赤鬼の張りのある声、あの頃のゴルゴのようにエネルギーに満ち溢れる新入部員に出会い、嬉しくなる優しい顔に心が晴れやかになります。
余韻の中で竹原ピストルが歌うエンディング曲『おーい!おーい!!』が、沁みてしまうので最後まで観ていただきたいです。
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