映画「あん」は、樹木希林主演、河瀬直美監督の2015年の日本映画です。
そんな、映画「あん」のネタバレ、あらすじや最後ラストの結末、見所について紹介します。
樹木希林さんと孫である内田伽羅さんとの初共演です。
「あん」スタッフ・キャスト
■ スタッフ
監督: 河瀬直美
脚本: 河瀬直美
撮影: 穐山茂樹
音楽: デイビット・ハジャジ■ 主要キャスト
徳江:樹木希林
千太郎:永瀬正敏
ワカナ:内田伽羅
佳子:市原悦子
どら春のオーナー:浅田美代子
ワカナの母:水野美紀
陽平:太賀
若人:兼松若人
「あん」あらすじ
川べりの桜並木の側に、小さな小さなどら焼き屋さんがあります。
名前はどら春。
黙々とどら焼きを焼き続ける千太郎(永瀬正敏)は、失敗作だと皮を常連の中学生ワカナ(内田伽羅)に持ち帰らせる優しい男。
この小さなお店に、一人の老婆が訪ねてきます。
ここで働きたい、と笑顔を絶やさないその女性の人生に包まれて、千太郎(永瀬正敏)やワカナ(内田伽羅)にも見られる変化。
甘く優しい空気に包まれながら、生きる強さを感じてみませんか―――?
「あん」ネタバレ
徳江(樹木希林)と言う77歳の女性は、店の表に貼ってあったバイト募集を指し、本当に年齢制限はないのか?と聞いてきます。
時給三百円で良いの、という徳江(樹木希林)ですが、千太郎(永瀬正敏)がいい顔をしません。
それでも笑顔を絶やさない徳江(樹木希林)は、後日また訪れます。
今度は自分で炊いた餡子を渡された千太郎(永瀬正敏)は、一舐めしてその味の素晴らしさに気付きます。
結局彼は徳江(樹木希林)を雇い入れるのでした。
感激した面持ちで嬉しそうに顔をほころばせる徳江(樹木希林)は、指が少し不自由だと言うので、重い鍋を持つなど餡作りは千太郎(永瀬正敏)と二人の共同作業です。
餡を作るのは夜明け前から。
まだ薄暗い、夜とも言って良いような暗闇の中、徳江(樹木希林)は小豆に話しかけ、愛おしそうに炊いて行きます。
完成した餡を、焼いたばかりの皮に挟んで試食する二人。
満足そうな徳江(樹木希林)に千太郎(永瀬正敏)は、自分は辛党だけどこのどら焼きなら一個丸々食べられる、と照れくさそうに微笑むのでした。
そんな彼に不思議そうな顔で、どうしてどら焼きなのか?と尋ねる徳江(樹木希林)。
甘いものが苦手なら酒場をやれば良かったのでは…?と言う彼女に、千太郎(永瀬正敏)は答えを返さず開店作業に移るのでした。
徳江(樹木希林)が来てから、餡の変化に気付いたお客の評判は上々で、美味しくなたわねぇ、と声を掛けられることも増えた千太郎(永瀬正敏)。
餡の評判を伝える彼に徳江(樹木希林)は、私もお客さんに会いたいなぁ…と呟くのでした。
その言葉には頷かなかった彼ですが、ある日ブラインドを開けた彼の前には行列になっている沢山のお客の姿が!評判が評判を呼んで、どら春はいつの間にか人気店になっていたのです。
さすがにこの人数はさばききれないと、徳江(樹木希林)にも手伝いを頼むと、彼女はとても嬉しそう。
良かったですね、と背中越しに小声でかけられた徳江(樹木希林)とその言葉を受けた千太郎(永瀬正敏)。
そこには甘い匂いと幸せな空気が満ちています。
ところがそんなある日、どら春のオーナー(浅田美代子)がやってきます。
徳江(樹木希林)についてアレコレ訪ねるオーナー(浅田美代子)は、彼女が書き残した住所を見て、これライ病患者が隔離されていたところ、と解雇するよう指示しながら自分は手の消毒を始めました。
千太郎(永瀬正敏)は自身の過去を救って貰ったオーナー家に逆らえないながらも、徳江(樹木希林)の解雇にはすぐには頷けません。
少し時間をくれるよう頭を下げるのでした。
翌朝。
酒に呑まれて起きた千太郎(永瀬正敏)は、心配した徳江(樹木希林)からの電話で目を覚まします。
具合が悪いので店を休みたい、そう言う千太郎(永瀬正敏)に徳江(樹木希林)は、明日休みを貰いたいので餡だけ作っておきますね、と言うのでした。
苦労して餡を一人で作り上げた徳江(樹木希林)が、店内に光を入れようとブラインドを開けたところ、やっぱりそこには行列が…。
見よう見まねで皮も焼いてみる徳江(樹木希林)。
千太郎(永瀬正敏)に比べればだいぶ歪だったり、手際が良いとは言えないものの、不自由な指を一生懸命動かして丁寧に焼いていく徳江(樹木希林)は、お客をさばききるのでした。
翌朝。
店に降りて来た千太郎(永瀬正敏)は、店内で餡を作る徳江(樹木希林)に驚きます。
餡が売り切れてしまった為、休日を返上して作りに出て来ていたのでした。
昨日は完売御礼だった、と楽しそうに語る徳江(樹木希林)に千太郎(永瀬正敏)は、何かが吹っ切れたような笑顔で言うのです。
もう自由にして下さって結構です。
今日も接客手伝ってください、と―――。
それからの二人は穏やかに、楽しそうに店を切り盛りしていきます。
徳江(樹木希林)は自分で編んだニット座布団を持って来て、本当に毎日笑顔で過ごしているのでした。
そんな空気感の中、少しだけ自分の過去を語り始める千太郎(永瀬正敏)。
借金がある事、一生背負った重荷がある事…深くは語らない彼に徳江(樹木希林)は、人生いろいろね、頑張っていきましょう、と普段通りのテンションで言葉を返してくれるのでした。
時は過ぎ―――秋になる頃…。
どら春はすっかり閑古鳥が鳴いています。
どうしたんでしょうねぇ、とぼやく徳江(樹木希林)ですが、結局彼女は店を辞めてしまったのでした。
世間の無理解に押しつぶされる形で徳江(樹木希林)を失ってしまった千太郎(永瀬正敏)は、相変わらず客の戻ってこない店内で酒を呑んでいます。
そこへ現れたワカナ(内田伽羅)。
彼女は徳江(樹木希林)に会いに来たのです。
飼えなくなってしまったカナリアを預けたかったのでした。
いざとなったら自分か店長さん(永瀬正敏)が飼う、と勝手に請け負っていた徳江(樹木希林)。
そこで二人は、徳江(樹木希林)に会いに行く事にしたのでした。
「あん」最後のラスト結末
バスに揺られて二人が到着した場所は、深い緑に覆われた静かな場所です。
沢山の木に囲まれた建物にいた徳江(樹木希林)。
少し見ない間に一気に年老いてしまった印象の彼女ですが、二人の訪問を喜びます。
ワカナ(内田伽羅)の歳の頃ここへ来た徳江(樹木希林)が語る思い出は切なく哀しいものです。
徹夜で母が縫ってくれた服、そんな新しい服を着る事が初めてだった徳江(樹木希林)ですが、隔離病棟に到着したその日に全て燃やされてしまったなど、辛い思い出が多い彼女にも友達がいます。
同じ病と闘った佳子(市原悦子)もまた指が不自由な様子。
徳江(樹木希林)は千太郎(永瀬正敏)に感謝の言葉を伝えます。
楽しかったです、私は大丈夫よ、そう頭を上げる彼女に千太郎(永瀬正敏)は必死で涙を堪えるのでした。
千太郎(永瀬正敏)の背負っている過去と言うのは、喧嘩沙汰で相手に一生の後遺症を残してしまった事でした。
服役中に亡くした母への後悔もあり、どこか人生を諦めたような顔をしていた彼ですが、徳江(樹木希林)からの言葉を胸に自分なりの餡子作りに取り組みます。
ところがそこに現れるオーナー(浅田美代子)。
3カ月で勤め先のレストランを辞めた甥っ子を連れてきた彼女は、どら春を改装しお好み焼きとどら焼きを出すお店にすると言うのです。
早速始まった改装作業。
その工事風景を横目に徳江(樹木希林)に会いに行ったワカナ(内田伽羅)は、その入り口で一人項垂れている千太郎(永瀬正敏)を見付けます。
二人は連れ立って徳江(樹木希林)のもとへ。
しかしそこに徳江(樹木希林)はいませんでした。
三日前に肺炎で亡くなっていたのです。
呆然とする二人に佳子(市原悦子)は徳江(樹木希林)の遺した餡子作りの道具を差し出すのと同時に、カセットウォークマンを出してきました。
そこから聴こえるのは、折角授かった子供を下さなくてはいけなかった事、もしも生きていたら、店長さん(永瀬正敏)と似た年頃だったという徳江(樹木希林)の言葉。
ここの雑木林は誰かが亡くなるたび一本ずつ木を植えてきた、という佳子(市原悦子)は、徳ちゃん(樹木希林)には桜の木を植えた、と言うのでした。
再び満開の春。
千太郎(永瀬正敏)は桜の木の下でどら焼きを作っています。
どら焼き如何ですか~、呼び込みをする彼の声には、今までになかった張りが満ちています。
彼はちゃんと前を向いて人生を生きているのでした。
完。
「あん」見所ポイント!
泣いた泣いた泣きました。
もう!樹木さんはずるい!!泣かせよう泣かせようと仕掛けてくるような演技じゃないのに、涙腺が刺激されすぎて目が痛いです。
日本人の優しさと強さと残酷さ、全てが詰まっている穏やかな映画でした。
こちらの「わが母の記」も樹木希林さんの号泣作品です。
監督の河瀬直美さんと言えば、徹底した作品作りに定評がある方ですが、今作でも樹木さんには、ハンセン病患者の方が隔離されていた施設での生活を希望されたんだそうです。
実際は施設の管理上の都合で寝泊まりは出来なかったようですが、そういった画面には移り込まない部分にまで妥協しない監督だからこその空気感に満ちていました。
どこが台詞でどこからがアドリブなのか全く分からない樹木さんの演技に、歯車を合わせたかのようにピッタリはまっていた永瀬さん。
仕事を辞めた徳江から感謝の言葉を掛けられた時の表情が、グッと、こちらを堪らない気持ちにさせてくれました。
あの年齢の男性の哀しみとも悔しさとも何とも言えない表情は、胸に刺さります。
また、公開当時話題の1つだった伽羅さん。
樹木さんのお孫さん、つまりは本木さんの娘さんと言う演技者のサラブレッドですが、最近テレビを付ければ二世・三世の芸能人を見ない日の方が少ないくらいなので正直期待してなかったんです…がしかし、伽羅さん。
とてもとても良かった。
少しぎこちないような語り口も役に合っていて、落ち着いたトーンの声はいつまでも聞いていたいような心地良ささえ覚えます。
器用な役者さん、といった印象は得られませんでしたが、将来は、この人じゃないと成立しないおばあ様のような女優さんになられるのでは?と、これからが楽しみでしょうがありません。
声高に、泣けるでしょ?感動するでしょ??と押し付けてくるような作品じゃないのに、自然とハンセン病の事や差別、生きる意味について考えてしまう物語です。
とにかく樹木希林と言う女優から目を離さずに観て下さい。
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