映画「初恋のきた道」は、チャン・ツィイー主演、チャン・イーモウ監督の1999年の映画です。
この映画「初恋のきた道」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見どころを紹介します。
中国の農村地帯を舞台にしたピュアなラブストーリー「初恋のきた道」をお楽しみください。
「初恋のきた道」あらすじ
1958年、中国の農村地帯。
静かな村に町から若い学校の教師ルオ・チャンユー(チョン・ハオ)が赴任してきます。
彼に恋心を抱いた18歳の少女チャオ・ディ(チャン・ツィイー)は、料理を作ったりして自分の想いをルオに伝えようとします。
やがて2人の気持ちは通じあうのですが、大きな時代の波が押し寄せてきて…。
チャン・ツィイーのデビュー作で中国の農村地帯を舞台にしたピュアなラブストーリーです。
「初恋のきた道」ネタバレ
雪が残る田舎道を走る一台の車。
小さな村を出て都会で働く一人息子・ションズ(スン・ホンレイ)は父の訃報を受け、年老いた母(チャオ・ユエリン)がひとり待つ家へと急ぎました。
長年、教師として勤めた父を尊敬し、こころから愛していた母は、ションズの姿を見て泣き崩れるのでした。
校舎の立て直しに尽力していた父は、心臓の病で倒れ、村から離れた大きな病院に安置されていました。
葬儀のため、車で家に遺体を運ぶつもりが、母は昔ながらの風習“歩き、担いで家路を辿らせる”といって耳を貸しません。
しかし、現在の村には担いで運べるほど、男たちはいませんでした。
それでも母は、愛する夫が家路を忘れないように、そして棺に掛ける布も自らが織るというのです。
ちいさな体で、一心にはた織り機にむかう母。
部屋に飾ってある新婚当初のふたりの写真を見つめ、ションズは母たちから聞いた昔の話を想い巡らせるのでした。
1958年、春――
あどけない顔に赤い服、18歳の頃の母・ディ(チャン・ツィイー)。
村にやってきた教師ルオ・チャンユー(チョン・ハオ)も、まだ20歳と若い青年でした。
遠い町から小さな村へつづく一本道を、馬車に乗ってやってきたルオ先生を、村中が歓迎していました。
ディもはじめは“都会から来た人”という好奇心のようなものでしたが、ふと目が合った瞬間に、恥ずかしさと嬉しさに満たされるのでした。
しかし、この頃は自由恋愛などできない時代。
目が見えないディの母は、娘の変化を感じ取っていました。
校舎を建てるのは男たちの仕事。
女たちは昼食の準備など、陰となり支えるのでした。
ディは、校舎の梁に巻く赤い布を織ることになりました。
家にある大きく鮮やかな“青花の椀”に料理を盛りつけたり、出来上がった赤い布を学校まで届けたり。
不便だけど、ルオ先生がきてから遠くの井戸を使うのは学校が見えるから。
ディの恋心は募っていくのでした。
校舎が完成して、いよいよ授業がはじまりました。
朗読するルオ先生の声に、文字を知らないディも、心地良いしあわせを感じるのでした。
少しでもルオ先生に近づきたいディは、下校する子どもたちを送るルオ先生を待ち伏せすることに。
しかし、姿が見えてくると恥ずかしくなり、木陰に隠れて遠くから見つめるのが精一杯でした。
勇気を出したディはすれ違い、会釈を…。
その後も名前を憶えてもらい、やっと言葉を交わすことができました。
朝から食事の準備をするディ。
今日は、ルオ先生の食事当番をする日なのです。
玄関で待つディのうつくしい姿は、のちに夫となるルオ先生も「一幅の画のようで、一生忘れない」と息子・ションズに語るのでした。
“青花の椀”を憶えているか?と尋ねるディでしたが、どうやらルオ先生は学校建築中、昼食でディの料理は食べなかったようです。
好物の“きのこ餃子”をつくってあげる約束を交わすふたりに、ディの母は「身分違い、後悔する。」とディを咎めるのでした。
しばらくして、ディのもとに現れたルオ先生は突然、町に帰ると言うのです。
理由も聞かせてくれず不安なディは、村に戻る日を決めて約束を交わします。
“きのこ餃子”も発つ前に食べて行く…と。
そして、赤い服に似合うと、ルオ先生はディに髪留めを贈るのでした。
彼もまた、はじめてディを見た日のことを憶えていたのです。
赤い服に着替えて、髪留めを付けるディ。
その時、外から先生を見送ったという声が聞こえてきました。
ディはあわてて、“きのこ餃子”を入れた“青花の椀”を持ち飛び出すのでした。
ルオ先生を乗せた馬車はとても速く、ディは追いつくことが出来ません。
走りつづけるディ。
やっと遠くに見つけ追いかけるのですが、転んで椀も割れてしまいます。
その姿は小さくなり、消えて行くのでした。
涙を流すディは、ルオ先生からもらった髪留めがないことに気づきました。
必死に探しまわるディでしたが、その表情は、日に日にちからを無くしていくのでした。
家に着いたディがふと庭先に目をやると、そこに髪留めが落ちていました。
手に取り、鏡を見つめ付けたその表情には、笑顔が戻ったと同時にさびしさも押し寄せるのでした。
季節はもうすぐ冬。
ディの家に瀬戸物修理屋が呼ばれました。
貼り合わせた“青花の椀”の修理代は決して安くはありません。
母は言いました、「使った人が、娘の心を持っていった。」
それは、心にぽっかり穴が空いた娘に母がしてやれる愛情でした。
ディは食器棚から“青花の椀”を見つけ、そっと涙をながしました。
村は雪深くなってきました。
使われず朽ちていく校舎を、ひとり掃除するディ。
机を拭き、障子も貼り替えました。
ただ、黒板に残されたルオ先生が書いた文字だけはそのままに…。
ルオ先生が戻ってくる約束の日がきました。
ディは、村と町を結ぶ一本道をみつめていました。
一面の雪景色、吹雪は、容赦なくディを襲うのでした。
それでも、ルオ先生を迎えに行くと、冷え切った体で歩きはじめるディ。
町に着く前に力尽き倒れてしまったディでしたが、道行く人に助けられ一命を取り留めるのでした。
娘の姿に、母はルオ先生にディのことを伝えてほしいと訴えます。
「一目だけでも、会いに帰ってほしい!」と――
ようやく目を覚ましたディに母は、ルオ先生が帰ってきたと伝えました。
ディが好きな朗読の声。
大粒の涙をながし、ディは学校へと走るのでした。
学校には大勢の村人があつまっていました。
「ディが来た!」という声にルオ先生が教室から現れ、ふたりは再会を果たしたのです。
ディを心配したルオ先生は、無断で町を飛び出していたので、その日の夕刻には再び別れが。
その後、2年の歳月を離ればなれに過ごしたのです。
時がながれ、冬の晴れた日。
雪で真っ白な一本道を見つめる、赤い服を着たディがいました。
ルオ先生との再会です。
そして、その日以来ふたりは決して離れることはありませんでした――
「初恋のきた道」ラスト最後の結末
ションズは、“最期に、愛する夫と一本道を辿りたい”という母の願いを叶えたいと思いました。
村長に掛け合い、担ぐための人を雇ってほしいと懇願します。
母のためなら大金もいとわないションズでした。
町の病院には大勢の人があつまっていました。
いよいよ、父が村へ帰る日です。
視界を遮るほどの雪が舞うなか、列は進みました。
100人はいるであろう列は皆、父の教え子たちだったのです。
ションズは、父の偉大さをあらためて知るのでした。
誰もが、ルオ先生のためにあつまったのです。
ながいながい列が村へ着き、父は学校を見渡せる井戸の隣に眠りました。
その井戸は、母が父の姿を見に通った井戸です。
村に、父の念願だった新しい校舎を建てることも決まり、ションズも町へ戻る日が近づいていました。
古くなった校舎では、授業がおこなわれていました。
ションズです。
1時間だけの授業でしたが、“教師になってほしい”と思っていた父そして、母の願いを叶えたのでした。
朗読するションズに涙を浮かべる母。
初恋に出会ったあの頃を懐かしく想うディでした。
THE END
「初恋のきた道」見どころ
「初恋のきた道」
まさにタイトル通り、 若いふたりに訪れた“初恋”。
物語がはじまる大切な道が結んだ、心あたたまるピュアな作品です。(原題「我的父親母親」こちらも納得!)
チャン・ツィイー演じるディの、“恋に落ちた女の子”の表情は、同性から見てもたまらなく可愛いです。
うれしくて小走りする後ろ姿。
少しでも近づきたくて、重い水汲みもこなし、料理もこころを込めて!
帰り道を“待ち伏せ”してしまうほど、ルオ先生に心を奪われる女の子(本作はストーカー映画ではありません。純愛映画です!)
微笑ましい日々から一転、別れのシーンは涙が止まらない、号泣必死です!
追いかけて追いかけて…居なくなってしまった彼を想い、涙するチャン・ツィイーに泣かされます。
1958年当時の政治的な時代背景が、物語に影を落とすのです。
ふたりのように、時代に翻弄された人々が多くいたことでしょう。
そんな経験をして一緒になったふたりだから、おばあちゃんになったディが嘆き悲しむ姿にまた涙。
さいごは、村までの道を一緒に帰ることが出来て、ほんとうに良かったですね。
モノクロームで描かれる、愛する夫を亡くした世界。
赤やピンクで彩られた、“初恋”がやってきた世界。
中国の悠久の大地を、最大限に映し出した瑞々しい物語です。
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