映画「誰も知らない」は、柳楽優弥主演、是枝裕和監督の2004年の日本映画です。
この映画「誰も知らない」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
主演の柳楽優弥が2004年の第57回カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を獲得しています。
ちなみに史上最年少および日本人初です。
子供を持つ人、持たない人では感想が大きく違いそうな作品で、まだあどけあない柳楽優弥も必見です。
■ スタッフ
監督: 是枝裕和
製作: 是枝裕和
脚本: 是枝裕和
撮影: 山崎裕
音楽: ゴンチチ■ 主要キャスト
福島明:柳楽優弥
福島けい子:YOU
福島京子:北浦愛
福島ゆき:清水萌々子
福島茂:木村飛影
水口紗希:韓英恵
広山潤(コンビニの店員):加瀬亮
中延司(コンビニの店長):平泉成
吉永忠志(大家):串田和美
吉永江理子(大家の妻):岡元夕紀子
宮嶋さなえ(コンビニの店員):タテタカコ
杉原(タクシーの運転手):木村祐一
京橋(パチンコ屋の店員):遠藤憲一
少年野球の監督:寺島進
「誰も知らない」あらすじ
とあるアパートに住む明(柳樂優弥)・京子(北浦愛)・茂(木村飛影)・ゆき(清水萌々子)の四兄弟。
彼らは全員父親違いの兄弟ですが、兄弟仲は悪くありません。
存在を隠されている京子(北浦愛)以下の兄弟は外へ出ることができませんが、明(柳樂優弥)を筆頭に母・けい子(YOU)を助けながら暮らしているのです。
ところがそんなある日。
母が帰ってこなくなって―――
彼らはいったいどうなるのでしょうか。
「誰も知らない」ネタバレ
恋に生きる奔放な母を持つ明(柳樂優弥)達兄弟。
けい子(YOU)はちゃらんぽらんだけれど、いつも明るく朗らかで優しい母です。
しかし彼女は子供たちを学校にも保育園にもいかせていません。
仕事を理由に家を空けることもしばしば・・・。
しかし、けい子(YOU)がいない時でも、明(柳樂優弥)と京子(北浦愛)を中心に家事や洗濯が貯まることはありません。
それぐらい、彼らは母の不在に慣れているのです。
ある日、明(柳樂優弥)が起きる前にけい子(YOU)は家を出ていました。
しばらく留守にします、というメモと十万円以上のお金を置いて・・・。
いつ帰るともしれない母を待ちながら光熱費や家賃を払い、待ち続けること一ヶ月!
ゆき(清水萌々子)の父親かもしれない男性にお金を借りたりしながら、一生懸命食いつないで待っていた母がやっと帰ってきました。
しかしけい子(YOU)はいつものテンションと変わらない明るさで、子供たちに次々とお土産を配り始めました。
早速遊び始める茂(木村飛影)と明(柳樂優弥)。
京子(北浦愛)だけはけい子(YOU)の鏡台に置いてあるマニキュアが気になっています。
それは以前酔っ払って帰ってきたけい子(YOU)が塗ってくれた思い出の赤。
とその時、彼女はマニキュアの瓶を落としてしまいました。
溢れ出る液体。
それを見たけい子(YOU)は珍しく声を荒げ、慌てて液体を拭き取ります。
そんな母に京子(北浦愛)は、お母さんホントはどこに言ってたの?と・・・。
仕事だと答えるけい子(YOU)ですが、口調はふてくされていて、早々にその話をたたんでしましました。
帰ってきたばかりだというのにけい子(YOU)はまた出ていきます。
子供たちの目の前で荷造りしながら、クリスマスには帰ってくるからね、と言うけい子(YOU)。
そんな彼女を明(柳樂優弥)が駅に送りますが、けい子(YOU)が好きな人のもとに行くことを本能的に悟っている彼はあまり機嫌が良くはありません。
けい子(YOU)は未だに息子たちのことを相手に話していないのです。
途中で寄った店でも、けい子(YOU)の目をみない明(柳樂優弥)。
いつになったら学校へ行かせてくれるんだ、と苛立ちをぶつけ口論になる明(柳樂優弥)ですが、しかしけい子(YOU)の答えに最後は笑わされて喧嘩はおしまい。
駅で明るく旅立つ母を見送った明(柳樂優弥)は一人夜の街を帰るのでした。
またしばらくは子供だけの生活が続くことになります。
けい子(YOU)からは、神奈川県の住所から現金書留が届いたきり連絡はありません。
そして迎えたクリスマスですが、けい子(YOU)は帰ってきませんでした。
けい子(YOU)が帰ってこない事を京子(北浦愛)は気にしています。
自分が変なことを言ったから母は帰ってこないんじゃないのか・・・。
そう言う妹に明(柳樂優弥)は、そんなことないよ、という事しか出来ないのでした。
けい子(YOU)が帰ってこないまま大晦日を迎えました。
明(柳樂優弥)は現金書留の住所を頼りに電話してみることにしました。
もしもし、と出た声は間違いなく母です。
しかし特徴的な甘い声が言ったのは、山本です、という全然知らない苗字でした。
愕然として何も言えなくなる明(柳樂優弥)。
電話の向こうでは訝しがるばかりで、明(柳樂優弥)がかけてきたとは夢にも思ってないような母の声が聞こえるばかり・・・。
一夜明け。
年を越してしまいました。
ポチ袋を買った明(柳樂優弥)は、たまたま会ったコンビニ店員に袋の宛名を書いて貰います。
妹たちの名前を書いてもらうと、それぞれに母からのお年玉として渡したのでした。
普段はおとなしく遊んでいるゆき(清水萌々子)がある日、お母さんを迎えに駅まで行くと言い出します。
滅多に言わないわがままをどうしても引かないゆき(清水萌々子)。
今日は彼女の誕生日なのです。
明(柳樂優弥)は妹の願いを叶えてあげることにしました。
母が帰ってくることはないと知りながら・・・。
駅で待ち続けても母には会えなかったゆき(清水萌々子)ですが、納得したのか明(柳樂優弥)と一緒に夜遅い街を歩いて帰ります。
頭上を走るモノレール。
いつかあれに乗って飛行機を見に行こう。幼い兄と妹の約束でした。
春になる頃には、部屋はもう荒れ放題です。
一時期自宅をたまり場のように集まっていた仲間を誘いに中学まで行ったのに、真新しい制服を着た彼らはもう明(柳樂優弥)とは遊んでくれません。
あいつんち生ゴミの匂いがする、そう言いながら笑い合って去っていくかつての仲間を寂しく見送ることしかできないのでした。
けい子(YOU)が送ってくれたお金もそろそろ底を尽きそうです。
明(柳樂優弥)はバイトを思いつきますが、コンビニでは16歳以上でないと雇ってはもらえません。
彼は警察や福祉事務所に行くのは嫌なのです。
以前にも似た事があり、兄弟がバラバラになる可能性があることを身をもって知っている明(柳樂優弥)は自分の力で何とかしたかったのでした。
鬱々とした空気が満ちる部屋から、彼らは飛び出していきます。
明(柳樂優弥)以外の子は外へ出ない、というけい子(YOU)との約束を反故にして。
桜の木の下を駆け抜けて、思い思いに好きなものをレジカゴいっぱいに買い込んだ彼らは、公園で遊び、花の種や土を集め、夢中で外の空気を味わいます。
そして、ひとしきり遊んだあと、出てきた時と同じように人目を憚りながら家に帰るのでした。
久しぶりに兄弟みんなで楽しんだ一日。
ところがその日から電気がつかなくなってしまいました。
ついに止められてしまったのです。
けい子(YOU)から何の連絡もないまま夏になってしまいました。
この頃には電気どころか水まで止められているので、彼らの生活用水はすべて公園の水道です。
そこで茂(木村飛影)が誰かに気づきました。
クリスマスの夜に明(柳樂優弥)が出会った少女・さき(韓英恵)です。
茂(木村飛影)の人懐こさから打ち明けた彼らは、さき(韓英恵)も一緒に家まで帰ります。
雑多に物が散らば裾の部屋で、さき(韓英恵)はゆきの描く絵のモデルになったり京子(北浦愛)の小さなピアノを弾き合ったり・・・。
この日をきっかけに仲良くなったさき(韓英恵)が来ていた日。
穏やかに流れる時間を急な来訪者が破ったのです。
大家の女性でした。
家賃の催促に来た彼女は、室内にいる子供の多さに面食らっています。
明(柳樂優弥)の存在しか認識していなかった彼女は、京子(北浦愛)達を親戚の子かと勘違いしたまま首をかしげつつ去っていきました。
ついに家から追い出されるかもしれない―――
その危機感を、さき(韓英恵)が何とかしてあげると言い出しました。
お金を作るというのです。
彼女が利用したのは出会い系サイト。
待ち合わせた中年男性とカラオケに行くだけで一万円。
そのお金を差し出してきたさき(韓英恵)ですが、明(柳樂優弥)は受け取りません。
尚も渡そうとしてくるさき(韓英恵)の手を振り払って走り出した明(柳樂優弥)。
さき(韓英恵)を異性として意識していた明(柳樂優弥)にとって手を出せるお金ではなかったのです。
以来さき(韓英恵)は来なくなり・・・
また前のように兄弟だけの生活に戻ってしまいました。
暑さと不安に包まれて、明(柳樂優弥)は朝からとても不機嫌です。
いつも押入れにこもるようになった京子(北浦愛)にも、自分勝手な茂(木村飛影)にも、いちいち手がかかるゆき(清水萌々子)にもイライラしている彼は、猛然と押し入れの服を物色し始めました。
売りに行って少しでもお金にしようというのです。
しかし京子(北浦愛)が強く反対します。
彼女は母の思い出を失いたくなかったのです。
明(柳樂優弥)から取り返すと、再び押し入れにこもる京子(北浦愛)。
そんな妹についに明(柳樂優弥)は言ってしまうのです。
もう帰ってこねぇんだよ!!と・・・。
そのまま外へ出た明(柳樂優弥)。
校庭で野球をしている少年たちを見つめています。
すると監督が急に声をかけてきました。
休んだ選手の代わりに急遽、試合に出ることになった明(柳樂優弥)は思い切り野球を楽しみます。
彼はずっと野球がやりたかったのです。
一人公園で拾ったボールを木の枝で打ち続けた日。
外から聞こえてくる父子のキャッチボールの音・・・
「誰も知らない」最後のラスト結末
ずっと憧れていた野球ができたとあって、気分上々で帰宅した明(柳樂優弥)でしたが、そこには変わり果てた姿のゆき(清水萌々子)がいました。
椅子から落ちて動かなくなったゆき(清水萌々子)。
明は慌てて公衆電話に走ります。
そして残り少ない小銭で電話をかけたのです、
神奈川に住んでいるはずのけい子(YOU)に―――。
ところがけい子(YOU)に代わって貰うまでの間に小銭が尽きてしまいました。
これでもう母に頼ることも知らせる事さえ出来ません。
翌朝。
冷たくなったゆき(清水萌々子)に触れた明(柳樂優弥)が決心したのは、さき(韓英恵)に頼ることでした。
彼女にお金を貸して欲しい、と頼んだのです。
明(柳樂優弥)はいつか約束した、飛行機、をゆき(清水萌々子)に見せてやりたかったのでした。
さき(韓英恵)を連れて戻ってきたとき、真新しい現金書留に気付きます。
けい子(YOU)からさっき届いたというその封筒の中には、現金と手紙が入っていました。
みんなのこと頼むよ、と軽く書かれたメモ書きのような手紙。
四人でスーツケースにゆき(清水萌々子)を入れると彼女が大好きだったアポロも沢山詰め込んで、明(柳樂優弥)とさき(韓英恵)でその場所を目指します。
たどり着いた場所は飛行機の離発着がすぐそこに見えるところでした。
そこに穴を掘ってゆき(清水萌々子)を埋葬する二人。
夜明けまでかかって妹にさよならすると、泥だらけのまま来た道を戻ります。
帰ってきた彼らの頭上を渡るのは今乗っていたモノレール。
ゆき(清水萌々子)との約束を果たした明(柳樂優弥)は今日も、あのコンビニでおにぎりをもらっています。
兄弟の仲にさき(韓英恵)がいるのは当たり前の光景になりつつありました。
四人が並んで変える後ろ姿を映して、この物語は終わります。
完。
「誰も知らない」見所ポイント!
これは、東京で実際に起きた事件から着想を得て、柳樂優弥という役者を一躍時の人にした作品です。
彼がこの作品に出たときはまだ将来を役者で生きると決めていたわけではありませんが、その緩さがこの作品には必要だったのだな、と感じました。
あの印象的な瞳と、子役にありがちなセリフ口調は合わないからです。
どのシーンも、どの子供たちも、自分の言葉で話しているように感じられ、映画というよりドキュメンタリーを観ているようでした。
今作ではどうしようもない母親をYOUさんが演じられていますが、彼女が演ると最低なはずなのにどこか可愛くて画面に緊迫感がないんです。
ゆる~く柔らか~く子供たちに接する彼女を見ていると、ついつい子供を叱ってばかりいる我が身を振り返ってしまうほど・・・。
現場でもYOUさんは本当の母親のように子供たちに接しながら撮影されていたそうで、子供たちのおふざけの度が過ぎてくると彼女が締める、というようないい関係が成り立っていたんだそうです。
確かに、木村飛影くんを注意する様なんかは特にリアルでした。
今作で主人公をつとめた柳樂優弥さんは、メイキングのクランクアップで、僕を明に選んでくれてありがとうございました、と号泣していました。
サッカー選手になるという夢も持っていた彼は、今作でカンヌという大きな評価を受けたことによって様々な紆余曲折を経る人生を送られましたが、しかしこの映画がなければ、私たちは今、役の幅を広げた柳樂優弥という役者に会えていなかったかもしれません。
今では素晴らしい俳優になっていますね。
今作は子供がいない時に見た感情と、子を持って知る親の感情とで見た感想が若干異なってくる作品だと思います。
だいぶ前の作品ですが、ご自分の人生もあの頃とは変わったな、と感じられる方にはもう一度見て欲しいなと思います。
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