映画「護られなかった者たちへ」は佐藤健主演、瀬々敬久監督の2021年公開の映画です。
この映画「護られなかった者たちへ」のネタバレ、あらすじや犯人、最後のラスト結末や見どころについて紹介します。
東日本大震災の被災地、仙台で起きる不可解な連続餓死事件を描く「護られなかった者たちへ」をお楽しみください。
「護られなかった者たちへ」あらすじ
2011年3月11日。
東北地方を激しい揺れと津波が襲いました。
宮城県警捜査第一課の刑事、笘篠誠一郎(阿部寛)は妻子を探して瓦礫の山となった避難所の学校を訪れます。
その夜、避難所に避難していた利根泰久(佐藤健)はそこでひとりでうずくまった少女(石井心咲)と出会います。
そんなふたりにこっちの方が温かいと声をかける女性(倍賞美津子)が。
東日本大震災から9年。
利根は罪を犯して刑務所に入り、出所したところでした。
保護司の櫛谷貞三(三宅裕司)と再就職先の工場に行きますが、利根の前科が放火と聞いて所長は渋い顔をします。
それでも櫛谷の計らいで働けることに。
そしてある日、被災地である宮城県仙台市内の2年前から無人となっているアパートで、両手が拘束されさらに四肢や口をガムテープで塞がれ遺体が発見されます。
被害者は福祉保健事務所の三雲忠勝(永山瑛太)。
死因は餓死で、死後1週間がたっていました。
三雲は仙台市若葉区保健センターの職員でした。
怨恨の線で捜査されるも、被害者は家族からも職場の人間からも信頼されていてまったく犯人が見えてきません。
そして4日後、今度は宮城県議会議員の城之内猛(緒形直人)の遺体が発見されます。
はたして・・・
「護られなかった者たちへ」ネタバレ
笘篠(阿部寛)は蓮田智彦(林遣都)と捜査を行います。
生活保護の申請を行う窓口で働いていた三雲。
財布があったことから怨恨の線で捜査が始められますが、三雲のことを悪く言う者は誰もいません。
笘篠は蓮田と共に三雲の部下である円山幹子(清原果耶)に聞き込みをします。
生活保護受給者とのトラブル疑う笘篠ですが、円山は「三雲の名を知る機会がない、恨んでも実行するまでにはいたらない、みんな生きていくのでいっぱいだ」と言います。
坂巻の工場で黙々と働く利根(佐藤健)。
事務所の部屋で寝泊まりをしています。
被災直後のことを思い出す利根。
供給される食事に人をかき分けて群がる利根にやさしくしてくれたのは、あの時の少女(石井心咲)と遠島けい(倍賞美津子)でした。
捜査のため幹子(清原果耶)の業務に同行して生活保護受給者たちと面会することとなった笘篠。
受給者のもとに向かう途中、震災時に東京で大学生だった蓮田(林遣都)は震災のことを実体験として知らないと言います。
震災時も仙台にいた笘篠は、遺体安置所で妻紀子(奥貫薫)を見つけた時のことを思い返します。
しかし息子は今も見つかっていません。
そこで笘篠は息子と同じ黄色い服を着たあの少女(石井心咲)に出会い、思わず声を掛けます。
幹子がまず面会に訪れたのは、渡嘉敷という母子家庭の家でした。
渡嘉敷が、生活保護を受給しながらスーパーでフルタイムとして働いていることが明らかになったからです。
決められた以上に収入があるのなら生活保護は返さなければならない、と言われ娘が生活保護過程でいじめられえいることに悩み塾の費用を稼いでやりたい渡嘉敷は「全部我慢しろっていうんですか」と悲壮な叫びをあげます。
次に面会した国枝(千原せいじ)は、車を所持しています。
毅然とした態度の幹子に、腕をケガしているはずの国枝が詰め寄ります。
不正受給者のお金を本当に困っている人のために使いたい幹子はあえて刑事を連れてきて、強気に出ているのです。
そして、国枝に就労指導に切り替えると言います。
三雲(永山瑛太)の事件がニュースとなっています。
利根(佐藤健)の工場でもそのニュースが流れます。
お前じゃねぇのと冗談を言い合う工員たち。
そしてまたしても不審な遺体が発見されました。
宮城県議会議員の城之内猛(緒形直人)の遺体が、公園近くの森の中にある農機具小屋の中で発見されたのです。
遺体の状態はマスコミに発表されていない三雲との共通点があり、同一犯による犯行だと考えられました。
そして城之内が以前は厚労省の職員で三雲と共に生活保護にかかわる仕事をした同僚だったことが明らかに。
笘篠達は三雲と城之内が共に勤務していた時に生活保護受給を断られた人物の中に犯人がいると考え、ふたりがいたころの書類を洗い出すことに。
そして断られた人々の家を訪ねると、生活保護を断った三雲に対する手厳し意見も出てきました。
そんななか、幹子は申し訳ないと生活保護を辞退しようとする老人に、生活保護を貰うよう説得します。
しかし「申請は本人の意思」と上司は生活保護を進める幹子を非難します。
震災後、唯一の身寄りである伯父も自分の家族のことで手一杯な少女を、けい(倍賞美津子)が世話していました。
そして少女(石井心咲)は利根をけいのうちに行こうと誘います。
けいのところにただいま、とやってきたふたりはその夜けいの家に泊まっていくことに。
自分が生き延びた意味はかんちゃん(石井心咲)たちを励ますためだった、と言うけい。
俺も生きててよかったのかという利根を、けいは肯定します。
その後、栃木に就職した利根。
あの少女、かんちゃん(石井心咲)は遠いねと寂しそうです。
行ってらっしゃいと利根を見送るかんちゃんでしたが、いつのまにか行方知れずとなってしまいました。
三雲と城之内がかかわった案件で、意図的に省かれているものがありました。
笘篠に詰め寄られて書類を出す福祉事務所の職員。
そこにけいの名前が。
そして事務所に放火を行った男がけいの知人で、利根ということが明らかになりました。
利根を探す笘篠達宮城県警の刑事達、すぐに利根は手配されることになりました。
利根は、仕事を終えた幹子(清原果耶)の前に現れます。
「なんであんな職場に入った?そこまでして…?」
「救いたいの、いまさらだけど」
幹子はかんちゃんだったのです。
数年前・・・
利根が久々にかんちゃん(円山幹子)に会ったとき幹子は高校生となっていました。
すっかり大人びた幹子とけいに会いに行った利根。
しかしけいの体はだいぶ弱っています。
利根が通帳を見ると、残金がほとんどありません。
それでも利根にご飯を食べさせようとするけい。
生活保護を勧める利根にけいは他人が口出しするな、と言います。
しかし母親だと思ている、と利根に言われたけいは3人で社浦市福祉保険事務所にいきます。
そこでけいの担当をしたのは上崎岳大(吉岡秀隆)でした。
その横の窓口に三雲(永山瑛太)の姿も。
三雲は「39歳ならまだ働ける」と男性に声をかけ、男性は帰っていきます。
それから三雲は利根に、けいとの関係を尋ねます。
知り合いという利根に助けてあげたらどうか、生活保護より地域の助けが大事という三雲。
幹子は書類が欲しいと言いますが、本人の意思がないと書類は渡せないと言います。
「生活保護申請します」というけい。
生活保護の申請に行ってしばらくして、けいが亡くなりました。
利根は三雲に、けいが餓死したと詰め寄ります。
生活保護の申請がどうなったか尋ねると、けいは自分から生活保護を辞退したと言います。
対応に問題ないという三雲に詰め寄る利根、そんな利根を止めたのが城之内(緒形直人)でした。
生活の困窮には自分に原因がある、他人のせいにするなということを言う城之内。
現在・・・
幹子が担当する渡嘉敷が娘と共に無理心中をしました。
命はとりとめたものの、やりきれない思いの幹子。
そんな幹子に「あなたは避難所で二人の人と出会った。あなたは幹子でかんちゃん」と笘篠は幹子と利根の関係を知っていることをほのめかします。
そして、けいの復讐をしようとしている利根の居場所を聞きます。
しかし利根は人を殺すような人間ではない、という幹子。
数年前・・・
火葬場で亡くなったけいを見送るのは利根とかんちゃんのふたりでした。
そこにやってきて「死んじまったらおしまいだ…」と涙ぐむ上崎(吉岡秀隆)。
火葬場でけいが焼けるのを見守った利根はその後、福祉事務所に火をつけ、放火の罪に問われたのです。
現在・・・上崎の後援会。
笘篠達が、利根が来るのではと張っています。
そしてついに利根が姿を現わしました。
話がある、と上崎に近寄る利根を笘篠が捕まえます。
三雲と城之内殺しを認めた利根は、上崎を連れてくるか謝罪を公開するように言います。
しかし笘篠は何か隠しているはずと取り調べを申し出ます。
「護られなかった者たちへ」犯人
上崎にけいが辞退した理由を尋ねる笘篠。
けいが辞退したのは、離婚した夫との間に生まれた娘のためだと言います。
けいは夫に引き取られ再婚相手を実の母親として育った娘に、自分の存在を知られたくなかったのです。
生活保護の手続きをすれば娘に照会が行くため、けいは生活保護を辞退したのです。
笘篠がその理由を利根に伝えると、利根は俺たちの為に生きてくれればよかったのにとつぶやきます。
利根逮捕のニュースは幹子にも伝わっていました・・・
上崎(吉岡秀隆)が姿を消した、という連絡が笘篠たちのところに入りました。
それを聞いた利根は急に慌て出します。
そんな利根を見た笘篠は、もしやと利根を連れだします。
利根が言う上崎がいる場所の心当たり、それはけいの家でした。
中には上崎と幹子がいました。
まさに幹子が上崎を殺そうとしていました。
すべての犯人は幹子だったのです。
利根は必死に幹子を止めようとします。
そして利根は幹子に、餓死する前のけいがふすまに書いた遺言があることを伝えます。
それは「おかえりなさい」という言葉でした。
幹子を利根が抱きしめ「おかえり」と声をかけます。
「護られなかった者たちへ」最後のラストの結末は?
幹子はSNSでメッセージを残していました。
「護られなかった人たちへ」というタイトルで生活保護の現場では不埒な1%以外は頑張っている、と書かれています。
さらに「護られなかった人たちへ、声をあげてください、そうすることで誰かが必ず気づいてくれる、もっと大きく、もっと図太く声をあげてくれ」と書かれていました。
上崎は、幹子の言葉をかみしめたいと謝罪会見を行います。
利根を連れ、妻が発見された場所へいく笘篠。
息子の遺体はまだ見つかっていないという笘篠に利根は震災当日、目の前で沈んでいく少年を助けられたなかったことを話します。
その少年と同じ黄色い服を着ている幹子を見て利根は「今度は絶対に見捨てちゃだめだ」と思ったそうです。
今も見つかっていない笘篠の息子も、黄色い服を着ていました。
笘篠は利根に「助けようとしてくれて、声に出してくれて、ありがとう」と言います。
最後にふたりは深く分かり合えたのでした。
完。
「護られなかった者たちへ」見どころ
生活保護というデリケートな社会問題を取り扱った作品です。
「護られなかった者(人)たちへ」とは犯人である幹子の言葉でした。
必要でありながら生活保護を受けられずにいる人々を守るための言葉だったのです。
生活保護は正しく使われれば国民を救う意義のある制度です。
しかし不正に受給する人がいるのも事実です。
また渡嘉敷のように受給しつつ、働きすぎてしまうことも違反です。
頑張って働いてお金をもらって受給が無くなって収入が少なくなる、というのは受け取っている人にしては理不尽に感じるかもしれません。
しかし、けいのように本当に必要とする人のための予算を確保するためには、そういった線引きも必要です。
三雲たちも本来は優しく、厳しい判断は多くを救うためというジレンマがあったのかもしれません。
しかし幹子の選んだ餓死という方法は、あまりにも残忍です。
原作は中山七里さん。
中山さん原作の傑作ミステリー「さよならドビュッシー」もおすすめです。
この「護られなかった者たちへ」は原作と映画では設定や結末に違いがあります。
原作ではもっと悪人として描かれていた上崎。
原作を読んだ人は独特の優しい雰囲気を身にまとった吉岡秀隆さんが悪役?と思ったかもしれません。
吉岡さんといえば寅さんの甥っ子役でおなじみですが、けい役は寅さんで吉岡さんの母親を演じた倍賞千恵子さんです。
思わぬところで共演を見れましたね
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