映画「愛を積むひと」は、佐藤浩市主演、朝原雄三監督の2015年の日本映画です。
この映画「愛を積むひと」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
亡き妻から届いた手紙・・・夫婦愛、親子愛の物語「愛を積むひと」をお楽しみください。
原作はアメリカのエドワード・ムーニー・Jrの小説「石を積むひと」で日本風にアレンジされています。
「愛を積む人」スタッフ・キャスト
■ スタッフ
監督: 朝原雄三
脚本: 朝原雄三、福田卓郎
撮影: 上野彰吾
音楽: 岩代太郎■ 主要キャスト
小林篤史:佐藤浩市
小林良子:樋口可南子
小林聡子:北川景子
杉本徹:野村周平
上田紗英:杉咲花
上田美智子:吉田羊
上田熊二:柄本明
「愛を積むひと」あらすじ
東京から北海道に移住した小林篤史夫妻。
妻の良子(樋口可南子)は持病を抱え病院に罹っていますが、とても明るく朗らかな人柄で夫・篤史(佐藤浩市)を支えています。
ある日、良子(樋口可南子)が言いました。
家の周りをぐるりと囲む石塀を作って欲しいと・・・。
ブツブツ文句を言いながらも彼女の望みを叶えるべく奮闘する篤史(佐藤浩市)。
この物語は、北海道の雄大な大地を舞台に、妻の望みを叶えてやりたい夫と、後に遺す夫への想いに満ちた妻が織り成す愛の物語です。
「愛を積むひと」のネタバレ
篤史(佐藤浩市)は造園会社の社員・杉本徹(野村周平)と一緒に作業を始めました。
全く愛想がない徹(野村周平)ですが、可愛い彼女がいる様子。
たまたま買い物先で見かけた徹(野村周平)達の話から、自分たちの馴れ初めを思い出し、プレゼントを貰ってから手を繋ぐまでに二年。
それからプロポーズまでも二年かかったと可笑しそうに話す良子(樋口可南子)は、ここに来られて良かったと幸せそうに笑っています。
そんな彼女を見る篤史(佐藤浩市)もまた満足気な笑みを浮かべるのでした。
季節は移り夏へ。
少しずつ慣れてきたのか、以前はコンビニ弁当で済ませていた徹(野村周平)も、今では篤史(佐藤浩市)達と一緒に昼食をとっています。
そんな徹(野村周平)ですが、家に荒れていた頃の先輩が居座るようになっていました。
そんなある日。
小林夫妻が丸一日家を空ける事を知った彼は、先輩と共に空き巣に入ってしまいます。
ところが予想外に早く良子(樋口可南子)が帰ってきてしまいました。
咄嗟に隠れた徹(野村周平)ですが、良子(樋口可南子)から見られたか!?という瞬間、先輩が彼女を押し倒して逃げ出してしまいます。
咄嗟に徹(野村周平)も逃げますが、これにより良子(樋口可南子)は足首を負傷し入院する事になってしまいました。
病院から帰宅した篤史(佐藤浩市)を待っていたのは、徹(野村周平)。
事件のことを言い出せない彼は良子(樋口可南子)の入院中、恋人の上田紗英(杉咲花)を連れて石塀だけでなく篤史(佐藤浩市)の生活の助けもかって出るのです。
退院してきた良子(樋口可南子)は、牧場の娘で明るく可愛らしい紗英(杉咲花)ともすぐに打ち解けました。
医師からは患っている拡張型心筋症を篤史(佐藤浩市)に言うべきだと迫られるも、やっと手に入れた穏やかな生活を乱したくないとそれを拒否している状態の良子(樋口可南子)。
そんな彼女にとって紗英(杉咲花)は東京に残してきた娘・聡子(北川景子)に似たものを感じるようです。
しかしとある問題から娘と疎遠になっている篤史(佐藤浩市)は同感を返しません。
ある晩、娘との電話を終えたあと、いつまでたっても歩み寄ろうとしない篤史(佐藤浩市)の姿に焦れた良子(樋口可南子)は、私が死んだらあっちゃんにはあの子しかいないのよ!とつい口走ってしまいました。
途端に表情を固まらせる篤史(佐藤浩市)。
死ぬなんて簡単に言うなよ、と不安そうな彼に、やはり良子(樋口可南子)は本当のことを言えないでいるのでした。
良子(樋口可南子)の誕生日パーティーの日。
マフラーをプレゼントした徹(野村周平)と紗英(杉咲花)に続き、篤史(佐藤浩市)が小さな箱を手渡します。
それはたった一粒の真珠。
結婚して以来ずっと送り続けてきたそれは、色も大きさもバラバラの真珠を毎年つなげていくことで、世界にたった一本のネックレスになると言うその思い出の品です。
しかしそれは、先日の空き巣に盗まれていました。
その言葉に顔を強ばらせる徹(野村周平)ですが、しかし警察を恐れる彼はそこでも、打ち明けることができないのでした。
秋になりました。
美しく彩られた赤や黄色の絨毯を踏みしめながら、松茸狩りに来ている良子(樋口可南子)。
一緒に並んで歩く紗英(杉咲花)は、まだ両親に紹介していないという徹(野村周平)のことでなにか相談があるようです。
けれど、紗英(杉咲花)が何かを言いあぐねて背を向けた時でした。
良子(樋口可南子)が胸を抑えてしゃがみこんだのです。
徐々にぼやけてゆく視界・・・。
彼女はそのまま帰らぬ人となってしまったのでした。
たった一人になってしまった篤史(佐藤浩市)。
何をする気にもなれない彼は、心配して訪ねてきた紗英(杉咲花)から一通の手紙を受け取ります。
そこには良子(樋口可南子)の言葉が溢れていました。
先に逝ってしまう事を詫び、石塀の完成を見られないことを悔やみ、それでも空から石を積むあっちゃんを見ているよ、という彼女の手紙を手に、作りかけの石垣に腰掛けた篤史(佐藤浩市)は眩しそうに空を仰ぐのでした。
翌日、徹(野村周平)は警察に捕まります。
徹(野村周平)が取り調べを受けている頃、被害者として呼び出された篤史(佐藤浩市)のもとにあのネックレスが返ってきました。
それでもショックを隠せない彼は、家で待っていた紗英(杉咲花)に対しても冷たい態度を貫き、そのまま家に入るのでした。
仏壇にネックレスを供え、新しい真珠を取り出しにいった時でした。
その引き出しにも、良子(樋口可南子)からの手紙が入っていたのです。
そこには、空き巣の犯人を知っていたこと、でも徹(野村周平)の後悔を痛いほど感じていた彼女は、石塀をともに作ることがお互いのためになる、と書いていました。
あなたにはあの子が、あの子にはあなたが必要・・・そう書かれた手紙を読み終えた篤史(佐藤浩市)は、夕暮れの中一人作業に勤しむのでした。
結局、篤史(佐藤浩市)は徹(野村周平)への被害届を取り下げます。
そればかりか、勤め先を解雇され家をなくした彼を自宅へ連れ帰るのです。
塀を完成させたいんだ、良子(樋口可南子)のために、と呟く篤史(佐藤浩市)との生活で、徹(野村周平)は今まで以上に真面目に取り組むようになりました。
そんなある晩。
夜中に紗英(杉咲花)が徹(野村周平)を訪ねてきました。
彼女は妊娠していたのです。
しかし紗英(杉咲花)は母親の美智子(吉田羊)により連れ戻されてしまいました。
子供を育てる自信のない徹(野村周平)は何も言えないままでしたが、それでも彼の子を産みたいという紗英(杉咲花)の心は届いているようです。
一人泣き崩れるのでした。
そんな徹(野村周平)を連れて、篤史(佐藤浩市)は紗英(杉咲花)の実家を訪ねます。
紗英(杉咲花)に会うことは叶いませんが、しかし父親である熊二(柄本明)は、子供ことは紗英(杉咲花)の判断に任せると言います。
かといって、徹(野村周平)を婿と認めるわけではないと・・・。
血の繋がりはなくても、紗英(杉咲花)の事が可愛くて仕方がない熊二(柄本明)にとって徹(野村周平)は、自分の女に子供を始末させようとした男でしかないのです。
徹(野村周平)は土下座して紗英(杉咲花)に会わせて欲しいと懇願するのでした。
結局徹(野村周平)は、遠くの牧場で一年間修行する事を担保に、紗英(杉咲花)との関係を認めて貰う事になりました。
修行が終わるまでは、例え子供が生まれても会わせない、という約束の元旅立つ徹(野村周平)を、篤史(佐藤浩市)は石垣の前から見送ったのです。
やがて、一面真っ白に覆われる冬がやってきました。
あれ以来、腐れ縁のような仲の良さを見せる熊二(柄本明)が訪ねてきたことにより、久しぶりに娘のアルバムを引っ張り出してきた篤史(佐藤浩市)は、そこでまた良子(樋口可南子)からの手紙に気付きます。
懐かしくアルバムを見ながら幸せだったのだな、と感じると共に、やはり気掛かりなのは聡子(北川景子)の事、と始まる手紙には、過ちをしでかした娘だけれどあっちゃんがあの子を愛していることは変わらない、それを聡子(北川景子)に伝えてあげて欲しい、と書かれているのでした。
春になって、篤史(佐藤浩市)はかつての仕事関係者からの招待状を受け、結婚式に参列するため久しぶりの東京に来ていました。
その足で向かったのは聡子(北川景子)の家。
ひさしぶりに再開した娘は何故か子供を連れています。
彼女は今、男やもめで子供を育てている男性と交際しているのでした。
公園でその話を聞いている篤史(佐藤浩市)に、彼に会って欲しいと頼む聡子(北川景子)。
しかし篤史(佐藤浩市)は、それを飛行機の時間のせいにしながら拒否し、足早に去ってしまうのでした。
帰宅後、渡しそびれた紙袋を仏壇の側に置いた篤史(佐藤浩市)。
まいったなぁ、と小さくぼやくのでした。
「愛を積むひと」最後のラスト結末
遂に石塀が完成。
立派な石塀を作り上げた篤史(佐藤浩市)が次に目指したのは、頂上でプロポーズしたという思い出の十勝岳。
遺影の良子(樋口可南子)と共に彼は一人山に向かいます。
ところが急な天候悪化で滑落した篤史(佐藤浩市)は意識不明で病院へと搬送されてしまいました。
連絡を受け急いで飛んできた聡子(北川景子)は、病室で眠る父を前に、怪我だけで済んだことを安堵するのでした。
そして聡子(北川景子)はあの石塀の家へと帰ります。
篤史(佐藤浩市)の荷物を解き、中の遺影を仏壇に返した時でした。
そこにあった紙袋に目が止まるのです。
中にはあのネックレスが入っていました。
両親の思い出のネックレスには、父からの短い手紙も・・・。
そこに溢れる篤史(佐藤浩市)からの愛情は、確かに聡子(北川景子)に伝わったのでした。
翌日、目を覚ました篤史(佐藤浩市)の視界いっぱいに広がったのは熊二(柄本明)の笑顔。
しかし聡子(北川景子)が来ていると聞かされ、途端に慌て始めます。
そこへ花瓶を手に聡子(北川景子)がやってきました。
そっとストールを外した聡子の(北川景子)の首にはあのネックレスが・・・。
お父さん、ありがとう。
大きな瞳いっぱいに涙を浮かべる聡子(北川景子)の姿に、篤史(佐藤浩市)にもまた涙が滲んでいるのでした。
ラストシーンは良子(樋口可南子)からの最後の手紙を聴きながら、物語の最後へと進みます。
篤史(佐藤浩市)への感謝に満ちたその手紙は、夫への愛を繰り返し伝えようとする良子(樋口可南子)そのもののようでした。
完成した石塀に優しく触れながら軽やかに歩く良子(樋口可南子)。
これがこの美しい物語の最後でした。
完。
「愛を積むひと」見所ポイント!
夫婦とは。親子とは。人とは。
そんなことを感じさせてくれる映画でした。
物語の中には、不倫や空き巣、未成年の妊娠問題などあまり穏やかではないシーンもあるのですが、樋口さんのおおらかで包み込むような空気により、作品全体がギスギスせずに見られた気がします。
個人的には柄本さんの微妙に変化する表情にもかなり気持ちが持って行かれました。
特に、紗英の子を抱いた篤史が良子の遺影に赤ん坊を見せるシーンの表情が素晴らしかった。
一瞬なのに、その瞬間の顔が忘れられません。
今作は、セットではなく実際にあの立派な石塀を作られたんだそうで、積みかけの石と共に、北海道の雄大な自然も堪能できます。
とくに、良子が倒れた秋のシーンの美しかったこと!赤や黄色の紅葉に埋もれるようにして倒れた彼女の姿がまるで絵画のようにも見え、ついに訪れた悲しい別れの予感を一層際立たせてくれたように感じました。
公開当時。
舞台挨拶に立たれた佐藤浩市さんに、劇中の良子ではなく実際の奥様からの手紙が贈られた事も印象深いです。
ご結婚されてからの長い月日、役者としての夫を支え続けた奥様からのお手紙には、佐藤さんだけでなく代読された樋口さんも涙を浮かべられており、夫婦って良いなぁとしみじみ感じました。
今作には色々な夫婦の形が出てきます。
一番近い他人。
それが夫婦関係だと思っていますが、他人だからこそ大切にせねばならないし、身内だからこそ甘えられる場所でもあって欲しい。
なにか辛いことがあっても、即断で縁を断ち切るのではなく続けていく努力をお互いがしていければ、篤史と良子のような温かな夫婦になれるのかな?なりたいなぁと思いました。
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