映画「Girl/ガール」はヴィクトール・ポルスター主演、ルーカス・ドン監督の2018年の映画です。
この映画「Girl/ガール」のネタバレ、あらすじや最後のラスト結末、見どころについて紹介します。
バレリーナを夢見るトランスジェンダーの少女を描いた感動作「Girl/ガール」をご堪能ください。
「Girl/ガール」あらすじ
バレリーナを目指す、15歳の少女・ララ(ヴィクトール・ポルスター)。
6歳の弟・ミロとふざけ合ったり、自分で耳にピアスを開けて父・マティアス(アリエ・ワルトアルテ)を心配させたり。
でも、夢を叶えるためなら努力を惜しまないララ。
キツい練習も弱音を吐かず、名門・バレエ学校へ入学するチャンスを掴みました。
愛する娘のためなら、どんな事もサポートする父・マティアスは早速引っ越し。
仮入学のテスト期間は8週間、同じ夢を持つ同級生とバレエの事だけを考える新生活。
練習を終え鍵をかけたトイレに籠るララは、股間に貼り付けたテーピングを剥がします。
ララは定期的に父と病院を訪れ、カウンセリングと二次性徴抑制療法(性ホルモンの分泌を抑えて二次性徴の進行を止める)を受けていました。
身体は男性でも、心は女性──
バレエに打ち込んでいる時だけは、何ものにもとらわれないララ
だけど、心が揺れ動く思春期を迎えあまりに理想と違う身体、次第に焦りを感じ始めます・・・
「Girl/ガール」ネタバレ
「よく眠れた?」他愛のない会話、いつもの家族の朝。
ワンピースを着たララを、隣に住む青年・ルイス(タイメン・ホーファーツ)も、弟・ミロの幼稚園の先生も女の子だと思っています。
バレエ学校、講師も同級生もトランスジェンダーと知った上で、ララを受け入れました。
授業以外にも、ポワント(トゥーシューズを履き、つま先立ちの姿勢)の個人練習。
同級生とバレエ経験に差があるララは追い付くため、自分の夢のため必死でした。
「…頑張るしかない」支えてくれる講師に、ララは笑顔がこぼれます。
懸命に練習して、クラスの皆とおしゃべりして写真を撮って、15歳らしい順調な学校生活。
父・マティアスは「…男子生徒は?印象の良い子とか」と、ララの初恋が気になる様子。
そして「早く、ホルモン療法を受けたい…」と、願ったララの希望が叶います。
薬を飲んで女性の二次性徴(乳房などの発育)を起こし、身体が変化する事を期待するララ。
2年後には、性別適合手術を行う予定。
父は、16歳の誕生日を迎えたララの次なるステップに、本人よりも緊張します。
それでも「……これから、ララの新しい人生が始まる」
どんな困難にも負けない娘を、心から誇りに思うマティアス。
もうすぐ、同級生の女の子たちのような身体に……
はやる気持ちを抑えるララは、講師の叱咤する声に絶え間ない努力を続けました。
そして、年頃のララは、これまでは想像もしなかった恋を意識するようになります。
今は独り身の父・マティアスに、恋のはじまり。
カウンセリングでも、恋する気持ちを大事にと言われますが「この身体では…」と、自分を卑下するララ。
バレエをしている時だけは全てを忘れられますが、テーピングを剥がすと現実の自分。
薬を服用しても依然として変わらない、男性の身体にもどかしさを感じます。
一人では抱えきれない不安を、父に打ち明け乗り越えて来たララですが、股間にテーピングを貼っている事は言えませんでした。
それがバレてしまうと「つらいのは分かるけど、解決策はある……テープは身体に良くない」と、やわらかく窘めるマティアス。
更に学校でも、ララを見る女子生徒たちの目が次第に変わり始めていました。
学校でシャワールームの使用を避けるララに「みんな、不思議に思ってる…」と、一緒に使うよう仕向ける一人の女子。
他の女子たちとは違い、居た堪れない気持ちで身体を隠すようにシャワーを浴びるララ。
苦しさを打ち消すように、練習に没頭するララの足は血で滲み、テーピングを貼り続ける股間は炎症を起こします。
父や医師は「焦らずに」「外見を気にし過ぎるな」と言うけど、一日も早く女性の身体になりたいララには届きません。
厳しさを増すバレエの練習、追い込んでいるのはララ自身。
信頼する講師の胸に抱かれたララは、ほんの少し笑顔を取り戻しました。
だけど、ララの心を追い詰める、悲しい出来事が起きてしまいます。
同級生の誕生日パーティーに招かれたララ。
それは、ララに学校のシャワールームを使用するよう、声を掛けた女子生徒です。
「女同士じゃん、女の子になりたいんでしょ?」
嫌がるララに、男性器を見せろと女子生徒たちの視線。
一度は庇う声があったものの、制止してくれる友達は居ませんでした。
ララが仕方なく見せると、まるで大した事など無かったように彼女たちは部屋を出ます。
悲しみに打ちひしがれるララが家に帰ると、父のカノジョが来ていました。
あの出来事、深く傷付いた心を父に打ち明ける事が出来なかったララ。
以降、父に対して「いいの、大丈夫」としか言えなくなり、本心を隠すように。
そして、父娘の関係にほころびが生じ始めます。
どんなに寄り添っても、ララの苦悩すべてを分かってあげる事は出来ないマティアス。
医師にも隠し事をするララは、唯一の救いバレエだけに集中し自らの身体を酷使。
そのため体重が減り、股間の炎症も悪化。
心身ともに整えた状態で臨まなければ、2年後に行う性別適合手術は危険だと医師に告げられます。
ララは自分の事を異性として見てくれる、隣人・ルイスを訪ねました。
ドキドキしながら、これまで何度かアプローチしていたララ。
この日、初めてのキスを経験、だけどララは身体を求める彼から逃げてしまいます。
鏡に映る男性の身体に、ララは絶望するのでした。
「Girl/ガール」最後ラストの結末
あきらかに様子がおかしいララに、自分の本当の気持ちを話して欲しいと父・マティアスは必死。
「……俺は、お前の父親なんだぞ。何を苦しんでる?」
重い口を開くララは「……結局、何も変わらない」と、また自分を卑下します。
そんな娘に父は、ララを愛し支えてくれる人がいる事。
努力が実って夢だったバレエ学校に通えている幸せ、物事のいい面を見ろと伝えます。
より一層、バレエの練習に励むララですが、その身体は悲鳴を上げていました。
舞台本番が迫り熱が入るリハーサル、とうとうララは意識を失います。
身体も心も極限に達した娘を、父は家に閉じ込めました。
バレエから距離を置き、父・マティアスと観客席から同級生の舞台を見つめるララ。
12月31日、ララの家にはカウントダウンを祝う人々が集まります。
皆の前では笑ってみせるララ、ぐっすりと眠った弟・ミロの隣で一緒に眠りました。
翌朝、優しい父の声で目を覚ましたララは、微笑んでみせますがドコか深刻な表情。
外出する父と弟を明るく見送ると、堰を切ったようにララの溜め込んだ思いが溢れ出します。
玄関を開け、自分を搬送するための救急車を要請。
下着を脱ぎ、氷で冷やしたタオルを男性器に押し当てます。
そして、ハンカチを噛みしめたララはハサミを入れました。
到着した救急車、異変に気づいた父・マティアスは階段を駆け上がりララの元へ。
搬送されるララの手を握り、悲しい顔をしているマティアス。
目を覚ましたララは、父の温かい手に涙を流し優しく微笑みました──
月日は流れ、長かった髪を切ったララは自分の足で歩き出しています。
THE END
「Girl/ガール」見どころ
苦しくて痛くて、胸がギュッと締め付けられる105分。
どうしようもない不安に押し潰されるララの、声にならない悲鳴に涙が溢れます。
第71回(2018年) カンヌ国際映画祭で4冠はじめ、世界の映画祭で話題になりました。
・ある視点部門 俳優賞 受賞[主演・ヴィクトール・ポルスター]
・カメラ・ドール 受賞(新人監督への賞)
・クィア・パルム 受賞(LGBTQをテーマにした作品への賞)
・国際批評家連盟賞
良くも悪くも、世界中から注目されたベルギー発の映画。
本作で、長編映画監督デビューを果たしたのはルーカス・ドン。
しっかりと時間をかけて創作された物語は、実在するトランスジェンダーの女性 ノラ・モンセクールの想いが込められています。
映し出されるララはフィクションとは言え、じっくり捉えたその表情はドキュメンタリーを観ている感覚に陥るかもしれません。
“女性の自分”が“男性の身体”である事に、深い悲しみを抱くララの葛藤と孤独。
家族は私のためにどんな事もしてくれる、なのに私自身が全然変わる事ができない……
“ララはララ”焦らずゆっくり、顔を上げて生きてほしい……
一番近くで支え、向き合う父もまた「大丈夫」と言う、ララの本当に苦しみを分かりたい。
「女の子になりたいだけ」と言うララに「お前は、女の子だよ」と優しく見つめる父。
不安を吐露する娘に、マティアスが掛ける言葉はとても温かい。
だからこそ、互いを思うが故に苦悩するララと父の衝突は切ないです。
そして、10代の未熟な女の子だからか、実力をつけて来たララへの嫉妬なのか。
陰部を見せろと言う強要のシーンは、心が痛み残念でなりません。
ララを演じた、ヴィクトール・ポルスターは男性バレエダンサー、本作が映画初出演。
どうする事も出来ない感情をぶつける姿、独り悶える表情はあなたを引き付けるでしょう。
また、バレリーナを目指すララの、まさに血の滲む努力をつづける姿も痛々しいです。
ラスト10分、ララの行動に「えっ!?」と悪い予感がした私は、涙が止まりませんでした。
身体に走る強烈な痛みを想像したから……それだけじゃない。
そこに至った、ララの精神的な苦痛を理解しているつもりでした。
だけど、全然分かっていなかった……そんな自分に悲しくなりました。
ありのままのララを愛する父・マティアスは、本作のモデルとなったノラ・モンセクールの父、そのままだと言います。
家族の愛に支えられ歩みを止めず、プロのダンサーとして活躍するノラ・モンセクール。
本作『Girl/ガール』のララも、しっかりとその手を握り抱きしめてくれる家族がいます。
現在、様々なLGBTQ映画が制作されるようになりましたが、今後も本作のように賛否を巻き起こすでしょう。
衝撃的な作品ですが“なりたい自分になる”それが、こんなにも苦しいと言う事を、あなたの心で感じて下さい。
みんなの感想